50.決意
「あー、気になって眠れないや」
先ほどの電話が気になりユウは全然寝付けないでいた。
その上少し泣いたせいか喉の渇きを覚える。
寝るのを諦めたユウは、とりあえず喉の渇きを解消する為に起き上がり部屋を出るとキッチンに向かう。
そして、足音をたてないようにそっと廊下を歩く。
(さすがに、2人は寝てるよね)
優一の部屋の前を通り過ぎるとリビングへ続くドアがある。その扉に手をかけた時だった、中から話声が聞こえたのは。
(優君? ん? もしかして泣いてる?)
中から漏れてくる声はかすかに震えている。
(入りにくいなぁ)
優一も男だ。同世代の少女に泣いている姿など見られたくないだろう。
ユウは、扉の前に座り優一が落ち着くのを待つことにした。
この時、すぐに部屋に引き返せば良かったと思う。まさか、あんな話を聞いてしまうことになるなんて。
他人の秘密を盗み聞きしてしまうのがこんなに後ろめたいものだなんて思いもしなかった。
母親の為に女装をしていた。
そんなこと知られたくないだろうに。何で、よりにもよって加納さんに話すかな。
加納に良い印象を持っていないユウは、思わず眉を顰める。
(あんなへらへらした男に相談したってどうしようもないのに)
かと言って同世代の自分達には、何と答えてあげていいかは分からないけど。そこは人生経験の差があるから、まだあの男のほうがましなのかもしれない。
その時中から聞こえた加納の真摯な言葉に思わずユウは聞きいってしまう。
「いいか、お前はお前。それ以外には決してなれないし、ならなくていい。お前が負わなくちゃいけないことがあるとしたらそれは、精一杯生きるという責任だけだ。それは亡くなった妹さんに対しての兄として当然負うべきものだ」
加納の優一に対しての言葉はユウの心にも響くものがあった。
――――私は私。決して自分以外のものにはなれないし、ならなくていい。
そのシンプルでストレートな言葉には、迷っているユウにも答えをくれたような気がする。
ユウは、立ち上がり部屋へと戻ったある決意をして。




