ようこそ上海へ 中編
皮肉の使い方について学んでいます。会話が多いです
セーフハウス・・・。
公安から目をつけられないように服装を変えて、それぞれ散らばり部下が予め用意した杭州のセーフハウスへと一旦退避した。セーフハウスと言ってもボロッちいアパートでスラム街にあって何と言うかセーフどころか限りなくアウトに近いようなくらい外部の防御が薄い・・・。
ここまで着て思ったこと警察連中の追ってがこないことだ。本来目星がついたならすぐ捕まえるのに、何かあるに違いない。
現地時間19時33分・・。
窓、カーテンをを閉め切った一室・・、私はソファに寝転がりながらタバコを吸いながらタブレットで後ほどやってくるであろう、リック・A・ニューマン、トニー・イロコイ、ザックパーカーに連絡を与えて来るように暗号と匿名のメールを送る。
「班員の信号をキャッチ、位置情報は・・・杭州東の山岳部内、廃工場内かと思われます」
「転送して」
画面が切り替わる。拡大された赤錆びた工場の屋根に赤い点が一点だけ。
それを元に私はウェブ上の航空写真と比較すると不自然なことに、先ほどのこちらに転送された位置情報周辺画像に自動車が何両とある。
「フランカ、何か分かる?私にはハマーみたいな車両に見えるけど」
『あー・・・。うん、ハマーだけど中国製のEQ2050汎用4輪ってやつじゃない』
『廃工場に何の用かわからないけど。』
「そうか。ありがとう」
通話を終わらせて早速出発に出る。
「各自準備だ」
・・・・杭州東山岳部。
現地時刻 AM02:12。
ナイトビジョンを使い暗くて険しい山岳部を上り一時間が経過した。こんな山登りは私が海軍に居たころはなかったけど・・いや陸軍のキャンプでやったような気がするけど重たくてしょうがない。休憩で食べた食事は市販の缶詰でMREレーションよりかはマシだと思う。
アフガニスタン、イラクを思い出す。コーヒーステイン迷彩を着用して暑苦しい中雑用やらされて山で上り下り、ゲリラのくそったれに襲撃されたこと。こっちのほうがよっぽど精神的にマシかもしれない。
標高は約1000mほどあるので酸素の心配もあったが・・・、
「ここを下れば廃工場にたどり着きます」
双眼鏡で見てみる。確かにここから見下ろせば廃工場の影があり、何と言うか化学工場のような感じで煙突やらが1本、液体を貯蔵するタンクが1つある。
「いこう。班員を助けるぞ」
山岳を下り森林に足を踏み入れた。廃工場は森林を切り開かれたところにあるのでもし見つかれば銃撃戦になるだろうと思った。だけど敵の姿が見当たらない・・。
ナイトビジョンは夜間でも標的が見える代物だ。山や影、いくら探しても人らしきもの、動物はおらず、5台ほど置かれてるハマーだけがあるだけ。
警戒しながら鈴は指示を出していく。私は鈴の背中を援護するように周囲に銃を向けながら工場に近寄っていく。
だがハマーは古くない。新品同様で泥を被っている・・不自然だ、普通放置されるならどこかしら錆びているなり腐っているとは思うけど・・。
私は森林で待機する3名の班員に手を振りながらこちらに来るよう命令する。音を立てず素早く前進した。
工場の精製施設は小さい。裏口に回り、慎重に扉まで近づくと穴から光が漏れていたので私は近づいて中を覗いてみる。
精製施設と思ったら中身は空っぽの倉庫だった。その真ん中に手足縛られている灰色迷彩の軍服を来た男がいる。
『ミト、まもなく到着する。ちゃんと周囲確保しとけよ』
「了解」
ヘリも到着する。さっさと解放して脱出しよう・・。
鉄の臭いを嗅ぎ取り回りに敵が居ないかナイトビジョンではなく、自分の眼球で見渡していく。敵の気配どころか痕跡もない・・・。
縛られた班員まで近づいていくと同時にヘリの音が次第に大きくなるので、M9銃剣で縄を二つ解いた。後は鈴が彼を保護したとき、
「動くな!」
確認したはずの2階通路からSWATに似た連中らが銃を構えていた。胸元に"雪豹突撃隊"と言うのもついていた。どこの部隊だが知らないけど面倒ごとはごめんなので手に持った自動小銃を地面においておく。
「鈴玉一級曹長、お久しぶり」
柱の影から紫髪の女が出てきた。あの写真で見たような姿で・・・、それに電話で聞いた声だ。
「美友上尉・・。どうしてこんなことをするんですか」
「どうしても何も私は鈴に逢いたかったの。それだけのこと。それあなたはAGP社を脱営して国家反逆罪の罪が科せられてるの」
「なっ!」
ヘリの音が近づいてきた。恐らくUH-60だろう、キュンキュンというローターが回転する音と開いた扉が風力で軋みながら揺れていると私は感じ取った。
ここで長話はこちらが不利になる・・。鈴を逃がす僅かなチャンス、いちかばちか・・・!
鈴の方へ視線を送ると彼女と目が合った。
「鈴たち走れ!」
大声で叫んだ。鈴たちは班員らをつれて扉の方へ一目散に走っていくと「ミトさんは!?」と言う声を背に、私はM1911A1をそのメイヨウ、武装警察隊に撃ちかまし、地面に置いたM16A3を柱にむけて蹴り飛ばしたあと、その影に隠れた。武装警察が撃った銃弾がコンクリの壁を削りって足元に欠片が落ちていく。
闇雲にM16A3を乱射して時間を稼ぐ。彼らがUH-60に乗るところを見届けたとき、無線から『ミトさん早く』と鈴の声。
『これ以上は持たないぞ!囲まれてるんだ!』
「いいから行ってよ!歩いて帰るから!!」
『ああ了解!その代わり生きてろよ、拾ってやる!』
風で舞い上がる草や砂で顔を隠したくなるが私はそれを見届けた。遠くなる音を耳に撃ち終えたM16A3のマガジンを外したとき拳銃を後頭部に突きつけられた。
「動くかないで。銃を捨てて両手を後にその場で伏せて」
私一人だから抵抗しても無駄だ。おとなしく従おう。
銃を置いて両手を真後ろに私は静かに地面に伏せると、心臓が飛び出るような痺れが襲い掛かった。
目の前が白くなる。この後どうなるんだろう・・・。
「逃してた・・・。まあいいわ、このアメリカ人を使い誘い道具にしましょう・・・」
暗い世界の中で何か話し声が聞こえてくる。意識が戻ったんだろうか、光が目に入り視界はぼやけながらも自力で周囲を認識する。コンクリート壁の一室だ、脇にテーブルと椅子があり私の装備一式が丁寧に置かれていた。
その空いたスペースに透明の液体が入った銀のトレー。医療に使いそうな器具も別の容器にまとめある。
身体が寒い、装備品が外されてタンクトップと下着だけになっていた。
「お目覚めね。グッドモーニングって言ったほうがいい?」
「ここは....?」
「ここ?そうね、上海の公安部の尋問室とだけ」
工場に居た武警の女だ。何かを片手に持った同じ青紫の女も一緒だ。濃緑のデジタル迷彩を着ているな・・・。
私が女を見下ろしていると言うことは吊り下げられてるような感じだ。腕が真上に伸ばされて鉄の棒に手錠で手が縛られている。手足もそうだ、動くたびにジャラジャラ音をたてる。
「私は美友、中国人民武装警察上尉の雪豹突撃隊小隊長をやっている・・。派遣でここに派遣された。今鞭を持っているのが静麗中士・・、彼は武装警察上海特戦の狙撃手」
「自己紹介どうも、私は赤城美貴・・・」
適当にごまかした自己紹介していくと1発鞭を横っ腹を叩かれた。
「ふざけるともう1発よ」
「それは嬉しい。歓迎するよ」
「アメリカ人はM性なのね」
特戦の女が無表情で鞭を振り回して、身体の部位に何十発と打たれていく。当てられた部分が焼けるように痛くヒリヒリして私は思わず声を上げてしまう。雪豹女は楽しんでるご様子で何よりだ・・・。
「そもそも公安だか準軍とか知らないけど、こんな拷問していいのかよ世界が黙ってないぞ」
「・・・偽りの正義を掲げて西アジアを侵略する悪党が何を言う。そちらの争いが一番黙ってないと思うわよ?」
視界と頭ぐらりと揺られて頬が痛い。口いっぱいに鉄の味が広がり思わず口を開いてしまう。
パンチだったか分からないけど見えなかった・・・。
こんな臭いところで何時間もいれば身体が長く持ちそうにもない、何とかしないと・・・。
「私をとっ捕まえたところで何の意味もないぞ」
「意味はある。あのヘリの行方を教えてもらいたい」
「ああ行方?生憎私も知らなくてね...」
そうだ、鈴を乗せたヘリのことだな。武装警察や公安には確保されていないことだけを祈る..。
奴は鈴に対して執着心がある。ここで知らないって言うと撲殺されそうだしかと言って地点は頭から抜けてるし。
「・・・・。」
どう言葉を出せばいいのか分からない。
「だんまりね・・」
すると特戦の女が近づいて黒い布を顔にまきつけて視界がみえなくなったとき、
「ぐえぇ!」
いきなり腹にきた強烈な一撃で内臓が口から出そうになった!これはキツイ......!
続けさまに横っ腹と頭部と鈍器のようなものでぶん殴られて、鞭が振られた音に私の皮膚から鋭い痛感が広がる。
それからしばらくやられたが相手も疲れて休憩時間に。目隠しも反動のせいで解け落ちていた。
しっかし痛い・・・!レイプされるよりかはまだマシかも知れないけど打撃は肉体的にキツい。熱い感覚もあって麻痺しているような気もする。
「ねえ?」
痛んだ喉から声を出した。
本題のため鈴の話を持ちかけたときメイヨウは微笑んだ。
「どうして鈴に拘るんだ」と彼に言うと、
「彼女が恋しいからよ・・・」
へぇ・・・?
そう言った後でゆっくり私の周りを歩いて、
「鈴はA.G.P社を脱営、あともう一つは敵前逃亡。これは人民解放軍の軍隊から抜けたのと一緒なんだけれど重大なのは任務中にも関わらず敵から逃げたことと彼方の軍隊に捕まって寝返ったこと」
「これは国家の反逆として重罪よ。最悪銃殺か一生獄中・・・その罪を軽くして人民解放軍に戻し、人民の戦士として再育成させるのが私の役割。」
そして私の正面に顔をむけて、
「無駄話はここまでにして、私たちからプレゼントがあるの。静麗中士、アレを」
「わかりました」
鞭を握っていた女がポケットから銀のケースがでてくる。その箱から一本の注射器が顔を出して、白光する針が一瞬ばかり視界に入り込む。
「最も人気なパンダの縫いぐるみとか期待してたけど注射器なんてマニアックだ」
「あなたは冗談なのかそれとも皮肉を言ってるつもりだけど....大して面白くないわよ」
「暇なんでね、ストレスが溜まるよ」
ふん、どっちだよ。
注射器の針が私の腕まで来ている感覚がくる。何の薬物かはわからない、わけの分からない合成物質が私の脳を破壊するんじゃないかと思うと恐ろしくてしょうがない。
じっと目を瞑り注射針が体内に打たれるのを小さな痛みで伝えられる。
と次第に瞼が重くなり始めた。何の薬か知らないけど多分麻酔だとは思う。
「後ほどまた尋問がありますので、それまでにあなたの軍隊のことについてお話してください・・」
その言葉を受け止めて特戦と武警の二人は部屋から出て行くと私はぐっすり眠ってしまうのであった。