32.留守電
自分の部屋に帰るなり優一は、ソファーに倒れ込む。
(…………疲れた。謹慎か、まぁ妥当だな)
つまらない挑発に乗ってしまった。きっと謹慎中に噂になるな。
杏奈に対する暴言はまず間違いなく嫉妬から生まれたもの。
男は杏奈に相手にして貰えないから。女は、確か俺が告白を断ったやつの友人。
最後に俺が殴ったのは、多分俺のポジションが羨ましいのだろう。
「まぁ、テスト前だしいっかな」
優一は1人つぶやき、着替えの為に自室に戻ろうと立ち上がる。
部屋に向かいかけた時、電話に赤い光が灯っているのが目についた。
――まさか……
嫌な予感に優一の顔は強張りわずかに鼓動が速まる。
フラフラとした足取りで電話の前まで行くと微かに震える指で光るボタンを押す。
作りものの声とピーという音の後に声が続く。
「私だ。学校から連絡を貰った。無様な真似をしたな。謹慎中家に戻れ」
電話の主は、それだけ言うと電話を切った。
「まぁ、そうだよな。家に連絡するよな」
優一はその場にずるずると座り込み、床を見つめた。
突然の父からの電話。 留守電なのにここまで威圧する父。そして萎縮し怯える自分が情けない。
この間は、我ながらよく反論したよ。
あの時の自分に拍手してやりたいくらいだ。
家に戻る、それを考えると憂鬱になる。 別に父とは顔を合わすことはないだろうからいい。問題はあの人だ。
年々、おかしくなってしまう、可哀想なあの人。
俺達の母親。
ーーいや、妹の母親か
「さて、どうするかな」
今の優一の顔は本当に痛々しい。そして何より迷子の子供のような途方にくれた瞳だった。




