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第3部_1章_214話_ダンジョンとは 1

「右側からは四つ足の魔獣の気配が多数」

「私が引きつけよう。できればこの狭い通路で殲滅させたい」

「俺が前に出る」

「弓で撃って欲しい魔物はなるべき右側の壁に寄せて。左側は暗いから」


言葉少ない打ち合わせをして、6人組のパーティはすぐに行動。

ヌエのようなサルっぽい魔物を次々と倒していく。


本物のヌエには強い毒があるが、彼らはそれに警戒するようすもない。

たしかに俺がデザインしたモンスターだから毒がないのは事実なんだけど、どこで判断したんだろう?


「おお〜、さすが冒険者はやくわりぶんたんがしっかりしてるね。判断もジュンたちとはちがうね」

「ジュンも冒険者ですがあまりパーティは組んでなかったそうなので」


ギンコの背に乗り、クロルとコガネとスタンリーを従えた俺は冒険者たちから「すでに皇帝の風格」と言われた。

どのへんが? ギンコの鞍の背もたれがちょっと高いから?


その場では問い詰めなかったけど、スタンリーいわく多分ゲーレを従えてるからじゃないですかという話。そうなのかなあ。


「ルリス、焼くから下がれ!」

「はいよ」


盾槍術士(シールドランサー)の後ろで詠唱していた魔術士が、広域の火炎放射っぽい魔法を放つ。

その寸前で前衛で蹴散らしていた双剣術士のルリスがサッと下がる。


とっても戦略的〜!


難易度調整したとはいえ、踏破率はダンジョン進入から1時間もしないうちに12%。

これはβ(ベータ)版ダンジョン5階層分を100とした踏破率。

なので1階層の半分以上が踏破されたってことだ。はやい!


ちょっと難易度下げすぎたかな〜?


「5階層まで踏破してもらうことがひとまずテストプレイ……でしたか、それの目的なので今はこのくらいの難易度がよろしいのでは?」


スタンリーが俺の不安を理解して意見してくる。


「まあそっか……1階層から手こずってたら誰も寄り付かないダンジョンになっちゃうもんね」


「あの、殿下」


敵を殲滅させたテストプレイヤーの冒険者が気まずそうに声をかけてきた。


「あはい。なあに? なにかいけんがあればなんでも!」


「俺たちだから軽く殲滅してますけど……はっきりいって新人冒険者には無理です」


「あ、うん、それはわかってるよ。今回のダンジョンはキミたちS級、A級の冒険者にあわせてあるから! それより聞きたいんだけど、今のモンスターに毒がないことはどうやってはんだんしたの?」


リーダーのルリスはブラーを指さした。


「標的の毒性の有無を判断する魔道具もあるが……コイツの魔物分析能力はほんと稀有なんだ。コイツがいるだけで新天地での未知の魔獣でも対応できる」

「毒性判断魔道具もいいヤツは高いからね〜」

「デカいし重いし邪魔だもんね」


ブラーは自らの職業を疾風走(はやてばしり)と名乗る、前髪の長い厨二感のある男性だが社交性はあるっぽい。俺に向けてすごいドヤ顔をしている。

まあそこはドヤっていいと思う。


「そういえばダンジョン攻略情報を売るって話はどうなってるっけ」

「べーたばん?なので情報はまとまってませんが、そういう話もありましたね」


俺とスタンリーの会話に冒険者たちも興味津々。


「なるほど、魔獣の情報を事前に開示してくれるならC級くらいの冒険者でも充分対応できるな」

「そうなるとダンジョンができた最初は高位の冒険者が情報を集めて……となるのかな」


「情報をどういう扱いにするかはみていなんだよね。そもそも設計するのは僕だから、開示しようとおもえば冒険者が調査しなくても開示できるんだ竜穴は良質な魔力が吹き出す場所で、魔石はその魔力を蓄えるために必要だよ」


「そこは隠したほうが面白いに決まってるじゃないですか」

「最初に提示されたら何も楽しみがないですよ!」


おおう。さすがドラッケリュッヘン大陸の新天地にほぼ一番乗りでやってきた冒険者パーティだ。


「……たしかに、調査も冒険のうちかあ」

「そうですよ!」


そんなかんじで和気あいあいとダンジョン攻略を進める。


癒術士としての役割を担う俺の出番はゼロ。

まあまだ1階層ですからね。


ルリスのパーティは特にケガもなく、苦戦することもなく第1階層を突破。


洞窟の無骨な岩肌のなかで不似合いな石造りの階段が現れ、顔を見合わせた。


「ここから階層がかわるのですか?」

「そ!」


「……普通の洞窟にしては高低差が少ないと思いましたが……なるほど、建物のように上下の階層で分けてあるのですね」


あ、そういえば俺の勝手な先入観でダンジョン=迷路みたいな構図ができあがっていた。

たしかに普通の自然洞窟であれば、坂になってたりよじ登ったり這いつくばらないと進めない道とかもあるだろうね。


「罠やモンスターとは別の、かんきょう難易度をどれくらいにするか悩ましいんだよね」


「冒険者の成長を促すのが目的であれば、魔物の弱い階層こそ自然に近い環境難易度にするのがいいのではないかと思いますね」

「アタシもそう思う。準備の足らない冒険者は引き返すハメになるだろうけど、適切な準備をするための情報を集められる、ってのも冒険者としての成長だからね」


たしかに〜。


改めて上級冒険者の彼らを見ると、荷物にはロープや毛布など様々な道具が詰まった背嚢を背負っている。


「みんな今回はどんな想定でじゅんびしてるの?」


俺が背嚢を見ていることに気づいたルリスは「全方位だ!」と笑う。


「あらゆる状況に()()()()対応できる装備だよ。手持ちの準備で対応できない状況だと判断したら、すぐに撤退。新天地開拓の基本さね」


盾槍術士(シールドランサー)のアミが楽しそうに言う。

なるほどな、冒険の楽しさってそういうことか。


俺としてはあまりそういう楽しさ理解できなかったので、勉強になるな〜。

ある意味、ダンジョン攻略のゲーム性ともいえる真髄に触れた気分。


階段を降りると、そこは石のタイルがキレイに敷き詰められた大広間があり、その向こうは鬱蒼とした森。


「え……森?」

「見て、空が見える!?」

「ここって地下じゃないのか? 階段を降りてきたよな?」


テストプレイヤーの冒険者がパッと振り返って俺を見る。

あれ、ダンジョンってこういうものじゃないの?


「この世界の神たる殿下がお創りになった空間です。常識的な先入観など捨てたほうが身のためですよ」


スタンリーの言葉に冒険者たちは「たしかに……」みたいな雰囲気。


洞窟は完全な平坦だったが、森は少し起伏がある。

ちょっとした崖やなだらかな丘、ときどき川などもあり冒険者諸君は景色を楽しむ余裕もあるくらいだ。


危なげなく森を攻略し、3階層に降りる。

3階層は山岳地帯。環境難易度をメインにデザインした階層だ。

鳥の魔物に苦戦して何度かけが人が出たけど、俺の治癒魔法は活躍の場なし。


そして4階層。


ここは俺のお気に入り、水と森の階層だ。


マングローブのように長い根を持つ樹に、短い水草のうえをサラサラと流れるくるぶしくらいまでの浅い水辺。

木々の隙間から空は見えているが、マングローブの樹とは別にバオバブのような姿をした樹が枝を伸ばし空を覆っている。

その葉の隙間からキラキラと日差しが漏れる不思議な森。


「わあ……」

「キレイですね」

「これはどこかの地域を再現したものですか?」


「ううん、ぜんぶ想像」


強いていうなら樹のモデルはあるが、水に覆われた森ってなんか素敵だな〜と思って作り上げただけの階層だ。


「……? 待て、周囲に敵の気配……これは、なんだ?」


ブラーの言葉に足を止める一行。

先んじて進んでいたアミが戻り、周囲を警戒する。


すごいなあ、気配を完全に消せるっていう設定なんだけど、さすが上位の冒険者。

気づくんだねえ。


ぱしゃ、と水音がして全員がそちらを向く。が、そこには何もいない。


「ルリス、左だ!」

「ッ!」


並々ならぬ反射神経で反応したが、双剣のルリスの剣は空を切った。そして、剣を握る手からバッと血が噴き出した。


「ぐっ……!」

「なにが起こった!?」

「全員、円陣を組め! 敵はおそらく、透明だ!」


おお、さすが理解が早い。


「ミド!」

「任せろ」


ミドと呼ばれた男性は魔術士。

なにか策があるのかな、と見ていると短い詠唱のあと、青い霧のようなものがフワリと杖から流れ落ちて水の上をすべるように薄く伸びて広がっていく。

ドライアイスの煙のように地面に溜まったそれが舞い上がった瞬間。


「ギャウッ!」


バスッと大きな音をたてて、重弩士(ヘヴィボルト)のジャミが放った矢が透明のなにかに突き刺さって悲鳴があがった。

すかさずそこに弓術士の弓が追い打ちをかける。


「ギギギッ!」


一瞬で4本も矢を放ったらしい。2本が命中、2本が地面に突き刺さった。


バシャバシャと水音をたてている透明ななにか。


盾槍術士(シールドランサー)のアミが慎重に近づいて、円錐の巨大な(ランス)でトドメを刺す。


槍に血がまとわりつき、ドロリと溶けるようになにかが落ちるとそこには小型のキツネのような獣が事切れていた。


「透明になれる魔獣なんて初めて見た」

「これはいわゆる初見殺しってやつだね」


「ぜったい死人が出るとおもってたけど、さすがだねえ」


俺がぱちぱちと手を叩くと、皆は少し呆れ顔だ。


「姿を消す魔法……古代魔術にそういうものがあると聞いてますが、もしや復元したのですか!?」


魔術士のミドが興奮してるけど、ちがうんだな。


「うーん、古代魔術を再現したわけじゃないんだ。コーガクメイサイ、って言うらしいんだけど僕もあまりわかんない。ただしくは透明になるんじゃなくて、背後の景色を写してるから透明っぽく見えるだけなんだよ」


透明になることと透明に見えることの違いを説明するのがちょっと難しくて俺も言葉が足りなかったけど、一部は理解してくれたみたいだ。


その後も、この階層ではかなりトリッキーなモンスターをご用意しています。


眠りの鱗粉を撒き散らす蝶、足元の水に紛れて触手を伸ばし血を吸おうとしてくるヒル、樹上を飛び回って投石してくる小型のサル。


そして極めつけは……。


「ルリス、右方向に大きな反応あり! 距離、約600、いや400……ものすごい勢いで近づいてくる!」


ブラーの言葉に構えたルリスとジャミが「うわッ!?」と声を上げ、バシャンと音を立てて転んだ。かと思ったら、ものすごい勢いで引きずられていく。

引きずられながらも剣を抜き、必死で足を掴んでいるモノに斬りかかるが効果なし。


「なんなんだこれは!」

「ルリスー!」


あ、これはとうとう死んだな。と思ったんだけど。


ルリスは懐から取り出した瓶を投げつけ、それを剣で叩き割る。

舞い散った液体が水に混じると、引きずられる勢いが落ちた。


体勢を立て直したルリスは、同様に引きずられていたジャミの足元になにかの液体を振りまく。ひきずられてびしょびしょになっていたジャミが立ち上がり、森に向かって弩弓を構えて連射しはじめる。


引きずられた2人には敵の姿が見えているらしいが、残りのメンバーは樹が邪魔で見えていないようだ。


「ジャミ、下がれ! ミド、たのむ! 水の魔物だ! アミ、ミドを守れ!」

「りょーかい」

「あいよ!」


短い言葉で全てを理解したらしいアミとミドは構え、残りのメンバーは攻撃されないように下がる。


「ソルト・ロックバイト!」


ミドの叫びが響くと白い石礫(いしつぶて)が空中に無数に浮かび、一直線に飛んでいく。


「塩?」

「そのようですね」


マングローブの木々を割って現れたのは木々を飲み込むほどに大きな水の塊。

ツプン、とたいした音もたてずに突き刺さった塩の(つぶて)は、水の塊の中を勢いよく渦を巻いて回っている。


「スライムだ!」

「核はだいぶ高い位置にあるぞ」


ズズズ、と木々を飲み込みながら近づいてくるほぼ水のようなスライム。

だが、やがてピタリと動きが止まり、表面が波打ち始める。


「効いたか」


ボソリと呟いたミドが、再び詠唱を始める。


スライムは苦しんで暴れるように水の身体を波打たせながら触手を伸ばして地面を叩きつけたり変形したりしている。


あ……もしかして、浸透圧?


ボヨンボヨンしているスライムに、ミドの放った魔法が再び突き刺さる。


どうやらそれは赤く熱されたマグマのような石で、水の中に入ってもボコボコと激しく泡だっていてた。

スライムはより激しく動きながらその石をなんとか体外にひりだそうとしている。

ミドはそこにさらに追い打ちをかけるようにマグマ石を連続で突き刺し、勝負アリ。


「すごい! ぜったい死人がでるとおもったのに!」


「……殿下、意地の悪い敵を用意しますね……」

「イテテ、ケツの打ち身が尋常じゃねえ……殿下、治癒魔法をお願いします」

「あの……私も」


スライムの触手に足を掴まれ100メートルほど引きずられたルリスとジャミの2人はだいぶ痛そうだったけど、普通に歩けてる。


「すごいね、かりに僕がいなかったとしても帰還にはもんだいなさそう」

「俺らはどんな状況でも生き残り、帰還することに関しちゃ一流だからな」


ルリスが骨まで達したケガに傷薬をぶっかけながら自慢げに語る。

たしかに自慢するだけあって、とっさの判断力や対応策の引き出しの多さは俺の護衛騎士たちではとても敵わない。


「せんもんかってスゴい……!」


俺が目を輝かせて言うと、冒険者一行は照れていた。


が。


そのあと、隠しボスとして設定していた蛇魔人のヘビヨさんに運悪く遭遇してしまって、アッサリ全滅した。


いや、正しくは交戦もせず撤退しようとしていたのだがそれをヘビヨさんが許さなかったのだ。一瞬で追いつかれた冒険者たちは、なすすべもなくヘビヨさんの尻尾と爪にズタズタにされてしまった。


ヘビヨさん強い。


ひと目見ただけですぐに撤退しようとしたルリスの判断は正しい。

ヘビヨさんの存在はちょっとバランスブレイカー過ぎたか……。


俺の目の前で次々と死んでいく冒険者の姿に、さすがに心が痛かった。

すぐ蘇生してあげるからね!


「ハッ!」

「ゲホッ、ゲホ!」

「なんだいまの、なんだいまの、うわああああ!」


混乱しているパーティのみんなの前に先ほど彼らを殺したヘビヨさんが普通にいてパニック状態。


「あ、ごめんね。今は襲わないようにいいきかせてあるから」


「これなんですか! なんですかこの魔獣!」

「魔獣なのか? 半分ヒトだから、魔人なんじゃ……」

「これもダンジョン設計のひとつですか!? これはちょっと規格外すぎますよ!?」

「うわああ、死ぬってこんな感じなんだ……最悪の気分」


「隠しボスに……と居てもらったんだけど、ちょっとつよすぎたかー。それにしても不運だね、この広い階層でであっちゃうなんて」


「いや……すみません、誘引しました」


ブラーの言葉に全員の視線が集まる。


「……どういう存在か気になって……実戦では絶対できないことですが、死なないと思うと、つい……」


「……まあ、ブラーは普段なら絶対こんな事はしないってのはわかってる」

「規格外の敵に襲われるという想定が甘かったのは間違いない」

「そうだね。擬似的にも死んだのはいい体験だよ。気を抜けばアタシたしはこんなにアッサリ死ぬんだ。気を引き締めよう」


ブラーのやんちゃを責めることもなく、経験を内省に活かす。

いいパーティだなあ。


「ヘビヨさんはほんとに規格外だし、敵というより管理側の存在で試験的にいてもらってるだけだからテストプレイのはんいがいだよ」


「それでもいい経験だった。新しい冒険と聞けばどこへでも行ってだれよりも知見が深いと思っていたが、こんな存在は知らなかった」

「後学のためにお聞きしたいのですが、このヘビヨサン……というのは、もしや失われた魔人でしょうか?」


「うんそうだよ。あとはクモミさん……あ、来た」


古代人が人工的に創った兵器生物だとかいう情報は、彼らに必要ないだろう。

俺が喋っているところに、美しい女性の下半身が10本脚の蜘蛛になっているクモミさんが現れた。


ルリスたちが緊張しているのがわかる。

ちなみに俺も背中がゾワゾワしている。


だって蜘蛛だよ! ペシュの指は蜘蛛みたいに長くて細くて冷たくて大好きだけど、リアル蜘蛛となるとワケが違うって! デカいし!


ヘビヨさんは剥げ落ちた鱗をブラジャーの形にした防具をまとっているので、たわわな胸はちゃんと隠れている。

クモミさんは胸元が大きく開いた、タイトなお洋服を着ているけど下半身とのバランスをとるためにちょっとフサフサした長い尻尾みたいな装飾が襟口とか脇腹とかから風になびいてる。それもまたちょっと気味悪いんだよね。


あとウエストポーチ。

クモミさんが何かを取り出し、俺に差し出してくる。


「あ、これ……アクアどんぐり! こっちはフレアどんぐり! 結実したの?」


俺の言葉に、クモミさんはコクリと頷く。


「なんですかそれ?」


「あ、ここはね、僕の農業試験場でもあるんだー。地上にはない新しい魔法植物を育ててるの! 彼女たちはその世話人だよ」


俺の小さな両手に1つずつ乗ったおおきなオレンジ色と青いどんぐりを見て、冒険者たちも興味津々。


「アクアとフレア……【水】と【火】属性を含有した木の実ですか?」

「これはもう木の実というより魔石に近い魔力量……」


「そう。これ、魔石の代替品としてりゅうつうできないか考え中の植物なんだ。竜穴のあたりに植えておけばかってに魔石が精錬されるかんじ!」


大地に流れる血管のような竜脈が、地表に現れる場所。

竜穴は良質な魔力が吹き出す場所で、魔石はその魔力を蓄えるために必要なんだけど。

現状、魔石の精製にはとってもコストがかかるんだな〜。


「なるほど……! さすが神は世界全体の豊かさをお考えなのですね!」

「魔石が平民にも簡単に手に入るようになれば、たしかに暮らしは豊かになります」

「俺たちが調達するのも簡単になるよなあ」


まだまだ研究段階だけど、喜んでもらえそうでなによりだ。


4階層ではヘビヨさんとのエンカウントというハプニングはあったが進行は順調。

しかしここでタイムリミットだ。


「昼夜がわからないので定かでないですが、そろそろダンジョンに入って6刻(12時間)ほど経つのでは? ダンジョン内で野営しても大丈夫でしょうか?」

「あ、うん! でも野営はセーブポイント……じゃなくて『セーフティゾーン』でおねがいね。階段をおりた先に必ずある石畳のところ。そこでやすんでね」


「あ、そこにいれば安全なのですね?」

「そう! 外とちがって絶対的に安全だよ。魔物や虫もはいってこないし、おてんきも関係ないから」


「お天気? ……そういえば2階層は晴れてましたが、4階層は曇ってましたね。雨が降ることもあるのですか?」

「あるよー、4階層は雨がふると難易度が倍増するとおもう。なのでね、セーフティーゾーンにはダンジョンを一瞬で脱出できる帰還の転移魔法陣を設置しようと思ってるんだ」


「なるほど、それは便利ですね」

「それは帰還だけなのですか?」


「うーん、そうほうこうにするかは考え中」


それから俺も彼らに付き合って野営。


彼らの背嚢から次々と出てくる野営アイテムのへえへえ言いながら、彼らが準備してきたフォーゲル印の保存食、レトルト食品の感想などをヒアリングしたり。


ダンジョン改良案や新アイデアなども出るわ出るわ。

やっぱり現役冒険者の意見はおもしろい!


幻想的な景色を楽しみたいという意見もあって、それは俺も大賛成!

攻略が進んで安全な経路が確保できれば、冒険者じゃない非戦闘民を護衛して壮大な景色を楽しむ……みたいなツアーが組めるくらい生活に浸透してほしい。と思っている。


そんな今後の展望などを語りながら、それぞれ交代で4時間ほどの睡眠をとった後。


5階層は岩砂漠で、巨大な岩が作り出す迷路のような地形だったが彼らは難なく突破。

最後のボス戦ではヘビヨさんとの反省を活かし、充分に前準備をしてから臨んだおかげで無傷。素晴らしい連携だったよ、さすが新地開拓専門冒険者!


ちなみにボスはジュンの動きをトレースしたヒト型の無機生命体(ゴーレム)だよ。


素早さ自慢の疾風走(はやてばしり)と弓術士のコンビでヒットアンドアウェイを繰り返して動きを研究。それを見ていたメンバー全員一致で「こうすればイケる!」という戦略を立てて一気に攻め落とす。


アッサリ倒したように見えるが、綿密な戦略あっての勝利だ。


「いや、なかなか強いボスでしたね」

「ヒト型だからナメてたけど、単体でなければ負けてたかも」

「遠距離攻撃の支援があったらもっと苦戦してたねえ」


ボス戦の感想をとりまとめているうちに、ボス戦の勝利報酬、宝箱が出現。


「これで完全踏破ですか」

「踏破じょうけんはまだいろいろ考え中だけどね、このダンジョンではそう。さ、宝箱をあけてみて!」


勝利の余韻にニヤニヤしながらルリスが宝箱を開ける。

覗き込んだ全員が息を呑んだ。


「こ……これは」

「うそでしょ、光玉(こうぎょく)? こんな大きな……」

「こっちは剣だ! この輝き……ミスリルか?」

「この手甲、何の素材? すごく軽い……」

「布に包まれてるのは素材だ。鱗っぽいものに、何かの爪……なんだろうな?」


宝箱の中身はおたから詰め合わせセットだ。

この世界では伝説級のドラゴンのウロコやアダマンタイト、なんかすごい実|(精霊が集めてきた)になんかすごい鉱物|(これも精霊が集めてきた)、そして宝石類。ラーヴァナが作ってくれたやつ。


「す、すごい」

「1回でこれは正直、やりすぎではないですか。1つ1つだけでもダンジョン1回分以上の価値がありますよ」


「え……そ、そう?」


報酬バランスも大事だとプロジェクトメンバーから言われていたのでそのへんもヒアリング。なるほど……俺の握りこぶしくらいある光玉(こうぎょく)はやりすぎ、と。

国宝レベルの報酬は冒険者にとって取り扱いが負担になる可能性もあるので、武器や素材が嬉しいそうだ。さらに貴重な魔道具なども嬉しい、か。

うんうん、やっぱり報酬はちゃんと需要があるものにしたいよね。


興奮気味の冒険者たちと報酬について話し合っているときに、ガノから通信が入った。


(ケイトリヒ様、エーヴィッツ閣下から緊急の連絡が入っています。なにやら必死なご様子で「助けて欲しい」……と)


えっ!


「な、内容は?」

(直接話したいとのことで、至急面会を希望しています。どうされますか?)


「もちろんいくよ! とんでく!」

(承知しました、ではダンジョンの件は以降ルキアに引き継ぎを)


冒険者たちの扱いは急いでダンジョンにかけつけたルキアに任せて、俺はエーヴィッツ兄上のヴァイスヒルシュ領へ直行だ!


中身はわからないけど、兄弟が困ってたら助けるよ。

まっててね、エーヴィッツあにうえ!

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