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祈唄  作者:
第1章:出会い
9/71

9.従姉妹

 「お疲れ様です」

 カフェでのバイトを終えたユウは、店を出て駅へと向かう。

 バイトの間のメールをチェックをしているとどこからか懐かしい男女の声がした。

 (まさかね)

 あの2人がこんな遅い時間に街にいるわけがない。

 ユウは、苦笑しながら駅へと急いだ。

 駅の近くの公園まで行くと言い争う男女の声がする。

 (誰? こんな時間に……)

 公園の中に目を向けるとユウは目をみはった。

 (嘘! 杏奈に浩一!?)

 見ると杏奈に浩一が詰め寄っているようだ。

 杏奈は今にも泣き出しそうな顔をしている。

 「杏奈? 浩一?」

 近づき声をかけると2人はびっくりしたのか固まっている。

 「ユウ?」

 杏奈は、ふらふらとした足取りでユウの側まで来るとユウの両腕を痛いほど掴んでくる。

 「本当に、本物?」

 「何よ、それ?」

 ユウが答えると杏奈は、ユウに抱きつき泣き出した。

 「え?ちょいまち、何で泣くの〜」

 助けを求めて浩一を見ると浩一も涙ぐんでいた。

 (何?何なのさー)

 2人の反応にパニックを起こすユウだった。


 とりあえず、杏奈が落ち着くのを待って近くのファミレスに入る。

 「落ち着いた? 杏奈?」

 ユウの言葉にコクリと頷く。

 「ごめん、でもびっくりしたから。だってユウ急にいなくなっちゃうし。あの人達も」

 そう言うと黙ってしまう。

 「まぁね。急だったし、ごめん。で、2人はあんなとこで何してたの?」

 「こいつ、落第の危機なんだぜ? 毎日毎日、遊び回って」

 「あんたに関係ないし」

 話を聞くにつれて段々と見えてきた。

 「あたしは関係あるよね? 何で?」

 「だってあの人達、ユウから叔父さんと叔母さんの遺産取り上げた上に学費や生活費まで巻き上げて。それなのにあたしには慶修に通えって」

 やっぱりな。杏奈は、昔から曲がったことが大嫌いだったから。

 「まぁ、私が養子なのは事実だし。それに進学を諦めたのは、私の意志なの。慶修からは特待生の話はあったけど断ったの」

 「何で?」

 「高校は行けても大学の学費がね。慶修は授業キツいからバイトは無理だし」

 「慶修の大学進めばいいだろ?」

 浩一の言葉に杏奈はもっともだと頷く。

 「私、パパやママと同じ獣医さんになりたいの。それだと慶修は無理なの」

 「今はどうしてるの?」

 「後見人の家で通信に通いながら大学の学費貯めてる。後見人は全部出してくれるって言ってくれたけどそれは申し訳ないから」

 「今、幸せ? 後見人ってどんな人?」

 「若いけど成功してる人。私を引き取ったのには理由があると思うけど聞いてない」

 「何で聞かないの?」

 「多分、それを聞くとあの人の傷が開きそう。だから待つの、話してくれるまで」

 ユウの憂いを含んだ表情に2人はそれ以上何も言えなくなってしまう。

 「ほら、2人とも明日学校でしょう? 早く帰りなさい。杏奈も私のことは気にしないで学校行って。杏奈の人生なんだから、それに大切な従姉妹の人生が駄目になったらすごく悲しい」

 ユウは、真剣に杏奈に語りかけた。

 ユウの言葉が嬉しかった杏奈は、涙をこぼしながら言った。

 「分かった、学校行くよ」

 「うん、そうして。私また唄い始めたから。2人でおいで」

 


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