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time to believe now 2

基本的に会話で物語は進みます。

 一月二十二日 土曜日 昼下がり




「――ねえねえ、ちょっと来てくれるだけでいーからさぁ、ね、ね?」


「……はぁ、しつこいですよ、何度も断ってるでしょう」


「そこをなんとか、ね? 助けると思って」


「だから、まず用件を言って下さい」


「来て欲しーの、来て欲しーのよ。ねえ、お願い、いいでしょ?」


「よくないです。来て欲しいって何処へですか? なんでここじゃダメなんですか?」


「ここじゃないのよ。来て欲しーの、お兄さんに来て欲しーのよ、ね? ね?」


「……ワケわからん」


 季節は冬。

 一月のとある土曜日の放課後。

 午前中で学生としての使命を果たした俺は、学校帰りに夕食の買い出しをしていた。

 場所は駅前商店街。

 駅前から東に向かって一キロメートル以上続くアーケード街。

 このアーケードを抜けた先にある高校に通っている為、電車通学者である俺にとって、この商店街は通学路である。

 帰宅すべく駅へと向かうその途中で買い物をする……と考えるのは、もちろん俺だけである筈もなく、放課後ともなれば、ウチの学生のみならず、そして電車通学者のみならず、この街にある学び舎で学ぶ学生達の誰もが、この商店街へとやって来るのだ。

 そんないつも通りの放課後、いつも通りの商店街で、いつも通り買い物をしていると、いつもとはちょっとだけ違う事態に遭遇した。


「お願ーい、手間なんて取らせないから、ね、ね、いいでしょー? ねえ」


「すでに手間です」


 かれこれ十五分は過ぎただろうか。

 正確には判らないが、体感的にはそのくらいだ。

 その十五分間、ずっと足止めを食っていた。

 この、ネオンに映えそうな艶やかな出で立ちをした妙齢の綺麗な女性、によって。

 アーケードを駅側から入り、最初の横町にある行きつけの八百屋で、白菜とパプリカとまいたけを購入後、再びアーケード街へと足を踏み入れようとした瞬間、ネオンに映えそうな艶やかな出で立ちをした妙齢の綺麗な女性に引き留められたのだ。

 その人は、はっきり言って美人の部類に入る女性だった。ウェーブのかかった長い髪は、セットもカラーリングも完璧で、ヘアカタログにでも載りそうな程。短いスカートから伸びる肉感的な脚は、俺と同年代の女子からは感じる事の出来ない艶めかしさを放っている。

 しかし、如何せん派手だ。

 濃いめの化粧に、高級そうな毛皮のコート、そして強く存在を主張する数々の装飾品。

 高校生の俺では、ただ隣に居るだけで緊張してしまう。


「大丈夫、すぐよ、すぐだから、ね? ほら来てってば、もーお姉さん引っ張っちゃう」


「やめて下さい」


 宗教の勧誘?

 キャッチセールス?

 ……どちらも違う感じがする。

 だけど、こんなネオンに映えそうな艶やかな出で立ちをした妙齢の綺麗な女性が、学生で賑わう土曜お昼の商店街において、一学生でしかない俺を何処かへと(いざな)おうとしているのだ。これは警戒して然るべき状況である筈。


「本ッ当に困ってるの。ね? お願い、こっちに来てよー」


「……ふぅ、困ってるのはこっちだよ」


 用件を訊いても「こっちに来てくれー」の一点張り。しかも彼女の示す方向は明らかに裏通り。そこは店舗の背面が連なっていて、云わば賑わう商店街の舞台裏。これまでずっとお客の立場を取ってきている俺には、全くと言っていい程用事がない。そこへと見ず知らずの人間に導かれても、楽しい想像は無理だ。嫌な予感しかしない。


「ごめんなさい。俺、もう行きますね」


 ……なんとなく。

 なんとなく彼女が困っているのは、本当のような気がした。とは言え、その怪しさは無視できない。十五分超の押し問答が俺に出来る精一杯だ。俺は家路へと……


「やーっ、行っちゃダメ! 来て欲しーんだよっ、来てくれるまで離さなーい!」


 ……つこうとしたのだが、ネオンに映えそうな艶やかな出で立ちをした妙齢の綺麗な女性に妨害される。


「えっ? わっ、ちょっと、は、離して下さい!」


 さすがに驚いた。

 ネオンに映えそ……お水系の派手な女が、帰ろうとした俺の腰に組み付いて来たのだ。

 まさかここまでするとは。

 というか、この構図は客観的に見て……。


「お願いっ、来て欲しーの、来て欲しーのよ! お兄さんじゃなきゃダメなのよ!」


「何なんですか一体!? なんで俺!? いやそれより周りっ、みんな見てる!」


 アーケードを行き交う人達は足を止め、こちらへと視線を向けている。俺が視線を合わせようとすると、誰もがそそくさ足を動かし始めた。

 見事な見て見ぬふりだった。

 かなりの確率で痴話喧嘩と思われている事だろう。

 しかもホステスと学生のカップリング。


「来て! お願い! もうちょっと、もう少しで、カルチョをっ!」


「カ、カルチョ……?」


「来てよ! カルチョの為なの! こっちに来てっ!」


「落ち着いて下さいっ、何ですかカルチョって!?」


「三角草が咲く前に! カルチョの為なら! お願いだから来てっ!」


「ミスミソウ!? 何それ!? もう全然解らんっ!」


「こっちに来てっ! 来てっ! 来てっ! 来てぇぇぇーーー!」


 ……まずい。

 何故か彼女はひどく白熱している。

 最初の軽めな雰囲気は消え始めていた。

 アーケードを歩く誰もが足を速めて俺達に関わらないようにしている。――いや、一人、俺と同年代くらいの女子が、ものすごい形相でこちらを見つめていた。

 どうやら、自分で思っている以上にのっぴきならない事態のようだ。

 俺は、自分の腰にしがみ付いている女性の頭の上に手をやり、何とか落ち着かせようと試みる。


「は、話聞きますから、ね? 一旦落ち着きましょう。さあ、深呼吸を……」


「――いいからきなさい」


「……ッ!?」


 これは誰だ?

 ……いや、この言い方はおかしい。

 訂正。

 この人は、本当にさっきまで話していた女性なのだろうか。

 別に姿形が急に変化した訳ではない。その表情だ。今の表情が最初の印象と全く重ならない。

 それはひどく、ひどく冷たい表情。

 先程までは終始笑顔で、いったい何がそんなに楽しいのかと問いたくなるほど明るい表情だった。ところが今の顔つきはどうだ、一切の感情がそこに見つけられなくなっている。混乱していた俺の頭を、寧ろ冷静にしてしまうその冷たい表情。俺は彼女から目が離せなくなってしまっていた。

 そのまま膠着していると、この状況を変えてくれる第三者の声。


「――あー、君?」


 それは男性の声。

 後ろから声をかけると同時に、その声を発したらしき人物が、俺の肩へと手を置いてきた。

 少しだけ逡巡してから、ゆっくりと振り向く。するとそこには……


「げ……」


 ……お巡りさんが居ました。


「あ、いや、これは、その……」


 当然の如く、しどろもどろになる俺。……何故だろう、俺に非は無い筈なのに、つい悪怯れてしまう。


「ん~と、徳英の生徒さんかな?」


「あ、は、はい」


 警官は、俺の左胸に目線を合わすように腰を曲げながら、そう確認してきた。

 俺が今着ている紺のハーフ―コートは学校指定。その為、左の胸の所に学校名が刺繍されている。この警官はそれを見たのだろう。下に着ているブレザーを見れば一発で判る事だが、俺は上着の前はガッチリ閉める主義だ。


「さて、では……何をしていたんですか?」


 目の前の警官の口は動いていない。その後ろに居るもう一人の警官が言葉を発したらしい。警らは二人一組が基本だから、居て当然と言える。


「ええと、なんと申しますか……その、この人が……」


 そう言いながら元凶たる女性に目を向けるが……


「……て、あれ?」


 居ない。

 ――え? 居ない!? 

 キョロキョロと周りを見回してもやはり居ない。

 信じられない事に、今の一瞬で逃げたようだ。


「お~い、どうした、何か探しているのかい?」


「えっ? あ、いえ……」


「ふむ、何やら様子がおかしく見えますね」


「そうだな」


 二人の警官は、俺を不審者認定してしまったようだ。……まいった。


「学生証は持っているかな?」


「もちろん持っています」


 俺は淀みなく答え、淀みなく内ポケットに手を入れ、淀みなく生徒手帳を取り出す。なんとか彼らの不信感を拭わねば。


「見せてもらうね。……うん、確かに徳英の生徒だな」


 『私立徳英学院大学附属高等学校』。

 俺は間違いなくそこの生徒だ。


「名前は……因幡(いなば)志朗(しろう)君、ね。因幡、いなば、か……」


「……ああ、珍しいですか?因幡国(いなばのくに)の因幡です」


「いや、そういう事じゃなくてね、本部にも同じ名前の警部さんが居たなぁ、と思ってね」


「んぐ」


 ――それは父です。とは口が裂けても言わない。

 俺は父さんに迷惑をかけるのが何よりも嫌いだ。出来れば父さんを煩わせずに乗り切りたい。


「えー因幡君、持ち物を確認させて貰っていいですか?」


「あ、はい」


 若い方の警官の要望にすぐさま応える俺。

 これは職務質問。

 仮にも警官の息子である俺は、それなりに彼らの仕事を理解しているので、無駄にごねたりしない。何より、後ろ暗い事など無いのだから。


「どうぞ」


 スポーツバッグを肩から降ろし、ジッパーを開け、中が見えやすいように大きく口を広げる。


「……うん……うん、はい、どうも。次はポケットの中身を見ていいですか?」


「はい」


 俺はコートの前を開けてから、ポケットの中身をすべて取り出す。それらを警官に提示した後、両腕を軽く広げてポケットを確認し易いようにする。


「……はい、ご協力ありがとうございました」


「ふぅ」


「君、もしかして職質に慣れてますか?」


 しまった、前科者認定されたかも知れない。


「はは……まさか」


 とりあえず愛想笑い。


「それじゃあ最初の質問。ここで何をしていたのかね?」


 生徒手帳を確認していた年配の警官が、やや厳しめに質問してきた。


「どこから話せばいいのか……。その、あそこの八百屋で買い物してから、ここを通りかかった時に、見知らぬ女の人に絡まれまして」


「女の人?」


「ええ。それでその人が俺……んん、僕を何処かへ連れて行こうとしたんですよ。必死に断ったんですけど、その人なかなか離してくれなくて……。えっと、そこで、なんか言い争いみたいになりまして、そしたらこう組み付かれて、ええっと、それで、動けなくなって困っていたところに、そう、そこでお巡りさん達が来まして……」


 何故だろう。我ながら、罪を逃れんと言い訳しているようにしか聞こえなかった。

 だが、絶対に俺に非は無い。……筈だ。……よね?

 しかし、残念ながら、警官たちの俺を見る目は大変残念な事に。……変質者認定でしょうか。


「……我々が来た時には、女の人なんて居なかったんですがね」


 若い警官から、予想外の指摘。


「え?」


「ん~、そもそもだね、君が一人で何やら騒いでいたから、声をかけたんだよ」


 年配の警官の話に、俺はある種の確信を得る。


「一人で……」


 一人。

 俺は一人。

 女の人は居ない。

 俺は一人だった


「…………」


「おい、君? 因幡君?」


「……あ、はい、すいません。えっと、交番まで行った方がいいですか?」


「は?」


「えっと、僕、適当な事を言ってしまって……まさか見てらしたとは、すいません」


「ふぅ……。では、何をしていたのだね?」


「彼女とケンカしてイライラしてたんです。それでぐちぐち悪態をついてたらヒートアップしてしまいまして、声を上げて彼女の悪口を……。お騒がせして、申し訳ありませんでした」


「…………」


「…………」


「あの、やっぱり交番に?」


「……どうしますか?」


「ん~、まあ、よく解らんこともあるが、彼自身にそう問題があるようには見えない。やるべき事はやったし、ま、いいんじゃないか?」


「ですね。ああ、因幡君、もういいですよ。でも、あまりハメを外し過ぎないようにね」


「はい、ご面倒をお掛けしました」


 深々と頭を下げ、警官たちが去るの待つ。

 程無くして、彼らは行った。


「…………」


 ゆっくりと顔を上げ、なんとなく周りを見渡しながら髪を撫で付ける。

 さて、問題は解消した、帰ろう。

 いや、その前に『先生』の所に……


「――ねえ、アンタ……」


「……ん?」


「おーーーーーいっ! シローーーーーっ!」


「おわっ」


 突如アーケード街に響く大声。こんな大声で呼ばれた奴は実に恥ずかしい事だろう。


「よおっ、シロ! 見てたぜぇ!」


 ……呼ばれたのは俺だった。

 見るとかなりガラの悪そうな、趣味の悪そうな、頭の悪そうな風体の三人組がこちらへと近付いて来る。悲しい話だが、内一人は俺の友人だ。


「んだよ、チカンでもしたんかぁ? ミケが泣くぜぇ?」


「チカンなんてしてない、だからミケも泣かない。そんな事よりトラ! 大声で呼びつけるな! 恥ずかしいだろ!」


「なあなあ、それってよく聞くけどよ、絶対呼ばれた奴より呼んだ奴の方が恥ずかしくね?」


「む、まあ、確かに……。なんだ、恥ずかしかったのか?」


「うんにゃ、別に」


「だよな」


 その程度で恥ずかしがる人間が、髪を逆立てたり、左目だけにカラコン入れたり、ドギツい朱色のボワ付きロングコートを着たり、装着可能な身体の部位全てにアクセを施したりしないだろう。うん、実に残念なビジュアル系もどきに仕上がっている。……というかお巡りさん、ここに俺なんかよりも職質すべき人間が居ますよー。


「おいイナバ!」


「ん?」


 誰?


「おめぇ、虎太郎さんより年下だろうが! なにタメ口きいてやがる!」


「はあ、すいません」


「んなこたぁいいから、シロ。なんでマッポなんぞに世話んなってやがった」


 ……マッポ。

 トラが初めてこの言葉を発した時、俺はググった。

 親の職業だった……。


「大した事じゃない。持病の発作。今回ちょっと派手だったもんだから、お巡りさんが心配してくれたんだよ」


「あん? なんだよ、最近は落ち着いてきたって言ってなかったか?」


「まあな。でも治った訳じゃないし、こんな事もあるさ」


「ふーん?」


「ま、事無きを得たんだから気にするな。お前の方はどうした? こんな時間に珍しくない?」


「ああ、物件(あさ)ってんだ」


「……何を漁ってるって?」


「物件だよ、物件。どっかにいい立地のオフィスねえかな~」


「……お前、何を企んでる」


「別に。起業しようかなってな」


「…………」


「…………」


「トラ」


「あん?」


「そこの少し先に保育所がある。この辺は風営法第二十八条が適用される」


「風俗店じゃねーし」


 推理は外れたようだ。

 推理ってほどのモノでもないか。

 見た目で判断した感が強いな。

 にしても、この男の口から起業なんて言葉が出てくるとは。まともに働いてるところすら見た事無いのに。


「うーん……」


「? んだよ」


 改めてトラの容貌を観察してみる。

 やっぱりしっくりくるぞ、風俗店店長。

 もちろん性風俗。


「まあ、何をしてもいいが、社会のルールだけは守ろうな」


 父さんの手を煩わせる様な事だけはしないで欲しい。


「テメェ、イナバ!」


「え?」


 だから誰?


「さっきから何エラそうにしてやがる! 虎太郎さんに失礼だろうが!」


「はあ、すいません」


「いいつってんだろっ。……まあ、シロが心配すんのもわかる」


「心配というか、不安というか……」


「でもな? オレもぼちぼち少年法が護ってくれない歳になった。ここらで一発勃起しとくべきかと思ってよ」


「一念発起だこの馬鹿。あと、少年法はお前を護る為にあるんじゃない」


「うっせーな。んで、コイツらと一緒に事務所立ち上げようと考えたワケよ」


「事務所?」


 トラの後ろに居る二人に目を向ける。

 さっきから難癖つけてくる太めの男。

 登場以来一言も発していない長身の男。

 明らかにトラと同じコミュニティの住人だ。

 平たく言えばチンピラ。


「トラ」


「なんだ?」


「向こうの方にな、暴力追放運動推進センターの支部があるんだ」


「暴力団事務所じゃねーし」


 またも推理は外れたようだ。……今のは完璧に見た目で判断したが。


「つか、なんでシロはオレにそんな印象なわけ?」


「どの口が言う」


 ひょっとして自覚無かったりするのだろうか。過去のアレやコレを忘れてしまったのだろうか。


「虎太郎さん、そろそろ行きましょうや」


「ん? ああ、だな。んじゃシロ、オレら行くわ」


 太めの男に促され、トラはここを後にしようとする。


「ちょっと、何しようとしてるのか教えていけよ」


「ああ? ん~、本決まりんなったら教えてやんよ。その日までワクワクして待ってな」


 いや、不安でモヤモヤする。でもまあ、言う気が無いなら仕方がない。俺はそのまま三人を見送る事にした。


「……ったく、何なんすか? アイツ。ガキのくせに腹立つっ」


「くくく、確かに態度は悪いがな、心の奥ではオレの事が大好きなんだぜ? ツンデレってやつよ……」


 こら、妙な流言を広めんな。

 諸事情により友人の少ない俺にとって、トラは貴重な存在ではあるものの、アイツ自身を好ましい人間とは思っていない。気に掛かっているのは認めるが、トラの生き方はどうも好きになれないのだ。

 (たと)えるなら“無頼な兄に、忸怩(じくじ)たる思いを抱く弟”といったところだろう。


「ふぅ……俺も帰るか」


 小さく呟きながら俺は家路を急……ごうかと思ったが忘れてた。先生のところに電話しようとしていたんだった。

 踏み出しかけた足を止め、トラによって中断させられた作業を再開すべく、ポケットからケータイを取り出す。


「んーと……」


 電話帳を開き、メモリーに優しいささやかな登録件数の中から、目的のナンバーを見つける。


 トゥルルルルル…… トゥルルルルル……


「――ねえ、ちょっとアンタ……」


「ん?」


 ……プツッ


「はい。()手柏(てがしわ)医院です」


「あ、もしもし、いつもお世話になってます、因幡です。IDは052の……」


「く……」


 あれ? 今、何か……?


「はい。確認致しました、因幡さん、本日はどうされましたか?」


「あ、えっとですね……その、来週に予約は入っているんですけど、出来れば今日診てもらえないかと思いまして」


「はい。えー、来週定期診療が入っていますね。それを待たずにという事はお急ぎなんですね」


「急にですいません。無理でしょうか」


「はい。いえ、大丈夫ですよ、よくある事ですから。では、担当の美作にお伝えしておきますね。こちらには何時ごろいらっしゃいますか?」


「えっと、今からだと三時……いや、三時半でお願いします」


「はい。承りました。それでは因幡さん、お待ちしておりますね」


 プツ…… ツー ツー


 首尾よく約束を取り付けられた事に安堵し、ケータイを閉じようとした時だった。


「――ねえ、そこのアンタ……」


 ピリリリリリ…… ピリリリリリ……


「うく……ま、またなの?」


 閉じかけのケータイが鳴り出した。

 着信だ。

 液晶を確認すると、発着信、及びメール履歴のそれこそ九割を占めるであろう人物からだった。……マズ、約束あったな、ゴタゴタの所為ですっかり抜けてしまっていた。謝らないと。


 ……ピッ


「もしもし」


「開けろー」


「う……す、すまん、まだ帰ってないんだ」


「うゆ、居ないん?」


「ああ。え~と、今ウチの前か?」


「ん、ドアの前」


 ガンッ! ガンッ!


「人んちのドア蹴るな。……でな、ミケ、その、申し訳ないんだけど、今日は中止って事で」


「やたー」


「こらこら、喜ぶな。その代わり、明日は朝からって言うつもりだったんだ」


「むー、おべんきょヤー」


「この時期に嫌とか言ってんじゃない。追い込みだろうが」


「ふっ……もう、教わる事は……何も……無……い……ガクリ」


「あるよー。英長文と関数」


「わたしは日本人だ。そして、人間はもはやコンピューターには勝てまい」


「受験にそんな理屈は通用しない」


「そもそもシロが悪い」


「何、急に」


「シロが徳英なんかに行くから、わたしの受験戦争は苛烈を極めてる」


「そう言われてもな……前にも言ったけど、父さんの通った学校に行きたかったんだよ」


「ファザコン」


「うぐ……べ、別にいいじゃん、子が親を慕って何が悪い」


「大いに結構。シロ×シロパパGJ」


「……あの、妄想は自由だけど、ミケの頭の中だけに留めて欲しい」


「つまんない」


「話が逸れたな……。まあなんだ、最終的に決断したのはミケな訳だし、ここは頑張ろうよ。な?」


「むー」


「それにほら、あれだ、俺も、その……ミケと、通えるようになれれば、う、嬉しい……訳、だし」


「…………」


「ええと……」


「……むふ」


「機嫌が直ったところで明日なんだが、九時に俺んち来れる? 今日の分もやらなきゃだし」


「なん……だと……」


「ん?」


「日曜の朝のパラダイスを……奪うと?」


「あ、そか、アニメ……。でも、毎回録画してるんだろ?」


「リアルタイムこそ至高」


「んんー、じゃどうすっかなぁ……十時だったら?」


「朝から夕じゃなくて、昼から夜でよろしく」


「う~ん、それでいっか」


「おやつはスウィートポテト、お夕飯はパスタでシクヨロ」


「……まあ、いいケド……」


「聞き忘れてたけど、今日中止の理由って何さね」


「ああ、言ってなかったな。ちょっと美作先生の所に行く理由が出来ちゃってさ」


「委細了解。……シロ、平気?」


「ありがと。なに、念の為って感じだから、心配はいらない」


「そ。じゃ、わたし帰んね」


「うん、無駄足ごめんな」


「いいさね。じゃあ明日」


「ああ」


 ピッ……パタン


 用件を終え、今度こそケータイを閉じる。

 さて、美作先生の所に向かうか。……あ、サツマイモ買ってかなきゃな。


「――ちょっと、そこの、アンタッッッ!」


「のわっ」


 スタッカートの効いた鋭い呼びかけ。

 自分に向けられたものかどうかなんて考える間もなく、反射的に声のした方へと顔を向けてしまった。


「いつまで待たせんのよっっっ!」


 再び放たれる鋭い声。

 怒声と言ってもいい。

 見れば何やら一人の少女が怒り心頭のご様子。

 何があったのだろう。


「こらっ! 聞いてるっ!?」


 ビッと音がしそうなほど、力強く差し出される人差し指。それは真っ直ぐにこちらへと向けられていた。


「……て、え? お、俺……ですか?」


「当り前でしょ!? 人が話しかけようとするたんびに躱してくれちゃってさ、余計な時間食っちゃったじゃない! 今度こそ私のターンよね? そうでしょ? きびきび答えなさいっ!」


 どうしよう、彼女が何の話をしているのか解らない。だが、この少女の怒りが自分に向けられているという事は解かった。


「あの、人違いじゃ? 俺、君の事知らないし……」


「私だってアンタの事なんか知らないわよっ!」


「はい?」


 今日は日が悪いのだろうか。仏滅ではなかったと思うが。

 いや、場所か?

 ……かもしれないな。

 考えてみれば、ここに来てからなんやかんやで一歩も動けていない。なんとなくトラバサミで身動きの取れない自分の姿が頭に浮かぶ。まあ、動けないんじゃなくって、俺が動かなかっただけなのだが。

 なんにせよついてない。


「はぁ……」


「何よそのため息!? 言っとくけどアンタが悪いんだからねっ!」


「あ、ゴメン、今のは君に対してじゃなくて……って、俺が悪い? 俺、君に何かした?」


「シカトしたでしょ!? こっちは話があるっていうのにさっ!」


「シ、シカト……? え、えーと」


「しらばっくれんなっ! なんなのよアンタはっ!?」


 なんなのと言われても、それはこちらのセリフだ。

 彼女は、感情的になっている所為か、話の要領がなかなかはっきりしなかった。そして、こちらの意見の受け入れ態勢は明らかに整っていない。

 これじゃあさっきの女の人と大差が無い。


(……ん? さっきの人と同じ?)


 ふと思い当り、すぐさま周囲に目を向ける。


「ちょっと、何キョロキョロしてるのよ!?」


 やはり衆目を集めていた。

 だがそれはいい、大事なのはそこではない。

 大事なのは、その目が向けられている先。

 果たして、それは“俺”か? 

 それとも、“俺達”か?


「……ふ、ふ~ん。こ、このタイミングで、シ、シ、シカトくれちゃうんだ……。へ、へ~、そお……」


 少し冷静になって目の前の少女を見据える。

 落ち着いて見ると、かなりの美少女だった。肩にかかる程度の長さの髪の毛はストレートで、茶色に染められてはいるが、けばけばしさは感じられず、むしろ清潔感を覚える。顔立ちは整っており、まつ毛の長さが映える大きな目が印象的だ。メイクをしているかどうかは、男の俺に判断は難しいが、髪にしろ、肌にしろ、手入れが行き届いているように見える。仮に、某アイドル集団に彼女が混じっていても、きっと違和感は無いだろう。


「アンタが……そんな態度に出るんなら……こっちだって」


 ボワの付いたチェックのダッフルコートも、彼女の雰囲気に合っている。肩に掛けているクリーム色のトートバッグもコーディネートされている感がある。ファッションが気に掛かるタイプのようだ。……女の子は皆そうか。


「……すぅ」


 コートの裾下から覗くスカートは……ん? 

 これ、ウチの制服じゃないか? 

 この子、徳英の生徒?


「きゃあああああっ! この人チカンですぅぅぅぅぅっ!」


 その瞬間、商店街に居る人達の顔という顔、目という目が、俺へと向けられた気がした……


「……って、ええええええええええ!?」


「いやあーーーーーっ! 誰かーーーーーっ!」


「ちょ、ちょ、ちょっと、待って、待って……」


 それはダメだろ。

 それはやっちゃダメだろ! 

 それだけはやっちゃダメだろっ!


「来ないでぇぇぇーーーっ!」


「話しかけてきたのそっちじゃん!?」


 ……ザワザワ……ザワザワ……


 うそ。

 嘘だろ。

 これが痴漢冤罪。

 話には聞いていたが、まさか自分に降りかかるだなんて。

 どうする?

 どうすればいい?

 このままじゃ、父さんに迷惑がかかってしまう。


「……ッ。もうやめてくれぇ! このとおり! お願いしますっ!」


 精神的に追いつめられた俺がとった行動は、土下座、だった。


「俺が悪かったから! 何でも言う事聞くから! だから頼むっ!」


 しかも、すべての非を認めるかのような言葉が口を突いて出る。


「……あっ……」


 何でこんな事になってしまったのだろう。

 恥ずかしくて、情けなくて、涙が出そうだった。

 だけど、どうすればいいのか、どうすればよかったのか。

 この何も妙案を生み出さない頭を、只々地面へと押し付ける以外に。


「うわ、やば……」


 彼女はとりあえず叫ぶのを止めてくれた。しかし、俺の社会的な死は目前かも知れない。


「ちょっと……やめてよ。ま、周りがみてる……」


「…………」


「た、立ってよ、ほら、立ってってば」


 彼女はオレの右脇に両手を入れ、上に引き上げようとするが、落ち込みきった心とシンクロした俺の身体はなかなか浮上しない。


「もう……! 立って……てばっ……!」


 彼女はグッと力を込めて強引に引っ張り上げてきた。そうされてようやく、俺はおもむろに立ち上がる。


「その、なんていうか……」


「――あー、君達?」


 彼女が何かを口にしようと瞬間、男性の声がそれに(かぶ)さる。何か、聞き覚えのある声だ。


「げ……さっきのお巡りさん」


「あー、確か因幡君? また君かい?」


「う」


 今度は偶然ではないだろう。

 通報があったに違いない。

 俺は絶望し、思考が停止してしまった。


「さて、痴漢との(しら)せがあって戻ってきたんだが……君なのかな?」


「…………」


 何も言葉が出ない、ただ俯くのみ。


「あ、あの……!」


 ガバッと、誰かが俺の右腕に組み付いてきた。


「誤解なんです!」


「おや? 君は被害者って訳じゃあ……?」


「違います! カノジョです!」


「彼女って……因幡君の?」


「はい!」


 これは、なんだろう。

 ひょっとして擁護してくれているのだろうか。

 元凶の彼女が?

 もう訳が解らない。


「実は……カレと、その、ケンカしてしまって。それがヒートアップして、つい彼を(おとし)めるような真似を……お騒がせしてごめんなさいっ」


「何か聞き覚えのある話だな……。そうなのかい? 因幡君」


「…………」


 まだ、俺の思考は回復していなかった。


「ちょっと!? あ、あはは……さ、さすがにチカン扱いはやり過ぎだったみたいです。こ、こんなに落ち込んだカレ、初めて。あ~、えっと、ゴ、ゴメンねぇ? ……そ、その、イナバ? 君」


「…………」


「ちょっと……! 何か言いなさいよ……!」


 彼女が耳元でそう囁くが、やはり何も言葉は出て来なかった。


「ふぅむ、どう思う?」


「そうですねぇ……。被害者が居ないのなら、我々の出る幕は無いんじゃないでしょうか」


「まあ、そうだな」


「あ、その、すいません! お手数おかけしました!」


 彼女は好機と見たのか、話を打ち切りに出た。


「うん、それじゃ、ケンカするのは仕方ないけど、周りの迷惑もちゃんと考えて下さいね」


「はい」


「因幡君もいつまでも落ち込んでないで、ちゃんと話し合うんだよ?」


「…………」


「こらっ、何か言いなよ!」


 彼女が耳元でそう叫ぶが、それでも何も言葉は出なかった。


「じゃあ、我々は行くよ」


「あ、はい、どうもすいませんでした」


 彼女は深々と頭を下げ、警官たちが去るのを待っているようだ。

 何か既視感を覚える。

 程無くして警官たちは行った。


「はぁ~……」


 隣から聴こえる大きなため息。それをすべきは俺の方ではないだろうか。……まあいい、訳も解らずに陥った危機は、訳も解らないままに脱した。とにかくこの場を離れよう、これ以上はキツイ。


「って、どこ行く気!? 私の話がこれっぽっちも終わってないんだけどっ!」


「…………」


 ……キツイんだってば。


「こっち来て、ここじゃ注目浴びちゃう」


 そう言いながら彼女は俺の腕を引っ張る。

 抵抗する気は無かった。そうして彼女に引かれるまま向かった先は、奇しくも、あの女の人に引き込まれそうになった路地裏。


「いつまでもムスッとしてないでよ。……分かった、謝るよ。ゴメンナサイ、さすがにやり過ぎだった」


「……話があるなら早くして欲しい」


 いじけたような態度を取ってしまった。しかし、この後に用事があるのも事実。早く終わらせたい。


「もう、感じ悪いなぁ」


 誰の所為だ。


「私は、水沢(みずさわ)ひかる、徳英の一年よ。アンタも徳英でしょ? え~と、イナバ君?」


「…………」


 俺は無言のまま、生徒手帳を彼女の眼前へと突き出した。


「もう、ホント感じ悪いなぁ」


 自覚はある。ただ、ちっぽけなプライドが素直な反応を許してくれない。


「なになに……あら、同じ一年じゃない。先輩かと思ってた」


 この子は、先輩に対してもああいった態度で接するのだろうか。


「因幡志朗……か。何か聞き覚えのある名前ね」


 諸々の事情により、徳英では案外知られていたりする。……悪い方向でだが。


「んじゃ、因幡君。用件なんだけど……えー、んー、なんていうかさ……」


 急に歯切れが悪くなった。何か躊躇しているようだ。ああまでしたのだから、よっぽど重要な事なのだろう。


「こう言っちゃなんだけどさ……アンタ、さっきの場所で変な事してたじゃん? その、一人芝居……みたいな?」


「…………」


 さっきのあれか。

 彼女には……と言うか、俺以外にはきっとそう見えたのだろう。

 一人芝居、か。

 そう言えば、この水沢ひかるという子の事も、さっきの女性と同じものじゃないかと疑ったんだったな。結局は違っていたが。


「その時にさ……こう、口にしなかった?」


「ん?」


「『カルチョ』」


「えっ……」


 それは、あの女性が口にした言葉。

 そして、俺がオウム返しで返した言葉。

 だから、水沢が聴いたのは後者……の筈。


「その後、こうも言ってなかった?」


「…………」


「『ミスミソウ』」


 それはやはり、あの女性が口にした言葉。

 そしてやはり、俺がオウム返しで返した言葉。

 だからやはり、水沢が聴いたのは後者……の筈。


「……ねえ、因幡君。正直、あの時のアンタって、かなりキモかった」


「…………」


 この水沢という少女は、どこまで人を落ち込ませれば気が済むのだろう。


「本当なら近付きたくなかった。けど、この二つの言葉を……この二つを同時に聞いてしまったら、確認しない訳にはいかないのよ」


 今、気付いた。

 それは水沢の表情。

 ひどく思いつめたような。

 何かを恐れているような。

 とにかく、負の感情が滲み出ているようだった。


「アンタ、それ、どういうつもりで言ったの?」


「どういうつもりって……」


「お願い、答えて。これは私にとって、とても重要な事なのよ」


 彼女が俺を睨みつける。最初のような怒りを孕ませた瞳ではなく、静かな炎を灯したような瞳で。――答えなければならない。そう感じた。

 だが、俺はその答えを持ち合わせてはいない。何故ならあの女性は――。


「すまない、よく解らないよ」


 だからそう答えた。


「……ッ、ふざけないでっ!」


 もちろんふざけてなんていない。

 これを説明するには、まず俺の事情を話さねばならないだろう。しかし、初対面の人間に話すような事ではないのだ。それに、仮に話したところで、彼女の欲するものを提供出来るとも思えない。何故なら、その二つの言葉を口にしたあの女性は――。


「ごめん、力になれそうもないよ。俺、行くな?」


「待ちなさいよっ! それ、誰かに聞いたんでしょっ!? そうなんでしょっ!?」


「……何?」


「『カルチョ』っていうのは、幼い頃の私のあだ名。私をそう呼んだのは、一人しか居ない」


「え、ちょっ……」


「『ミスミソウ』は、私の……ある人との、思い出の花。その人は私の事を『カルチョ』って呼んでた」


「ちょっと待ってくれよ……」


 これは……おかしい。

 今までに無かった事だ。

 「カルチョ」も「ミスミソウ」も、あの女性が口にした言葉。

 でも、だけど、あの女性は――。


「私のママよっ! アンタ、私のママを知ってるんじゃないのっ!? 八年前に居なくなった私のママをっ!」


「なん……だって?」


「ねえっ! そうなんでしょっ!? 知っているなら教えて! ママはどこに居るのっ!? この八年間ずっと探してるのよっ!」


 水沢は完全に冷静さを失っている。俺が彼女の母親を知っていると思い込んでいるようだ。母親への思慕が溢れ出て、自分をコントロール出来なくなっているのかも知れない。


「俺は知らない、君のお母さんの事なんて……」


「嘘言わないでっ! 私はこの話を誰にもしてないし、パパですら三角草の事なんて知らないっ! だから初対面のアンタがそれを知ってる筈ないっ! もし知ってるというなら、それは……ママから聞いたという事に他ならないっ!」


「…………」


 俺は今、かつて無い程に頭が混乱していた。

 時間が欲しい。

 考える時間が欲しい。


「……ッ、ゴメン、水沢っ!」


 俺は逃げ出してしまった。

 後ろからは水沢の声が追いかけてきたが、それを意図的に聞き取らないようにしながら、駅へ向かって全力で走った。

 水沢には同情している。申し訳ないとも思っている。でも、まず俺の頭を整理しなくてはならない。そうしないとおかしくなってしまいそうだ。

 だってそうだろ?

 水沢の話が本当だとするならば、あの女性が水沢の母親である可能性が出てくる。

 でも違う。

 そんな可能性は無い。

 何故ならあの女性は、俺の……この俺の――『幻覚』、なのだから。 

次回も……と言うか、ずっと会話メインです。

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