19.何とでも言えば?
カラオケについてから順番で歌い始めついに、浩一の番がきた。
杏奈と2人で手拍子をしたりして盛り上げていると、苦痛の表情を浮かべた優一がフラフラと扉から出て行くのが見えた。
浩一と杏奈は気付いてないようで、盛り上がっている。
(心配だし、見てくるか)
ユウは、同じように扉を開けて出て行く、すると部屋から少し離れた場所に座り込んだ優一を発見する。
そっと近づくと優君の呟きが聞こえた。
「しっ……死ぬ」
(ははは、やっぱりね)
「大丈夫? 優君」
笑いながら声をかけると優一がうつろな瞳をして問いかけてくる。
「何でお前らあれが平気なんだよ」
心なしか口調がくだけたものになってきた。
「おっ、いいね。大分くだけてきた」
ユウは隣に座り込み、クスクスと笑う。
「うるせー、あんなの聞いてたらおかしくもなるわ! あんな怪音!」
「あははは。怪音! いい、それ」
優一の的を得た言葉が笑いのつぼにはまる。思わず、床をバシバシと叩いてしまう。
ふと隣を見ると優一が呆れ顔をしている。
(いけない、いけない)
「慣れよ、慣れ。そのうち味が出てくるよ」
「そんなもん出るか。あれ」
「まぁ、一度は洗礼を受けなさいよ」
「噂では聞いてたんだけどな。まさかあそこまでとは」
優一の言葉にユウは疑問を持つ。
「噂?」
「空手部の奴らがな」
「ふーん。知ってて来たんだ」
「本人は歌うの好きだって話だから。まぁ、付き合ってやろうかと」
(へーーー、優しいんだ)
「優しいね、優君は。じゃあ、そんな優君にプレゼント。手出して」
「?」
優一は不思議そうな顔をして手を出してきた。
「これがあれば、ちょっとはましだよ?」
そう言い残すとユウはルームへと戻ることにした。
しばらくして、乾いた笑い声と叫びが後ろからこだまする。
「ははははは。………お前らが一番ひでぇ!」
ユウが優一に握らせた物、それは耳栓だった。
(何とでも言えば?)




