14.杏奈の過去
結局、授業は全てサボった。
途中で荷物を取りに行き、駅前のバーガーショップに入る。
周りを見ると同じように制服姿の人間がたくさんいた。
(案外目立たないよな)
優一達は、適当に食べる物を買うと店の一番奥に陣取った。
「そう言えば白木。期末大丈夫なのか? 流石に僕も今回は面倒見れないよ」
「ん? 大丈夫だよ、勉強することにしたから」
「優一、杏奈はやる気さえ出せばそこそこいくぞ」
浩一の言葉に優一は、本当に大丈夫なのかと眉をしかめた。
「大丈夫だってば。この間までは自分に学校に行く資格がないって思ってたからしてなかっただけ」
杏奈は、さらっと言った。
「資格?」
優一は、思わず聞き返す。
杏奈は、飲み物を手で持ちながらたんたんと話し始める。
「うちの親ってさ、お金のことしか考えない人間なの。あたし、それが嫌で小さい頃から従姉妹の家に入り浸ってた」
杏奈は、その頃を思い出したのか手に力がこもる。
「高校入学直前に叔父夫婦が亡くなったの。そしたらアイツら、従姉妹から遺産を全部巻き上げたの」
「何故? 相続権はその従姉妹だろう」
「従姉妹は養子なの。それで何か手を回したんじゃない? ずる賢い人達だから」
ベコッ。
杏奈の手に持った紙コップがヘコむ。
「従姉妹は、慶修に入学が決まってたけど入学式当日にいなくなっちゃった。従姉妹の家は更地になっててあの人達は、何も教えてくれなかった」
優一は、確か新入生代表が直前になって自分になったことを思い出す。
「反抗として一切の勉強を放棄しようって。でも先生は、無理やり進級させるし」
「どうして反抗を辞めたの?」
「この間、従姉妹に再会して、諭されちゃったの。だから、勉強するの」
そう言って杏奈はニッコリと笑う。
「でもね、先生には感謝してるよ。おかげで優君とも仲良くなれたし」
「そうだね。僕も感謝してるかな」
優一も同じように笑う。
「おーい、そこの2人! 2人の世界に入るな。優一、杏奈を口説くな」
「あはははっ。いいね、それも。ねっ? 優君」
「そうですね、僕の方が優良物件だけどどう?」
「えー、どうしよう。迷っちゃう」
杏奈と優一は、ニヤニヤと悪魔の笑みを浮かべて浩一をからかう。
最近の2人の楽しみは、こうやって浩一をいじることである。
「おっ、お前らー!」
浩一が立ち上がり叫んだ、その時だった。
バコッ。
いきなり後頭部を打たれて浩一は、頭を押さえてうめく。
優一と杏奈は、浩一の後ろにいる人物に視線を移す。
「浩一、他の人の迷惑だから叫ばないの」
「ユウ!」
杏奈は、嬉しそうに声を上げた。
優一は、その人物の顔を見て驚く。
(………母さん)
現れた少女の顔は、そっくりだった。自分の母親に。




