43.迷子
肉食動物の前にさらされる、草食動物の気分。
それは正しく加納と相対して座っている優一の今の気分にぴったり当てはまる、絶対に。
「俺は、加納 拓真。東署の少年課の刑事だ」
「立木 優一。慶修の3年です」
「慶修のね………。単刀直入に聞くがユウとお前の関係は?」
「友人です」
「友人ねぇ………」
優一の言葉を加納は鼻で笑った。
(何だよ、このおっさんは………)
優一は、ふつふつと沸いてくる怒りを必死に抑え込む。
「接点が分からん」
「ユウの従姉妹と友人なんです。それが接点です」
「あー、あの嬢ちゃんか…………。なるほどね、いや悪かったな」
杏奈のことを話すと加納はいきなり態度をがらりと変えてきた。するどかった、目つきも若干良くなり愛想が良くなる。
「いやー、最近のユウの生活態度が悪くてな。悪いやつらと付き合いがあるんじゃないかって疑ってたんだ、すまん。保護者がそこら辺のことを気にしない奴だから俺らがその分きっちり見とかないと心配でな」
「俺ら?」
「ユウの保護者の元婚約者だ。俺ら3人、大学の同級なんだ」
(ああ、この人はユウを妹のように思ってるんだな)
まるで自分を値踏みするようにして見ていた理由に納得がいった。
「でもよ、少年も若いんだ。同年代の女を泊めてムラムラしないのか?」
「ムラムラって………。ユウはそういう対象に見れないんですよ、不思議なことに」
「じゃあどういう対象なんだ?」
「ユウはユウであって、女じゃない。でも、一緒にいるのが心地いいって感じですかね」
そう、白木はそういう対象に見れてもユウは見れない。自分でも不思議な所だ。
「まぁ、あの気難しいユウが心開いてるみたいだしな。仲良くしてやってくれ」
「言われなくても。俺にとっても貴重な女友達ですから」
「少年なら、女友達くらいたくさんいるだろ?」
加納は優一の言葉が意外だったのか驚きの声を上げる。
「基本的に人と関わるのが苦手なんですよ」
そう言った優一の目が一瞬暗く光るのを加納は感じ取った。
「そういう所が似てるのかもな、お前たちは」
「多分、同じなんですよ」
「同じ?」
「ユウは、親がいないせいで孤独を感じて生きてきた。俺は、両親はいたけれど精神的に捨てられて育ちましたから」
感情を一切排除した声で優一は淡々と答えた。
その様子を見た加納は、ユウにも感じる不安定な脆さを優一にも感じた。
(迷子が2人か。何やってんだ、周りの大人は……)




