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19:キャシーの「昼寝」

事情があって今回2作上げてます。

1作目。

 

 国王の婚約者として王妃教育を受けながらマリナーレ王国の王城で過ごすことはや半月。

 すっかり王城での暮らしにも慣れ、将来王妃としてする仕事もこなし始めていた。

 唯一未だ王妃教育で授業をしているのがマリナーレ王国史。

 アガリスタ王国史はもともと一つの国だった場所で人民に愛されたという初代国王に始まり、各代の国王が王国にたいして何をしたという王家の紹介が中心で、あまり好きにはなれなかったが、マリナーレ王国はいくつかの小国がまとまってできた二つの国の王子と王女が、結婚を機に二人の尽力で統合してできたという成り立ちがあり、しかも本来隣国への輿入れだった王女が自身の父である国王と義父の隣国国王を辛抱強く説得したという成り立ちでできた。

 つまりマリナーレの初代王妃になるが、彼女の説得の決め手になったのが、反対側隣国のアガリスタ王国の男尊女卑がひどく、いつか国の誰かが嫁がなければならなくなった時に、甘くみられないように国力を上げる必要があるとして友好国だった隣国に嫁いだ時に架け橋として統合を果たしたという歴史がある。

 つまり、マリナーレはアガリスタに対抗するためにできた大国ということになる。

「…」

 私はこの歴史を知り、唖然とした。

 マリナーレ出身の母は、代々アガリスタの中では指折りの愛妻家として知られ、男尊女卑をあまりしないノウゼン伯爵家に嫁いだおかげで、そこまで苦労はなかったようだが、マリナーレからアガリスタへの嫁入りはあまりない。

 マリナーレ前王妃のせいでとはいえ、高位貴族家の子女が少ないこともあってだいぶ改善はされてきている。

 ただその原因であり、同じく子女が少ないマリナーレで嫁の成り手がそこまで問題にならないのは、男尊女卑で苦労したアガリスタ王国の女性がマリナーレの貴族や裕福な商家に嫁いでいるという原因もある。

 何しろ、アガリスタとマリナーレは、山一つ越えただけで気候もあまり変わらず、言葉も比較的近くて嫁ぎやすい、その上女性を大切にする国民性ということで、アガリスタの貴族家だけでなく、平民でも貧富にあまりかかわらずマリナーレに嫁ぐことが増えている。

 その上、公爵家を継げない次男が、男爵令嬢との婚約破棄をしたという件も拍車をかけ、アガリスタ王国は嫁不足が深刻なのだが、あくまで王家至上主義の王家は対策すらしていない。

 私としては王妃になれれば、この現状の改善に乗り出したいと考えており、王太子殿下と時間を過ごすより勉強を進めたいと考えていたため、王太子殿下と過ごす時間が少ないのは幸甚ぐらいに思っていた。

 それを向こうの勝手で婚約解消でき、さらにマリナーレでは国王陛下の婚約者、さらにその後ろ盾のラミル公爵も気に入っていただいたようで、しかも女性の権利については先進国のマリナーレならアガリスタ以上に改革できそうと思う。

 しかも、私が急にマリナーレ国王陛下の婚約者になったのに、表立ってなにか言われることは少ない。

 …まぁ一度だけとある公爵家の令嬢が「あんたなんか、陛下に相応しくないわ!」と言ってきたけど。

 ご両親の慌てようはなかったわね…その後、お母様やら何故か途中から参加したミリエッタ公爵令嬢様も入ったお茶会でお相手したらいつのまにか懐かれたけど。

 帰りには「キャシーお姉様、またきますわ!」とまで言われたのは驚いた…まぁ、10歳ならまだこんなものよね。

 しかも彼女は、とある侯爵家の嫡男とすでに仲良しで、もう少し様子を見て問題なければ婚約するらしい。

 まぁ…陛下のように見目麗しい大人の男性はあの令嬢からすれば憧れましょうねぇ…。

 そう言えば、レイも私を娶って子爵夫人になってなんて言ってたっけ。

 私も10歳くらいのころは、ダンディな先代サンダース侯爵に憧れたりしたっけ。

 今のサンダース侯爵様も素敵…そりゃあの王妃様の弟君だし、美形には違いないんだけど、先代侯爵様はさらにダンディで、引退した今もロマンスグレーの紳士だもの。

 …比べちゃ悪いけど、そこと比べちゃうと、アガリスタ国王陛下も王太子殿下も美形だけど、それだけなのよね。

 マリナーレ国王陛下は、先代サンダース侯爵様ほどではないにしろダンディだし…うーむ、考えれば考えるほど婚約解消してよかったんじゃない私。

 ついでにラミル公爵様も先代サンダース侯爵様と同じロマンスグレーの紳士だし、マリナーレ王国は天国だわね。

 

 閑話休題。

 

 国外から急に現れた国王陛下の婚約者(つまり私)にあまり反対が起きてないのは、まず国内貴族がアガリスタから嫁を取ることが普通で、後ろ盾がしっかりしており、さらにそもそも高位貴族の女性が少ないということが追い風。

 高位貴族もすでに嫁いだ我が娘を王妃にとは言えず、むしろ嫡子夫妻が結婚したてや子・孫が幼い貴族家が、早く国王陛下にお子を(そして我が子・孫を王配・王妃に)と考える人が多いためである。

 貴族家の後継へのバトンタッチも揉めにくい国民性のマリナーレは、改革しなくても大丈夫かもしれない。

 

 そんなことを考えて、ふと先程まで何をしていたか思い出すと、マリナーレ王国の歴史を学んだ後の復習がてら図書室にいたのだったわ。

 なんかそんなふうにしてたら、眠気が…。

 まだ日は高いし、少し寝ちゃおう…。

 

 まさかその昼寝が、あんなことを引き起こすなんて…。

 


「あんたなんか、おうひにふさわしくないわっ!!」とキャシーに食って掛かった公爵令嬢(10)。

この後、アガリスタ出身のお姉さま方のアイドルになります。

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