12.心地良い場所
「ユウ君!? どうしたの?」
優一が教室のドアを開けるなり杏奈の悲鳴にも似た声があがる。
「何でもありません」
優一は、そう答えたが何でもないではすまされない姿だ。
左目付近には、薄い青あざができ口元には、ばんそうこうが貼られていた。
「優一? どうしたんだよ!! ちょっとこい」
浩一は、優一の腕を掴み教室の外へと引っ張って行く。杏奈は、2人の後を追いかけた。
連れて行かれたのは、屋上。
「授業が始まるんですが?」
屋上のドアの前に陣取り動こうとしない浩一に一応抗議をしてみたが無駄なようだ。
「その顔、どうしたんだよ」
「昨日の夜、街を適当にブラブラしてたらからまれた」
「おいおい、らしくないな」
「ユウ君、もしかして制服だった?」
「ええ」
「駄目じゃん、私服で遊ばないと」
「そういう問題かー」
「「うるさい」」
優一と杏奈は、それぞれ耳を塞ぎながら言い返す。
2人は、浩一を無視し屋上の柵を背にして座り込む。
「それでどうしたの?」
「珍しく親から説教があったんだ。ちょっと嫌な事を言われたから、ムシャクシャしてたんだよ」
「なら呼び出してくれれば良かったのに。一緒に遊んだよ?」
「次からそうするよ。いい天気だなぁ、今日はサボるか」
晴れ渡る青空を見上げながら、優一は父親の言葉を思い出す。 普段は成績のことしか興味のない無関心な父親。
それがどこから話を聞きつけて来たのやら、友人は選べと言ってきたのだ。
(本当に勝手な人だよ、あの人は)
隣で携帯をいじる杏奈とその隣でふて寝をする浩一をチラリと見てため息をつく。
居心地が良くなったのは自分なのだ。
今なら友人だと言える、ただ恥ずかしいので言わないけど。
浩一と同じように床に転がり目を閉じる。
すると、フワリと気持ちのよい風が吹き抜けた。
(何か変わったよな、俺)
2人には見えないように優一は笑う。
こんな時間が続けばいい、永遠に。




