18.図書館
「元々、私と加納君は同じサークルで交流があったの。まぁ、今ほど仲良くはなかったけどね。それが変わったのは、大学三年の夏」
「何かあったの?」
「玲と知り合ったのよ。噂では、聞いていたけど直接会ったことはなかったの」
「そうなの?」
「えぇ、学部によって校舎が違うし。卒業まで知らない者同士ってことがよくあるのよ、大学ではね。たまたま、私と加納君がいた学部と玲の学部が一緒の校舎だったの。それでも、三年の夏までは話したこともなかった」
菜月の話から高校と大学の規模の違いを改めて知ったユウは、驚く。何よりこの三人が三年になるまで親交がなかったというのが信じられないのだ。一緒にいるようになってから時間は短いが、彼等の絆の深さは相当なものだと思うから。それがすごくうらやましかったのだ。
「あの二人と会ったのは、レポートの資料を探しに図書館に行った時よ。目的の本がなかなか見つからなくて、ひとけのないフロアに行ったの。そうしたら突然、大きな音がしたのよ。まるで何かがぶつかったような音が」
ガターン。
突然、響いた音に菜月は、体をすくませる。一瞬、地震かと身構えたがそれ以降何も音はしない。だが、今度は人が争うが声が響く。
怒鳴る男の声とそれを止めようとする女の泣き声。もしかしたら、男女の修羅場にでも居合わせてしまったのかもしれない。
正直、運がないと思った。そのまま知らない振りをして部屋から出て行こうとも思ったが、そうもいかない。あれだけの物音がしたのだ、怪我人が出てもおかしくはない。
(こんなところで喧嘩するんじゃないわよ)
菜月は、仕方なく音がする方向へ足を向ける。すると、一番奥にあるスペースの椅子が倒れており、近くにあった本棚が倒れはしないまでも中の本が散乱していた。
その近くで一人の男がもう一人の男に馬乗りになって何やら怒鳴りつけている。それを止めようと女が泣きながら必死にしがみつき止めようとしていた。
菜月は、すうっと息を吸うと大きな声で彼等を怒鳴りつける。
「あなた達、何しているの! 喧嘩するなら外でやってちょうだい」
すると突然響いた大きな声に二人は、固まり振り返った。その顔を見て菜月は、おやっと思う。馬乗りになっていた男に見覚えがあったからだ。その隣にいる女子生徒にも。
「加納君? あなた、何しているの?」
「関係ないだろう?」
「関係あるわよ。ここは、図書館よ。暴れたいなら、外でして。大丈夫? 斎条さん」
加納の横で泣きじゃくるサークル仲間にハンカチを手渡すと転がっていた椅子を立たせ、そこに彼女を座らせる。すると、ホッとした斎条は更に泣き出した。彼女のこの様子だと事情を聞くのは無理そうである。仕方ないので殴り合いの当事者達に話を聞こうと彼等に向き直る。
「で、何があったの? 加納君と…………誰?」
「知らないのか?」
「全然。うちの学部じゃないでしょ?」
「工学部で噂の女ったらしだよ」
「あぁ。聞いたことあるわ。私は、萩原菜月。あなたは?」
「………………佐藤玲」




