31.瞳に映るもの・後編
気がついたのはいつからだろう。
私はそれまで思っていた、自分は特別だと。
他人からの愛情を信じず、拒絶していた玲が受け入れる特別の人間だと。
――自惚れもいいところだ。
ユウは、歪んだ笑みを浮かべる。公園のベンチに1人腰かけて。
加納と別れてからバイトに行く気が起きず、電話をかけ休んだ。
今まで欠勤したことがないユウだから店長にかなり心配させた。
かなり自己嫌悪に陥ったけど、仕方ない。このまま無理して行っても今の自分をみたら余計に心配をかけることになる。
気づいたのは、何でもないいつもの場面。
多分、自分の中で恋心というものが生まれた瞬間だった。
自分の視線に玲への淡い思いが混ざり始めた頃、自分を見つめる玲の視線が自分を見ていないことに気づいた。
理由なんてない。直感的に感じた。
自分を大切そうに愛おしむような視線。でもそれは決して自分に向けられていないのだ。
何かが音をたてて崩れたような感じがした。 昔と同じ、自分の中に確かに存在する真っ暗な闇。
加納は言った、心を開けと。
でも、それは無理だ。 玲が本当の私を見てくれないかぎり、2人の距離は永遠にこのまま。
その距離を縮める勇気がだせない。
「……お願いだから私を見て」
俯いたユウの瞳からは、とめどなく涙が零れ続けた。
ただ私は、白木 優華という人間なんだと玲が見ている誰かではないと認めて欲しいだけ。
でもきっとそれは無理だ。
だから私は気持ちを封じ込めた。
例え誰かの代わりだとしても、家族なら側にいられるから。
だけど確実に私の中で気持ちが大きくなっているのが分かる。
どうしたらいいのだろう。




