40.不審者?
「悪かったな。面倒をかけて」
呼吸も落ち着き、顔色も戻ってきた優一は、あらためてユウに礼を言った。
「別にいいよ。良かった、顔色も良くなってきたね」
ユウは、わざと軽く流す。
わざと理由を聞いてこないユウに安堵しつつも、少しだけそれが不満だった。矛盾しているようだけど。
「あーっ、時間くっちゃったな」
「別に。朝までいるつもりだったし、いいよ」
優一の言葉に一瞬でユウの眉間にしわが寄った。
そんなユウに苦笑しつつ、優一はある提案をする。
「何だったら、今日も泊ってくか?」
その提案にユウはがばっと勢いよく顔を上げる。そして行動とは反対に恐る恐るといった感じで優一に問いかける。
「…………いいの?」
「ああ。一人でこんな所で夜明かしされるよりはいいさ」
「ありがとう」
「じゃあ、行くか」
2人は立ち上がり会計を済ませるとユウのバイト先でのおもしろいエピソードや優一の学校の話など他愛もない話をしながらも楽しくマンションへと向かい始める。
これまで2人だけで話すことがなかったからか話は弾んだ。
「へーっ、その店長と奥さんかなりおもしろいな」
「でしょ? 奥さんの方が年下なんだけど、見事に尻にしかれてるの」
「案外そういうほうがいいのかもな」
とある駐車場の前を通った時だった。止まっていた車から2人はいきなりビームをあびせられる。
「何だよ、まぶしいな」
「本当、何なのよ…………。げっ!」
最初は、何なのか分からなかったユウだが、車と中にいる人物を見て黙りこんでしまう。
「ユウ?」
優一は、ユウが再び不機嫌な様子になったのを見て困惑してしまう。
ビームがやむと車から男が出て、自分たちに近づいて来るのが分かった。
そして自分達の前に立ちふさがる。
男が自分を上から下までなめるように見てくるので優一は、いったい何なんだこの男はと内心腹ただしかった。
「ふーん、友達ねぇ? この不良娘が」
「別にあんたに関係ないし。それに友達が女とは限らないでしょうが」
「坊主、夜中に異性の友人を泊めるのは良識としてどうよ?」
「ばっかじゃない! あんたみたいなセクハラ野郎と優君を同列にしないでよね! 失礼にも程があるでしょ!!」
「はっ! よく聞けや、不良娘。この年ごろの野郎が下心なしで女を泊めるか?」
「最悪!! 本当にあんたってサイテー………」
いつの間にか自分をおきざりにして始まったユウとその知り合いらしき男の口論はどんどんと加速していく。
「あのー?」
「「何だよ」」
「あなたは一体誰ですか?」
優一は、男へと率直な疑問を投げかける。
「こいつの保護者の友人だ」
「友人ですか…………」
優一は、男の姿を見てうさんくささを覚える。
(確かユウの保護者は、IT関係の社長さんだよな。でもこの男は……)
男は、よれよれのスーツに咥え煙草をした見るからに真っ当な職業の人間には見えない。
優一がむける視線が自分を不審者としてとらえているのを敏感に感じ取った男は、スーツの内ポケットから手帳を出す。
「こういうもんだ」
「はぁ、警察。あなたがねぇ………」
「少年課の刑事でね。何だったら、補導してもいいんだぞ?」
物騒な笑みを浮かべる男に優一は軽く首をふる。
(さすがに警察の世話になったとなればまずいか)
「俺はあなたが言う下心はありません。困っている友人に一晩の宿を提供するだけです」
「あのな……、男ってのはいつ理性が本能に負けるか分からない生き物なんだよ」
「だったら、あなたも一緒に来ればいいでしょう?」
男は、優一から出た意外な言葉に目を丸くした後、大きな声で笑い出す。
「お前、変な奴だな」
「あなたに言われたくはありません」
それが加納 拓真との出会いだった。
不審者ではありません。一応(笑)
この出会いは彼らにとってはかなり重要なのです。




