29.事件・後編
キーンコーンカーンコーン。
授業の終了の鐘が鳴り響くと教室内は一気に騒がしくなる。
優一は、ノートを閉じて眼鏡を拭く。
さすがにテスト前になるとノートをとる量が増えるな。……飯食おう。
カバンから財布を取り出し、購買に向かうべく席を立つ。
窓際の席に目を向けると仲良く机に沈没している姿が見えた。
(アイツら、何やってるんだ。テスト前に!! また追試を受けたいのか)
優一は、窓際の一番後ろとその前の席で仲良く寝入っている2人の前に立つ。
ポン、バシ!
優一は、遠慮なく2人をこづく。
もちろん、ポンという軽い音が杏奈だ。
「優君? …………おはよ」
「おはよ。駄目だろ、居眠りしたら」
「あれ、授業終わっちゃった」
「うん。ていうか、まだ起きないのかこの馬鹿は…」
優一は、眉をつり上げ今度は椅子の足を思い切り蹴飛ばす。
かなり激しく蹴り飛ばしたせいか、その衝撃でバランスを崩した椅子が座っている浩一と共に倒れる。
「何だ! 地震か!?」
浩一は、機敏に立ち上がるとキョロキョロと辺りを見渡す。
「馬鹿か! お前は!」
頭上から優一の冷たい声と目線を受け、ようやく状況を理解したのか、ハハハと笑って誤魔化す。
「何だ、もう昼か! よし、2人とも行くぞ」
「はーい。優君、行こう」
優一は、2人のやり取りを見て頭を抱える。
コイツらは、自分達が受験生であることを自覚しているのか……。
他人のことだが心配になって来る。
「何をやっている、行くぞ」
浩一は、もう教室の出口にいる。
「はいはい」
杏奈と2人、浩一の元に向かう。後ろの席に溜まったクラスメートの前を通り過ぎた時だった。
「尻軽女」
優一がその声の主に目を向けた時だった。
後ろを歩いていた杏奈が転けた。
「痛った〜」
「大丈夫か、白木?」
杏奈の腕を取り立ち上がらせる。
「次のターゲットは、委員長? 委員長、止めといたほうがいいよ。そのサイテー女」
「そうだぜ、夜な夜な繁華街歩いて男あさってんだからな」
数人の男女が笑いながら杏奈を嘲笑する。
「何だと! ふざけんな…」
その言葉に反応したのは浩一で、今にも男につかみかかろうとしていた。
「浩一、止めろ。そんなことより白木を保健室に」
「ああ」
2人で杏奈を支えながら保健室へ向かい始めると自分達を無視したことに腹を立てた男が今度は優一にケンカを売ってきた。
「さすが、委員長。相変わらずの平和主義。やっぱりあの母親の影響ですか? 女の子なんだからケンカはしちゃいけませんてか」
その言葉を聞いた時、優一は、かっとなり気がつくと相手を殴り飛ばしていた。
そしてその場に駆けつけた教師達に校長室へと連行されたのだった。
優一サイドにとってのキーワードが出ました。もちろん、クラスメートが最後に発したセリフです。




