26.平和な朝
「じゃあ、俺ら学校行くから」
「うん、私も着替えてバイト行く。杏奈、ちゃんと叔母さんと話すのよ。いい?」
ユウの言葉に杏奈は、渋々頷いた。
「じゃあね」
ユウは大きく手を振って駅方向に去って行った。
「俺らも行くぞ」
優一達は学校へと向かう。時間的にかなり早いがきっと校門の前で浩一が待っていることだろう。
「……だってあの人達、ユウと会うなって言うの」
杏奈は、ゆっくりと昨日の騒ぎについて語り出す。
優一は、黙って話を聞いてやる。
「あの人達も自分達がしたことが後ろめたいの。だから、私とユウが会うことが気にくわないのよ」
「じゃあ、白木はやりたいようにすればいいんじゃないか? ユウは友達なんだろう?」
「うん、そうなんだけど、ユウはどうなのかなって」
ピシッ!
優一は、杏奈にでこぴんをくらわせる。
「痛い!」
「あのな、ユウだって暇人じゃないんだ。白木が大切じゃなきゃ、夜中に探したり一緒にいたりしないだろうが。本当にバカだよな」
「ひどい。でもありがとう」
「どうも。あとあのバカにも謝っておけ」
優一が指さした先を見て杏奈は、嬉しそうにはにかみながら笑った。
その笑顔は、かなり可愛くて優一は目をそらす。
(ヤバいって、シャレになんねー)
校門の前で座り込んでいた浩一がこちらに気づき叫ぶ。
「お前ら、おせーんだよ!」
「そっちが早過ぎなんだよ」
朝からテンションの高い浩一を見て本気でげんなりする。
見れば空手の胴着姿だ。
「「空手バカだから仕方ないか」」
おもわずハモってしまった優一と杏奈は、笑いながら浩一の元へと向かった。
こんなのんびりとした朝を迎えた俺達に、この先に起こるであろう出来事を予測しろというのはどだい無理な話だったのだと後になって思う。




