1.帰宅
茹だるような暑さの中、優一は家へと向かう坂道を歩いていた。
ギラギラと突き刺すような日差しに軽い眩暈を感じる。
「何で、俺の家は坂の天辺なんかにあるんだよ…………」
地元の駅からバスに乗り換え、自宅近くの停留所で下りた後、家までの五分程の道のりを歩いている。
優一の家は代々この辺りの地主でもある。元々、山だった土地を整備しているせいか、とにかく坂が多い。特に、優一の家は元々の山の頂上付近にあったせいかその道のりのつらさは、半端ではないのだ。
「意地を張らずに車を呼ぶべきだったか…………」
こんな平日の昼間に自宅に帰ったら、家の人間が騒ぎ出すのが目に見えていた為、一人で帰ってきたが、元々暑さに弱い自分の体質をすっかり失念していた。
それでも、足を止めることなく進み続けたせいか何とか家に着いた。
「やっと着いたか」
久し振りの我が家だが、ほっとすると言うより、気分が重くなるのはどうしてだろう。
屋敷へと続く門を見上げた優一の口からは、溜息が出る。
門というより、自分にとっては牢獄へと続く入口でしかない。
「優一坊ちゃん?」
これからの事を一人考えていたところに、タイミング良く(というか自分にとっては限りなく最悪なタイミングだが)門の横にある通用口から見なれた初老の男が出てきた。
「…………ただいま。竹内」
「連絡をしていただけたなら駅までお迎えに行きましたものを」
「いいんだよ。まぁ、歩きながら色々と考えることがあったから」
「早く中にお入り下さい。すぐに冷たいものを用意しますので」
竹内は、優一の手から鞄を取ると中へと入って行く。
「はーーーっ。諦めるか…………」
優一は、天を仰いで軽く肩をすくめると跡を追うように中へと向かった。




