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ねぇ、これ誰かわかる?  作者: 三嶋トウカ
3月

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3月日記(3/11-3/20)

【3/11】


 会社帰り、たまたま大家さんと遭遇した。

優しい言葉に涙が出そうだ。

音と場に甘えて、もう大家さんの別のマンションへの入居を決めた。

父に書類を書いてもらう。


 私はこの家に残っていたが、遂に出て行く日が来るのだ。

未練はない。

のだが、砂苗ちゃんのことだけは少し気がかりだ。

でもきっと、なにかあったら本人が教えてくれるだろうし、気軽に会える距離だ。

今は自分のことだけ考えよう。


 初めて大家さんの家に入った。

自分が住んでいるマンションの大家さんの家に招待してもらうことなんて、なかなかないだろう。

なんだか懐かしい気持ちになったし、おかれていた写真立てにおさめられていた家族写真が、眩しく見えてしまった。

……本当だったら私も、ああやって家族写真をリビングに飾っていたのかもしれなかったのに。


 いや、それはまだ別の可能性があるから気にしないことにする。


-----


【3/12】


 気分が乗らない。

そんな日しかない。

もうひと踏ん張りなのに。


 そのひと踏ん張りが大事なのに。

仕事に没頭していると楽だから、忙しいくらいがちょうどいい。

残業は好きじゃなかったが、今は残業にありがたみすら感じている。


 私は家に帰っても母か父がいるが、あの人しかいなかったら家になんか帰りたくない。

あの人がいないから今家に帰っている。


 なんだかちょっとだけ、世の家に帰りたくなくて、外で時間を潰す人たちの気持ちがわかったような気がした。


-----


【3/13】


 無駄だということはわかっているのに、GPSの移動確認をついしてしまう。

一瞬でもルーティーンになっていたから、その感覚が抜けないのだ。

それに、なにかの拍子にうっかり電源が入らないかななんて思ってしまう。

入ったからって、あの人がどこにいるのかわかっても、もうすることはなにもないのに。


 ……明日、探偵事務所へ行く。

調査結果が出た。

その確認のために行くのだ。

今からメチャクチャ緊張している。

だって、三人目の浮気相手が誰だったのか、ようやくわかるのだから。


 あの人が浮気をし始めてから年単位で時間が経過している。

が、慰謝料請求に問題はない。

離婚しても慰謝料は請求できるし、請求できる期間さえ間違えなければ大丈夫。


 一旦のゴールは浮気相手が誰なのか、明確にわかること。

それから、それを問い詰めてあの人の有責で別れること。

もちろん、あの人が悪いのだから、見塚な人にはあの人がしたことを知ってほしい気持ちもある。

けれど、過度にやると名誉棄損と言われかねないから気を付けたい。

もう萌乃さんは済んでいるから、残りのふたりに慰謝料の請求をすること。

別れたあとは、あの人が五百蔵さんの奥さんと付き合おうが、三人目の女性と結婚しようが、それはどっちでもいい。

ただ、最終的にふたりとはどうなったのか、それだけは知りたい。

知らないほうが良いこともあるのはわかっているし、私にはもう関係のないことになる。


 でも、それがすべて終わって、そこからさらに時間が経ったときにようやく「終わった」と思えるんじゃないかなと思っている。


 書いてみたら長い旅路に見えてきた。


-----


【3/14】


 出た。

ついに出た。


 浮気の調査結果。

長かった。

たかだか浮気を知ってから三か月も経っていないのに、数年時間が過ぎていったような気持になる。

やっと、やっとだ。


 家に帰ってからもらった結果をじっくりと呼んだ。

文字は一言一句取りこぼさないように、写真は隅々まで見逃しが無いように。


 読み終えたあとはなにも考えられなかった。

今こうして日記を書くことで、どこかへ行ってしまった私の気持ちを取り戻している。


 五百蔵さんも探偵事務所にやってきた。

この期間は、五百蔵さんの奥さんとあの人が会っていたのは土日だけだった。

相変わらずというかなんというか。

私のカードだけでなく、五百蔵さんのカードも増えたのだから、役に立てたら嬉しい。


 探偵に依頼した効果は絶大だった。

こうしてモノになって、現物として手元に証拠がある。

新しい視点の証拠も手に入ったし、全部使うのかはわからないけど、全部出したときにまだ言い逃れをしたり逆切れをしようとするならば、もうあの人は人外なんだと思うようにしよう。

話が通じないということなのだから。

感性もまったく違う、これはもっと早く気が付きたかった。


 五百蔵さんは早めに決着をつけるらしい。

それが良いと思う。

まだ、自分が頑張れるうちに。


 サトコとご飯を食べる約束をした。

我が家で。

総菜を買ってきてくれるらしいので、家ではパンやサンドウィッチ、飲み物を用意する予定だ。

別途お菓子も用意するつもりだが、この日はきっと忙しくも愉快な一日になるだろう。


 一件、メッセージを送った。

返事は来るだろうか。


-----


【3/15】


 ただ疲れを癒すためだけの土曜日。

なにもしない日は必要だ。

ただぼーっとして、適当にご飯を食べて、適当にやりたいことをやって、適当に眠る。

贅沢な話だ。

誰かとの約束にも、自分のタスクにも縛られることがない。


 明日は五百蔵さんが頑張る日だ。

メチャクチャ応援している。

私が頑張るのは来週。

今からどっちもドキドキしている。


-----


【3/16】


 なぜか私が五百蔵さん夫婦の離婚話をリアルタイムで聞くことになった。

不安だから聞いていてほしいと言われたが、私のほうが奥さんにバレないか心配だった。


 五百蔵さんの離婚話は、無事に終わった。

なんとまぁ手際よく? サクサクとことが進み、時間も全然かからないまま奥さんは離婚届にサインをしていた。

そして良くわからない紙? にもサインしていたようだ。 

これは、五百蔵さんの話を聞いて納得した。

約束を反故にされたら困るし、言い逃れも困る。

相手の都合の良いように勧めて、被害被っても困るから、これが最善策なんだろう。


 私も作ろうかと思ったが、あの人は余裕で無視してくるし、変なものを差し出せば罵倒されるかもしれない。

だからやらない。


 でも、無事に離婚で来たみたいで良かった。

届の受理は週が明けてからだが、出したことに意義がある。

羨ましい。

私も頑張ろう。


-----


【3/17】


 最近よくお腹が空く。

頭は使っているかもしれない。

そのせい??

体重が増えないから、遠慮なく食べてしまおうか。

ストレスなのかな。


 送っていたメッセージの返事が来た。

このタイミングで本当に助かる。

少しやりとりをして、まだこれはちょっとだけ続く私の仕事だ。


-----


【3/18】


 すべてが終わったら、砂苗ちゃんとお祝いパーティーでもしたい。

なんとなく、そう思った。

美味しい居酒屋で美味しいご飯を食べるのだ。

居酒屋の料理は好き。

いろんなものがたくさん食べられるし、飲み物も豊富だから進む。


 はぁ、こんな時間だけどお腹が空いてきてしまった。


-----


【3/19】


 五百蔵さんから連絡がきた。

ナナさんは大人しくしているらしい。

それは良かった、きっと五百蔵さんも平和がイイに決まっている。

ちょっとだけホッとした。

まだ全部終わっていないけど。


-----


【3/20】


 砂苗ちゃんから、あの人の写真が送られてきた。

バッチリ浮気相手たちと写っている写真。

気持ちに余裕があったのか、送ってもらったものはどれも鮮明だった。

サトコが送ってきた写真よりも、かなりハッキリわかるようになっている。


 なにより、ナナさんと写っている写真が、自宅マンション前だったというのが怖い。

自分の良く知っている場所は、少しでも写っていればわかるから不思議だ。

ウチのマンションであることは間違いない、砂苗ちゃんにも確認した。

あの人を探してたまたま奈七さんがやってきたのかと思ったが、あの人はなんのためにマンションへやってきたのだろう。

念のため警戒したが、帰ってからの家の様子は、とくに変わったところはなかった。


 ……怖い。


 昨日、五百蔵さんから「ナナさんは大人しくしているみたい」と聞いたばかりなのに。

動き出したということなのだろうか。

……なんのために?


 私は日曜日、終止符を打つのだ。

義実家にも私の両親にも連絡をしたし、やれるだけのことはやった。

どうにか義両親には、あの人を引きずってでも連れてきてほしいと思う。


 メッセージが続いている。

私はできる最大限のことをした。

相手からは感謝と謝罪を受けた。

……違う。それは私のしなければならないことだ。

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