37.叫び
「そうよ。だって問題を起こしたらいつ施設に戻されるかなんて分からないじゃない。せっかくの安定した生活の場を失いたくなんかないし」
そう言った後、その場の空気が固まるのが分かる。優一はど反応していいか戸惑っているみたいだし、ユウ自身も口に手をあてて黙り込んでしまう。
それからしばらく2人は無言だった。そしてユウが再び口を開く。
「初めてだよ、他人にこんなこと言ったの。ごめんね」
「いや、驚いたけどでも本当のユウを見たきがした」
「本当の私か。でも、本当の私ってどんな私だろう。今まで自分を作りすぎててよく分からないや」
ユウは、ストローを指でいじりながら呟く。
「私の一番最初の記憶ってさ、施設で何組もの大人が代わる代わる来て一緒に過ごすの。でも、大体1・2回かな、同じ人と過ごすのは……」
「それって……」
「うん、面談だったのかな。でも、大体ね私の容姿を見て去ってくの。ほら、すぐ分かるじゃない、外国の血が混ざってるのって。だから、内心諦めてた。私を引き取ってくれる人はいない、1人で生きていくんだって。でも……」
「でも、引き取ってくれる人がいた」
ユウは、嬉しそうな笑みを少しだけ浮かべる。
「うん、白木の両親はとっても優しくて本当の子供みたく育ててくれた。でもね、幸せな時間を送れば送るほど怖くなった。また、捨てられたら、施設に戻されたらって」
自分の手を強く握りしめながらユウは言葉を紡いでいく。
「だから頑張った。勉強や習い事も何もかも。白木の両親が自慢に思ってくれるようにって。でも、頑張れば頑張るほど被った仮面は、重くなっていった」
そう、努力すればするほど親と心の距離が開いていくのが分かってどうしたらいいか分からなくて身動きが取れなくなっていた。
だから、今でも分からない。白木の両親は私と過ごして幸せに思ってくれたのかそうじゃないのか。
そして私と今、一緒に過ごしてくれている玲はどう思ってくれているのか。
私はまた同じことを繰り返しているのかな。そして玲と別れる時にまた同じ気持ちになるのかな。
ユウの瞳から静かに涙が流れ落ちていた。
「大丈夫、きっと亡くなったユウの父さんや母さんは自慢に思ってたさ。どうだ、かわいい娘だろうって」
「………そうだといいな。優君が仮面を脱ぎ始めたように私も脱がなきゃね」
次は優一の叫びを書こうと思います。




