35.苛立ち
――――今日も友達のところに泊る。
――――分かった。気をつけて。
さっき送ったメールの返事を見て安堵の溜息が思わず出る。
ユウは携帯を思いきり握りしめる。
あの親子連れを見送ってから、ユウはまた公園のベンチに座っていた。
もう辺りは真っ暗で外灯の明かりだけが頼りだ。さすがに移動しないと危険だと思い立ち上がると、自分の携帯が震える。
(誰だろう?)
ユウは、携帯のディスプレイに映し出された名前を見て思わずうめく。
「げっ、最悪。………何であいつが」
それは、玲の友人の加納だった。多分、朝のやり取りで気になったのだろう。
「はい」
「おっ、不良娘。さすがに二日連チャンの外泊は、ダメだろう。今すぐ帰ってこい」
「は? 関係ないじゃん。友達と約束があるだけだよ」
「嘘つくな」
「嘘じゃないし。だいたい、保護者である玲が許可だしてるんだからいいじゃない」
その言葉に電話越しに加納が大きく溜息をついたのが分かる。
「あのな、仕事をサボった不良娘が生意気言うんじゃない」
「は? 何で知って……」
「様子が気になって昼休みに行ったら病欠だって言うじゃないか。みんな心配してたぞ」
「玲に言ったの?」
「言ってない。とにかく帰ってこい」
「嫌。別に告げ口でもなんでもすればいい」
それだけ言うとユウは通話を切る。
最悪だ、何なのあいつ。人のことにうるさく口出してきて、あんたには関係ないじゃん。
ユウは携帯の電源を切ると、公園から出てファミレスへと向かった。
何故だか分からないが自分の心がすごい苛立だった、なのでそれをぶつけるかのように前を睨みつけて歩く。相当頭に血がのぼっていたのか普段は周囲の様子に敏感ユウもその様子を見て周囲の人間が自分と距離を空けることにも気がつかなかった。
店に入るとちょうど隅の席が空いている。そこに座るなり、半ば投げつけるようにバックを放り出す。
その様子に恐れをなしたのか店員は注文を取るとそそくさと厨房へと戻っていく。
出された水を飲むと少しだけだが落ち着いてきた。
ユウは、携帯を出し電源を入れる。何件か着信履歴が残っているが全て加納からだった。
(玲なわけないよね)
しばらく、携帯を睨みつけていると誰かがこちらに寄ってくる。店員だと思い、顔も上げずにいると声をかけられた。
「何してるんだ?」
声の主は優一だった。こんな状態で会うはめになるとは、思わなかった。
「ここいいか?」
自分の正面の席を指してくる。
「…………好きにすれば」
それだけ言うと優一は、席に座り注文をすませる。
悪いけどいつもの私を作っている余裕なんかないんだよ。
ユウはなるべく目を合わさず黙っていると、優一は不思議そうな顔をしながらも深くは追及してこなかった。




