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ターゲット7 実家3

「よく帰ったな、息子よ」


「はい、父さん」


 俺の目の前には慣れない人なら卒倒してしまいそうな覇気を垂れ流したおっさんこと俺の親父がいる。

 やばい、手の震えが止まらない・・・。


「話は食事をしながら聞こう」


 そういって親父は俺を連れて食堂へ向かう。


 身長約二メートル三十センチの親父はやはりでかい。後ろから見ても威厳を感じる。感じすぎてトラウマがよみがえる。








「それで?今日はどうした」


 親父は姉さんと涼が席につくとそう切り出した。


「はい、実は・・・」


 俺は宝島沙織に狙われていることについて話した。


 話をしている時親父は終始無言だった。話し終えると親父は体を小刻みに震わせている。そりゃそうだ、自分の息子が死ぬ可能性があるから怒りで震えているのだろう。

 が、何を思ったか親父は突然笑い出した。


「くははははは!面白い、実に面白い!」


 はぁ?こいつボケたか?

 俺死ぬかもしれないんだよ?子供が心配じゃないのか?怒っちゃうよ?


「あ、あの、父さん。何が面白いのでしょうか?」

 

 そういうと親父はにやりと笑って答える。


「くっくっく・・・。何が面白いかって?お前の実力を試す絶交のチャンスじゃないか」


 脳みそに蛆でもわいてんのか戦闘狂バトルジャンキーが思わずそう言いそうになってその言葉を飲み込む。


「実力ってどういうことですか?」


「言葉の通りだ。ヒットマンと戦う機会なんて滅多にないぞ。それに噂によれば宝島沙織とやらは、その界ではなかなか有名な将来有望の天才ヒットマン候補と聞くぞ」


「候補?ってことはまだヒットマンではないのですか?」


「ああ、その通り。まだ殺しの経験はないにしろ銃や剣の扱い、薬物の生成技術などその他諸々が類を見ないほど優秀らしい」


 げー・・・、そんなんに狙われてんのかよ。


「俺を頼ったんだろうがなぁ息子よ?俺の会社を継ぎたいならそれくらい自分で対処してみろ」


 親父は不敵ににやりと笑うと席から立って自分の部屋へ帰ってしまった。

 いえ、別に継ぎたくないです。






 食事が終わると涼が走って俺の方に来た。


「兄貴!兄貴!ヒットマンってどんな人!」


 俺の周りで涼がピョンピョンはねながら聞いてくる。

 ヤダ可愛い。


「どんな人って言われてもねえ・・・」


「こら!涼ちゃん、大ちゃん困ってるでしょ!」


「ごめんなさい!」


 姉さんの言葉に涼は90度腰をまげて謝る。

 もう見事としか言いようがないような角度。


「いやいや・・・そこまで謝らないでいいから」


「それで!ヒットマンってどんな人!」


 復活した涼はまたもやキラキラした目で聞いてくる。涼が犬だったら尻尾どころか全身を使って知りたいアピールするんだろうなぁ・・・。

 つーかどんな人って言われてもな。


「うーん・・・、僕もあまり話してないしなあ・・・・・・」


「そっかー、残念だ・・・」


 涼はシュンとうなだれる。

 何度も言うが涼君ったら可愛すぎ。抱きしめたくなる。


「でも俺兄貴のこと見直したわ」


「何が?」


「だから!ヒットマンだよ!ヒットマン!しかも天才!かっこいいじゃん!そんなのに狙われてる兄貴ってすごいな!」


 すごいのか・・・それは?やっかいごとがやって来ただけだと思う。

 だが目をキラキラさせた涼にそんなことは言えない。


「不謹慎よ涼ちゃんお兄ちゃん死ぬかもしれないんだから」


 姉さん・・・、なんて常識人なんだ・・・・・・。


「えー!でも兄貴ってさ親父の≪地獄へご案内ツアー≫も制覇したじゃん!銃弾だろうが毒だろうが効くわけないじゃん!」


 ≪地獄へご案内ツアー≫?なにそれ聞いたことないんだけど?


「ね、ねえ・・・≪地獄へご案内ツアー≫って何?」


 姉さんと涼は一瞬何言ってんの?と言う顔をしたが次にはああ、そういえばと言う顔になる。


「そうだったわね。大ちゃんには知らされてなかったわね。大ちゃんこの家を出る前にお父さんと温泉旅行に行ったでしょ」


 そういえば、記念にと連れられて行ったような?


「よく思い出してみて。その旅行ってお父さんと涼ちゃんのほかに誰かいた?」


「・・・いなかった」


「その旅行ってね、お父さんが涼ちゃんに一人暮らしが耐えられるかのテストだったの」


 テスト?どういうこと?


「他の旅行客がいなかったのは≪地獄へご案内ツアー≫が危険すぎるから人払いをしていたんだって。詳しくは知らないけど、食事はすべて猛毒入りでそれに耐えられるか、常に大ちゃんが緊張感を張ることができているか、地図をちゃんと読むことができるかなんて内容があったらしいわよ」


 そ、そんな危険な旅行だったのかよ・・・。親父との旅行とか初めてで少し浮かれてたのに・・・。


 なんて話をしていると時間帯にもそろそろ帰った方がいい時間となっていた。


「さて、そろそろ帰るか」


 結局ここにきてもなんも意味なかったなあ・・・。


「あら、大ちゃん泊まって行かないの?」


「うん、僕も学校だからね」


「兄貴!ヒットマン倒したら連れてこいよ!」


「連れてくるって・・・」


「約束だからね!」


「まあ頑張るよ・・・」


 その前に警察に連れて行きたい。


「それじゃ、バイバイ」


 なんの収穫もなかったけど姉さんと涼に会えただけでもよかったかな。

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