吾輩は猫である。名前はギガンティックウルトラコスモユニバースアルティメットブレイザーレクイエムアポカリプスカタストロフィジエンドオブザワールドクリムゾンヘルガイアスカーレットヴァリュアブルゴッドマスタ
吾輩は猫である。名前はまだない。というか記憶もない。どういうことかすべてを忘れてしまったようだ。
この世界において名前は重要な物であったはずだ。覚えているのではなく、"知っている"。
戦いに敗れたものは、相手に名前を奪われる。つまり、戦うべきなのだ。
吾輩はその辺を歩いた。高いビルに挟まれてジメっとした暗い路地。
「よう、そこの名無しさんよ。俺の名前はギガンティックウルトラネコだ。ひと勝負しようぜ」
豪華そうな名前のネコだ。名前が長いということは強いのだろう。一応礼儀としてネコパンチを放つ。
「フニャァー!!」
情けない声を上げて目の前のネコは倒れた。
もうただのネコなのだ。
吾輩の名前はギガンティックウルトラ。
名前を得たおかげか、少し記憶が戻ってきた。もしかしたら、吾輩は昔この名前だったのかもしれない。
「ーー、いい子だね」
記憶の中にある優しい声。
呼ばれているはずの名前はまだ思い出せない。
なぜだろう、非常に懐かしい感じがする。名前をとりあえず集めよう。そうすれば吾輩の記憶はもっと帰ってくるのかもしれない。
しばらく路地裏を歩くと、草原に出た。ただただだだっ広く、説明の文章に、た、がいっぱい並んで少しにゃんとも言えない気分になる。
「私の名前はスモアレクイエムだワン」
恐らく犬だ。でもいぬという名前は入っていない。変な名前ばっかり。
スモアレクイエムは、突然マシュマロを焼き始めた。そして、クラッカーに焼いたマシュマロを挟み、チョコをつけて、前足で地面を掘ってそこに埋めた。
よく分からなかったので殴ってみたら、目の前の名無しの犬は倒れた。
吾輩の名前は、ギガンティックウルトラスモアレクイエム。
「ーー、これはスモア、って言うんだよ。美味しいんだ」
また新しい記憶。しゃべっている生物の姿は見えないが、先程見たマシュマロのやつはスモアというらしい。
さらに歩みを進める。
コユニバースルメットドマスタというのに出会った。
トドの王らしい。宇宙スルメを開発したらしい。どうやら宇宙人をからっからになるまで干して作るらしい。
なんか怖いので一緒に旅をすることにする。
「ギガンティックウルトラスモアレクイエムよ、私の名前は、どこからともなく付与されたものなのだ。名前は基本、誰かと戦うことでしか得られないはずだというのに。不思議なこともあったものだ」
そんなことを話していた。名前を失ったことと関係があるのだろう、なぜかそう確信を持てる。コユニバースルメットドマスタにはなぜか親近感を覚えている。
次に、ティーカリトロオブザクリムブルゴッに出会った、というより見つけた。お茶と、カリカリふわふわのしゅーくりむみたいなものが置いてあった。
食べたらそのまま名前になった。
吾輩の名前はギガンティックウルトラスモアレクイエムティーカリトロオブザクリムブルゴッ。
力があふれてくる。
「ーー、もっとかっこいい名前にしないと、ダークフレイムなバーニングソウルでヘルなアタックは使えないよ」
無邪気な声。どこか懐かしい声がする。
「俺は、ブレイザスカスカットヴァリュア。お前たちみたいな雑魚には暴言しか言わないぜ。ばーか!!あーほ!!」
無礼だったので、コユニバースルメットドマスタが怒り、干物にしてしまった。
吾輩の名前は、ギガンティックウルトラスモアレクイエムティーカリトロオブザクリムブルゴッ。
そして、隣にいるのは、コユニバースルメットドマスタブレイザスカスカットヴァリュア。
すこし、隣のトドはしゃべり口調が荒くなった。
王というよりも、権力のある蛮族のようだ。
結構怖い。しかし気づいた。隣にいるトドの彼より、吾輩は7文字も名前が長い。
横から殴ったら、彼は倒れてしまった。
吾輩の名前は、ギガンティックウルトラスモアレクイエムティーカリトロオブザクリムブルゴッコユニバースルメットドマスタブレイザスカスカットヴァリュアだぜ。
ガンガン近づいてきた奴をボコして名前を手に入れるぜ。
不意に記憶がよみがえる。
「ーー、君は世界一強いネコになって欲しい。君のために誠心誠意強そうな名前集めるから」
「君が死んでしまわないように、強い名前をたくさん、あげるから」
優しい声。
さらにしばらく進んだ。いつの間にか草原エリアを抜けて住宅街に来ていた。
遠目に吾輩を見て、離れていくのが分かった。きっと吾輩が強すぎるのだろう。
「あ!!!」
そんな吾輩の前に、聞き覚えのある声。
「帰ってきたんだね!! よかった!!」
無邪気な声。
「僕の名前は、アポプタスフィジエンドワールドゾンヘルガイアーレ」
「吾輩の名前は、ギガンティックウルトラスモアレクイエムティーカリトロオブザクリムブルゴッコユニバースルメットドマスタブレイザスカスカットヴァリュア」
「あれ、なんか名前ぐちゃぐちゃだね。君の本当の名前は、ギガンティックウルトラコスモユニバースアルティメットブレイザーレクイエムアポカリプスカタストロフィジエンドオブザワールドクリムゾンヘルガイアスカーレットヴァリュアブルゴッドマスタ、だよ」
すごく長く強そうな名前だ。
「後は、僕の名前だけ、かな、足りないの」
そう言って、目の前の少年は名前をくれた。
吾輩は猫である。名前はギガンティックウルトラコスモユニバースアルティメットブレイザーレクイエムアポカリプスカタストロフィジエンドオブザワールドクリムゾンヘルガイアスカーレットヴァリュアブルゴッドマスタ。
どうしてだろう。すごく落ち着く。それよりも目の前の少年のことを完全に思い出す。
吾輩は、少年のペットのネコだった。でも、病に侵され、死にそうだったのだ。
「大丈夫、僕が、絶対助けるから」
そう言って、この名前をくれたんだ。
でも、小さな吾輩の体には抱えきれず、名前はちりぢりになってしまったのだ。
不意に目の前の少年、いや、吾輩のご主人が倒れる。
名前を一度に渡しすぎたからだろう。
「ご主人、吾輩はもう元気ですにゃ」
そう言って、ご主人に触れたら、ご主人が、
「それならよかった、トロ」
トロ。それが本当の名前。思い出した。
吾輩はトロ。
残った名前を全部ご主人に渡す。
「ご主人、もう吾輩は元気だから、集めてきてくれた大事な名前はご主人に持っていて欲しいにゃ」
そう言って、吾輩は、ギガンティックウルトラコスモユニバースアルティメットブレイザーレクイエムアポカリプスカタス"トロ"フィジエンドオブザワールドクリムゾンヘルガイアスカーレットヴァリュアブルゴッドマスタ、のトロ以外をご主人に返した。
「うん、ありがとう僕も元気。それじゃあトロ、家に帰ろうか」
「はいにゃ!」
吾輩は猫である。名前は、トロ。




