第6話 おかまだけどおかまいなく
日曜日船橋駅前の交番の向い側の駅のほうで愛実を待つ。
女装してるけどおかまに見えるんじゃないかとドキドキだ。
ちょっと早く着いちゃったけど。
一人でいると心細い。
改札から愛実が出てきた。
私服の愛実は初めてだ。
フリフリのレースのスカートとか。
トップスも花柄のボタンのブラウスとか可愛い。
ちょっと恥ずかしくなってくる。
わたしはジーンズに。
ティーシャツの上に。
緑のカーデガンていう落ち着いたなるべく女っぽくない格好だ。
いかにもおかまですていう愛実のかっこみたいのは抵抗ある。
よく恥ずかしくないな。
まあ女の子には見えるけど髪長いし。
もう愛実は女の子歴長いんだろうか。
手慣れた印象だ。
愛実「おこずかいもらってきた?」
わたし「学校の友達と遊ぶって言ったらお母さん嬉しそうにくれたよ」。
愛実「5000円もかあ」。
「おかあさんよっぽどうれしかったんだね」。
わたし「小学校の時はいじめられて友達ほとんどいなかったから心配してたんだと思う」。
「小学校の頃の知り合いに女のかっこしてるの見られたくないんだけどね」。
愛実「そんなの気にしちゃだめだよ」。
「おかまはずぶとく生きなきゃ」。
「いじめもすごかったけどわたしは女の服で学校通ってたよ」。
「スカートとかはいてさ」。
「まあさいたまの浦和に住んでて関東でおかま特別入試してるのここだけだったから」。
「お母さんと引っ越してきたんだけどね」。
「お父さんさいたま市役所の職員だから千葉から通うのきついからって一人でさいたまいるんだけど」。
わたし「そうだったんだ」。
「愛実もずっと千葉かと思った」。
愛実「違うよ大丘女学園に受かったから最近引っ越して」。
「こっちには友達いないから」。
「すぐ話しかけたんだよ友達作るために」。
わたし「入学式から呼びかけられてたから小学校からの友達かと思ったわ」。
愛実「違う私から話しかけたの」。
わたし「愛実は社交的だものね」。
愛実「じゃあカラオケ行こうか」。
「ドリンクバーセットにするね」。
「ここでジュース入れるみたいね」。
桃のジュースを入れた。
さいたまにもこの系列店あるから。
「わたしはカラオケ中学になってから始めてきた」。
「繁華街はうろついたらだめですて言われてたから」。
愛実「小学生だものね」。
わたし「親となら来てもよかったんだけどね」。
愛実「この機械に曲名入れて本体に送信すると曲はいるんだよ」。
わたし「へえすごい」。
「こんな選曲の本分厚くて一杯曲あるんだ」。
愛実「最近の曲ももう入ってるのよ」。
わたし「すごいなあ」。
「西野カナなんて歌うの」。
「やっぱ大人なんだね愛実は」。
愛実が歌ってる。
西野カナでベストフレンド。
らららーらら らららーらら
ずっと友達でいてね。
親友の歌だよ。
いい曲だね。
わたし「わたしはAKB歌う」。
「ヘビーローテーション」。
「でも入れ方がわからないや」。
愛実「入れてあげるから見ててよ」。
「ちゃんと覚えてね」。
「これで検索して」。
「選択して送信」。
「わかった?」
わたし「たぶん。ありがとう愛実」。
愛実「ずいぶんかわいい曲歌うのね」。
ららーらーららららららーらーらら。
歌ってるとこ。
愛実が部屋についてる受話器でどこか電話してる。
誰と話してるんだろとみてた。
「ポテトとから揚げ頼んでたなんかつまみたいでしょ」。
「それよりトイレ行こう」。
女子トイレにお構いなしに入っていく。
まだ学校数日しか始まってないが。
外のトイレは男用入ってたのだ。
中学生の私でも男の私が女子トイレはいったら捕まると思って。
セーラー服着てる子が男子トイレに入っていくのは相当勇気がいることで。
本当はやだからなるべく避けてきたが。
女子トイレ半ば強引に入ると。
たぶん一人では入れないから愛実がいてくれてよかったけど。
あとで部屋に戻ると。
わたし「男の子だってばれたら捕まるんだからね」。
愛実「これから女の人生生きるて決めた人間が何いってるんだか」。
「ばれやしないから大丈夫だって」。
「髭も体毛もうちらはまだはいてないんだから」。
「パンツ脱がされたりしなければ確かめようないんだから」。
「それに優は結構女としても可愛いと思うよ」。
わたし「もう愛実ったら」。
愛実「最後の手段は生徒手帳見せればいいのよ」。
「まさか女子校通ってる男の子いるわけないんだから」。
「おかま特別枠入試は精神科の医師の紹介がないと知りえない情報だし」。
「ほとんどの人が知らないんだから」
。
「優も今度から女子トイレ入りなさい」。
「セーラー服で男子トイレ入るほうが問題よ」。
愛実にまるめこまれちゃった。
そのあともポテトつまんだり歌ったりしてたらあっという間に時間来てしまった。
「今日は予定がびっしりなんだからね」。
「次いこ。女の子の服見るの」。
「優は女の子の服どうやって買うようになったの」。
「はじめ男の子の服しかないでしょ」。
「まあ私の場合はよくわからないうちに女の服のほうが可愛いから買うようになったんだけど」。
「もう小さいころからスカートはいて小学校通ってたから」
「あんたの場合はたまにする女装でしょ」。
「男の子の服でいって女の子の服買うの恥ずかしくなかった?」
わたし「お母さんについてもらって恥ずかしかったけど買うようになったらうれしくなっちゃって」。
「一人で買うようになったよ」。
「お母さんについてきてもらったとはいえ」。
「はじめは恥ずかしかったよ」。
「優は気が小さいなあ」。
それはさくらにもいわれたけど。
おかまなんて恥ずかしいことやってればおどおどしちゃうと思う。
愛実みたいに堂々とできればなあと思ってる。
わたし「こんな大人っぽい店行くの」。
愛実「優は小学生の気分が抜けないのね」。
どう見ても高校生からがターゲットの店だ。
四月だからレディーススーツまで置いてある
これ可愛い。
ドットのミニスカートだ。
確かにかわいいけど。
小学生みたいな体つきの私たちにあうのかな。
愛実がはいてみると。
愛実「腰のふくらみがなさ過ぎて抜けちゃう」。
「やっぱ大人用だわ」。
わたし「そうよね。私たちくびれないしおしりも出てないし」。
「着れないよね。残念」。
トップスも着てみたけど。
袖とかやっぱり長めでだぼっとしちゃう。
愛実「着れることはきれるけどね」。
女の子って中学から高校は一気に体つき変わるから。
小学生の体型の私たちが着ると変な感じなのだ。
愛実「やっぱ小学生から中学生向きの服買うしかないのかもね」。
「中学生高学年だと体つき違うだろうし」。
わたし「女の子の服て選ぶのが意外に大変ね」
。
小学生向きの服屋さん来た。
愛実「まだホルモンが効いてないから今はこっちのほうがいいかも」。
「身長的にもこっちがいいかもね」。
「この黒で白い星空のスカートとか可愛いかも」。
「優お金多く持ってきてるんだから買えば」。
とりあえず着てみるね。
スカートでベルトするなんて普通ないだろうから。
女の服はサイズが重要だ。
何とか着れそう。
私もともと小さいほうだから女の子の服でも着れる。
逆にこの時期は女の子のほうが早熟で背が高かったりするのだ。
しかもまだおうとつがない子のほうが多いから男の体型の私でも着れる。
わたし「愛実にあう?」
「可愛いよ優買いなよ」。
「じゃあこれ買おう」。
「お母さん無駄使いして怒らないかな」。
「でも女の子の服は今まで家で着るくらいしか持ってないから買うのもいいかも」。
「2500円もするのか」。
「トップスまでは買えないな」。
愛実「優よかったじゃない可愛いの買えて」。
船橋駅に戻ってくると。
愛実「じゃあまた明日学校でね」。
わたし「今日はありがとう。楽しかったわ」。