表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
零の鼓動  作者: おばれ
5/6

視線

午後一発目の体育は、グラウンドでのサッカーだった。 赤城零は、クラスの整列の列に、静かに立っていた。

「よーし、前後半に分かれて、簡単なゲーム形式でいくぞー」

教師の声が響く中、ざわざわと生徒たちが動き出す。

「おい赤城、お前フォワードやれよ」

「あはは、どうせすぐバテんだろ?」

けたけた笑いながら、赤城を冷やかしたのは、先ほどの不良2人組、半グレの大森と滝沢、どの部活にも所属していない、いわゆる“自称武闘派”だ。

「おう、今日もこけんなよ、三軍の赤城くーん!」

2人の嘲りに、鶴見銀次がちらりと睨む。

「やめろよ、赤城にそんな言い方すんなよ」

「んだとコラ、なんか文句あんのか、鶴見ぃ?」

ぐっと詰め寄られた鶴見は、一歩下がりながらも引かずに言い返す。

「サッカー部でもねえお前らが、ごたごた言うなよ」

その言葉に、大森が苛立ち気味に鶴見を押し返す。

「ハァ? だったら、どっちが上か見せてやるよ、なあ?」

滝島がニヤリと笑う。

「赤城、ボール持ったら俺らが潰してやっからよ。楽しみにしとけ?」

赤城レッドは、そのやり取りを黙って見ていた。 すでに“敵”の気配を感じ取っていたが、表情は一切崩さなかった。

(……注目されるのは避けたい。だが……)

試合開始。 最初の数分は、わざと走らず、ボールにも絡まなかった。だが、周囲の技術が拙く、プレーが乱れる中、自然と赤城にパスが集まるようになっていった。

そして――

「赤城、センター空いた!」

誰かの声に反応し、赤城が一歩前に出たその瞬間。 滝沢が、足を引っ掛けにくる。わざとらしいファウル。 が、その動きは遅かった。 赤城は身体をわずかに傾けるだけで、軽やかにかわし、瞬時にボールを前に運ぶ。 そのまま、ゴール前に駆け込み――ノーモーションで振り抜いた。

ズドン!! 乾いた音と共に、ゴールネットが揺れた。

「……え?」

滝沢が呆然と口を開く。

「ま、待て、今のほんとに……?」

大森が目を見開いたまま、ボールの飛んでいった方向を指差す。

鶴見銀次も、ポカンと口を開けていた。

「れ、零……? お前……なんだよそのプレー……」

赤城は無言で立っていた。ただ静かに、無駄なく、完璧にプレーしただけだ。

だが、その姿はまるで、“獣”のような迫力に満ちていた。

「いや、ちょ、ちょっと待て! あいつマジで赤城か……?」

大森がうろたえる。いつもは見下していたはず”が、別人のような存在感を放っている。

「チッ……フザけやがって……」

大森が苛立ちを隠せず、ボールを奪いに突っ込もうとする―― が、その前に赤城がふと視線を向けた。 それは、ただの視線ではなかった。 世界を股にかけたトップストライカーの、試合中に発揮される覇気だった。 ギラリと光る目。呼吸を忘れるような圧力。 その瞬間、2人は動けなくなった。

「ッ……!」

滝沢の膝がわずかに震える。

(な、なんなんだこいつ……ただ者じゃねえ……)

「……ッ」

大森も一歩、後ずさった。 鶴見が、信じられないという目で赤城を見る。

(……赤城、いや、誰なんだ…)


一方、グラウンドの外。校舎の上。

屋上。金網にもたれかかって寝ていた男が、ゆっくりと目を開けた。

「……騒がしいな」

青砥煉だった。 ぼんやりと下を見下ろす。サッカーの授業。だが、目に留まったのは一人の選手。 その動き、佇まい、そして放つ異様な“気”。

(……あんな奴、うちのサッカー部にいたか?)

目を細め、じっとその少年を見つめる。 明らかに他とは違う何かを感じ取っていた。

(あいつの動き、明らかに“何か”を知ってる。まるで……プロのような、あいつ何者だ?)

昼下がりのグラウンドに、ひとり静かに立つ赤城零。 その姿に、確かに何人もの視線が吸い寄せられていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ