第2部_5章_202話_パンドラの島_1
暗黒大陸から戻って、5日後。
ようやく準備が整ってパンドラ島へ向かう日となった。
というのも、急遽マリーとフランが同行することになり、付け焼き刃ではあるがトリュー騎乗訓練を余儀なくされたからだ。
マリーとフランは2人の父君からも「強いぞ」と聞いていた。
しょーじき、贔屓目だと思って半信半疑でした。
だって女性に弱いラウプフォーゲル人よ?
騎士が令嬢相手に本気で手合わせするわけないじゃん。
と思ってた。思ってたのですよ!
「マジで強えぇな、王子の嫁はよ。2人とも、多分C……単騎の強さだけ見たらB級にも匹敵するかもしれねえ」
ジュンをそう言わせたその実力、間違いない。
というわけで「戦える護衛対象」として急遽魔導騎士隊の隊列配置を見直し、いざというときに単騎でトリューに乗れるようトリュー騎乗訓練をし、2人専用のトリューを作りました。
その時間が5日というわけ。
まあトリューはね、精霊が作ったからよしとして。
マリーが盾と剣、あるいは大槍の防御型の重戦士であることと、フランが長槍と弓を扱う機動型の攻撃役であることは知っていた。
そして俺は後衛の魔術師。
俺はゲームはいまいち疎いのでこういう役割を知らなかったけど、ルキアいわくMMORPGでは定番の呼称らしい。知らなかったよ。
フランは攻撃役のなかでも、武器種の違いから近接攻撃と遠隔攻撃のマルチロールというらしい。
Meleeはなんとなくもとの意味を知ってればそのままでも意味通じるけど、レンジって範囲って意味じゃんね? 正しくは「ロングレンジ」なんじゃないの?
と、ルキアに言っても「ソウダネ」としか返ってこなかった。
納得いかない。
とにかく、パンドラ島へ向かう準備は整った。
ちなみに、お嬢様向けのトリューは側近たちとほぼ同じ仕様だが、座席の形がビッグスクーター方式だ。足を広げて乗るのがはしたないという感覚があるそうなので、足を閉じて乗れる形に改良したというわけ。
マリーとフランはちょっと側近たちのまたがるタイプに憧れてたようなのでちょっと不満げだったけど、お父上たちの気持ちも考えてさしあげて!
それに馬とかならもう生き物なんで仕方ないけど、結婚前のご令嬢に贈る乗り物が足を広げるものだったとなれば俺への非難も免れないから!
そういうドタバタは乗り越えて、現在パンドラ島へ向かう海の上空。
シラユキは国に居残りしてもらって、城馬車は魔導騎士隊の専用トリューが牽引している。
やっぱり城馬車があれば野営や補給に不安がないからね。
真っ青な海と真っ青な空が広がる、なにもない景色だ。
雲も近くの海域にはひとつも見当たらない。
トリュー隊列を囲むように、本来の姿をした巨大な竜も6体が随行し、ときどきチラチラと太陽光を遮る。
『空を飛んでいるなんて、信じられないくらい穏やかね』
『ケイトはずっとこの光景を見ていたんだと思うと、ちょっとズルいわ』
訓練では近場を飛んだだけだったので長時間飛行は初めてだというのに、ご令嬢たちはご機嫌だ。
そしてとても地味でありながら重要な改善があったので令嬢がたの同行に難がなくなった、という点も追加しておきたい。
それは、長時間飛行時のトイレ問題。
俺は幼児なのでペシュティーノがお世話してくれるし、側近たちは特殊な訓練を積んでいるので5、6時間の飛行は問題ない。
冒険者などは下着の中で排泄したものを外に転移させるという高度な魔法を使う人物も存在するらしい。もちろん、下着の中は清潔を保ったままだ。
人間、必要に迫られればどんな魔法でも生み出すんだな。
ちなみに俺の側近は全員使えるらしい。
すごいんだかすごくないんだかわからないぞ!
ただ、女性、さらに令嬢となるとそういったデリケートな問題に俺ではタッチできない。
一応、ゲーレたちが女騎士として令嬢を護衛することになってるけどそれはガチの防御面の話であって、お世話みたいなとこはムリ。本能、犬だし。
そこで大活躍なのが、城馬車だ。
飛行中でも、後部ドアを開いてそこにスーッとトリューのまま入り、そこから転移して自室に行けば清潔で安定したいつものトイレがそこにある!
これ、画期的ですよ!
もっと言うと、ご令嬢がたは別にトリューで飛ぶ必要無いんですがね!
城馬車の自室でお茶でも飲んでていただければそれがイチバン楽なんですけど、まあそこは2人の気概というか、やる気を汲んで、同行したいという申し出を受け入れることにした。
おかげで美しい風景を共有できるという時間は、プライスレスかもしれない。
ちなみに魔導騎士隊の間でも密かにストレスだった長時間飛行が劇的に改善されたと大変喜ばれました。
ただ城馬車は俺の持ち物なので、俺が同行するときにしか随行しない。
まあそれでも、飛行隊列を止めること無く、こんな海の真上でも安心して用を足せるってのは素晴らしいことだと思う。
魔導騎士隊用の簡易トイレでも開発しようかな……。
なんて考えている間に、見えてきたのは複雑な海岸線を持つ島。
島といっても、前世でいえばサイズ的には前世のイギリスくらいはあると思う。
あれ、イギリスって日本より大きいんだっけ? 本州もまあまあ大きな島だったと思うんだけど……うーん、おしえてぐーぐる。まあないものは仕方ない。
それよりも特筆すべきは……。
『何ですの、あれは』
『ケイト、わかる?』
島の全貌が見えるわけではないが、海岸線からだいぶ奥……位置的には多分、島の中央あたりじゃないだろうか。そこから、まっすぐ天に伸びる黒い線。
上を見ても、途切れている気配がない。
この世界が地球と同じ仕組みで存在するならば、確実に成層圏から宇宙空間まで伸びているであろう、塔……そう呼んでいいかも迷うくらいの建物があった。
「塔……というより、天への道……といったほうが良さそうなくらい高さがあるね。もう高さという呼び方もそぐわないくらいだ……きっと、あそこに『白き玉座』があるんじゃないのかな」
テキトーなことを言っているが、ある種確信めいた予感のようなものがある。
だってあんな規格外な建造物、神の何かに決まってるもん。
「ひとまずあれを目印に飛びましょ……」
(敵襲!)
キィン、と耳に響いたのは俺だけじゃなかったようだ。
「今のはだれの声?」
確認しようとしたところで、トリューの下の方からカッと強い光があがった。
ドラゴンたちが隊列を乱して何かに応戦しているようだ。
最も巨大なミラネーロがスッと俺のトリューの下に潜り込んでくる。
(主、先程の声はメリザナじゃ。下から魔法攻撃放たれたようじゃな。おそらくドラゴンのブレスじゃろう……ワシの上におれば問題ない)
「敵は、ドラゴン!?」
「ケイトリヒ様、ドラゴンと会話されているのですか? なんと仰ってます?」
「ペシュティーノには聞こえないの?」
「先程の『敵襲』という声は聞こえましたが、それ以降は聞こえません。何が起こっているか共有をお願いします」
「全隊に告ぐ。地上から敵襲、敵はおそらくドラゴンである可能性。マリーとフランは0号機付近へ退避。残りの魔導騎士隊は護衛任務をミラネーロと側近に任せ、現状確認のための離脱を許可する!」
よし、噛まずにキリッと言えた!
魔導騎士隊の隊員から敵影確認のための隊列離脱の宣告が次々入り、俺から見えるトリューが何機か急降下していく。残っているのは側近のトリューだ。
「ミラネーロ、ドラゴンたちも通信に入って、って訓練したよね?」
「おおそうじゃったすまん。どうにもこの……魔道具を介して会話というのに慣れておらんでのお」
もーそういうとこおじいちゃんなんだから!
『敵影を確認! 種族は不明ですが、放たれた魔術は、異形の姿をしたヒト型が放ったもののようです。こちらを伺うように警戒しています』
『ドラゴンのように見えなくも……ないですが、これは』
魔導騎士隊から送られてきた映像には、二本足で立ち、ふくらはぎまで伸びた長い手と背中から生えた大きな皮膜翼、そして長い首に爬虫類のような顔……身体は鱗におおわれ、灰色っぽい。大きな角は長くのびてうねっている。
ワイバーンに腕が生えたみたいな謎の種族がいた。
「およ〜、あれはつい最近話題になった、紛れもない『竜人』じゃのう! ほうほう、ここで生きておったか〜! にしてもやんちゃが過ぎるのう、メリザナ、フディーア。少しお灸を据えてやりなさい」
どこかの御老公のようなセリフをミラネーロが吐くと、メリザナとフディーアが『了解』と『やってやんぜ!』と言って下降していった。
ブレスの応酬が続いたかとおもうと着地したフディーアが長い身体を巻き付けてボコボコに殴り、メリザナもクチバシで突く。ドラゴンって殴るんだ……。
ギャーギャー喚いていた「竜人」は、ドラゴンにどつき回されて大人しくなった。
ヒト型っぽく見えるけど、ドラゴンたちに引けを取らないデカさだ。
「あんなデカいのに『竜人』なの? ヒトの要素すくなすぎない?」
「だいぶ長く生きておるんじゃろ。精神としてはほとんどドラゴンじゃな」
……その「ほとんどドラゴンの竜人」が、フディーアにギッチギチに締め付けられて痛いのかメソメソ泣いている。な、なんか可哀想。
「可哀想だよ、あまりいじめないであげて」
「しかし主、アレは主にいきなり攻撃してきたいわば敵じゃ。しっかり痛めつけておかんとまたなにをしでかすかわからん。竜人は我らと違って神の眷属というわけでもない」
「ケイトリヒ様、アレはドラゴン様におまかせして我々は『メディウム・ステラ』へ向かいましょう。周辺には、危険な気配がします」
「うむ、ペシュティーノの言う通りじゃな。魔導騎士隊も引き上げるが良い」
俺が命じると、魔導騎士隊は高度を上げて隊列に戻る。
フディーアは相変わらず長い身体を竜人に巻き付けて締め上げているが、メリザナはまた別の敵と接触したのか別方向にブレスを放っている。
『主、この無礼者たちの始末は私たちにお任せを。早くメディウム・ステラへ』
『なんか見たことねえ魔獣もわらわらでてきやがった。ちっと遊んですぐ追いかける』
メリザナとフディーアが通信でそう言うので、ドラゴンにおまかせすることにした。
「……やられたりしないよね」
「ふっふっふ、主を戴いたドラゴンがこの世界の生き物に負けるわけがないぞよ」
「でもここって過去の神が封印に使った島なんでしょ。もしものことがあったら」
「主、過去の神はすでにおらん。神の権能を得た主にかなうほどの加護を持つものは、この世界にはおらんのじゃ。あまり弱気になってくれるでない、我々の加護が弱まるではないか〜」
「そ、そういうものなの。ごめんごめん」
「頼むぞ主〜」
なんてユルイ会話をしながら塔へ向かう。
数キロほど進むと、下からチカチカと光る光が見えた。
何かの合図のようにも見えるそれを、なんだろうと目を向けた途端、ズキンと頭痛。
モヤのかかったビジョンが見える。「予見」の権能だ。
さきほどチカチカと光った場所から強烈なレーザーのようなものが出て、魔導騎士隊の隊員が何人か巻き込まれた。側近の中で一番外側にいたジュンとガノのトリューの一部も巻き込まれ、ジュンは片足、ガノは片腕が吹き飛んでいる。
ブワッ、と俺の中から何かが湧いてきた。恐怖じゃない。
これは、怒りだ。俺の側近になにしてくれんねん、という純然たる怒り。
「させない」
腹の底から出たような声を聞いて、ペシュティーノが驚いて振り向く。
手をかざし、ジュンとガノがいる方向へ巨大な防御障壁を生み出した。
それと同時に、やはりレーザーのような光が放たれたが防御障壁に阻まれて霧散する。
「ケイトリヒ様……! 今のは、予見で?」
「うん。本当にこの島には敵性の存在がいっぱいいるんだね。ごめん、今まで真剣に考えてなかったよ」
「予見」で見えた光景を思い出すだけで、絶対に許さないという謎の力が湧いてくる。
「この島にすむ全ての生命体に告ぐ」
神の能力を使って、この島に俺の声を届けるんだ。たしかそういう能力あったよね。
「我が眷属、我が随身、我が同朋を手に掛けたものは、その存在を許さない。そのものが最も忌避する方法で最も残酷な目に遭わせる。死ぬだけで済むと思うな」
子どもとは思えないドスの効いた声が出たと思う。
普段の舌足らずな発音とは全然違う声だった。
やっぱ俺、ちょっと怒らないと真面目にできない性質だわ……。
『おお……これは神の『宣告』。すばらしい! ケイトリヒ様は私が導かずとも神の御力を自在に操っていらっしゃる。これぞ神の真なる御姿です』
なんかシャルルがブツブツ言ってるので通信シャットアウトしといた。
まあもう神になるつもりだし、いいんだけどシャルルの思惑通りになるのはなんか腹立つのだ。なんとなく。
俺の神めいた恫喝が効いたのかそれからしばらくは何事もなく、だんだんと天への道のような塔に近づいていく。
近づくと、塔は物質じゃないような気がしてきた。なんかちょっと透けてる?
「あれは……どうやら建造物じゃないみたいだね」
「そうなのですか?」
「だってなんか透けてない?」
「えっ、いえ。私には透けてるようには見えませんが」
あれ、また俺だけヒトと見えてるものが違う説。
確認したところどうやらやっぱり透けて見えているのは俺だけみたいだ。
俺の目には、建造物じゃなく……。
「データ……の、集合体みたいに見えるな」
(神となる条件の第五段階が解放されました。これより物質的な質量による重力の拘束から解放されます)
「なんて?」
もうだいぶ聞き慣れたシステムメッセージみたいなものが聞こえたんだけど、初めて内容がよくわからんかった。重力の拘束から解放? 前世の物理法則に則ると宇宙空間にスポーンと放り出されちゃわない?
キョロキョロしても特に変化はない。
「シャルル、今のなに?」
『重力からの解放……つまりは、精霊のように重さを感じず浮遊できます』
「なにそれおもしろい! 飛ぶってこと!?」
『飛ぶ……というか、浮くというか』
「やってみたい!」
「降りてからにしましょう」
ごもっともなペシュティーノの提案を受け入れて、さらに飛行すること15分ほど。
塔……というか、たぶん「メディウム・ステラ」にどんどん接近していく。
規模感が規格外すぎて遠近感がバグッってたけど、これはどうやら建造物だったとしても塔なんてレベルじゃない。
なんというか……柱?
面積でいうと町1個分くらいの範囲から、綺麗な円柱がまっすぐ天に伸びているんだ。
表面に近いほど透明度が高くて、中心に行くほど不透明度が高い。
黒いと思っていたのは単に影で円筒自体の色はシャボン玉の表面みたいなタマムシ色だ。
「これが……メディウム・ステラ?」
『これは「竜脈柱」。地の竜脈と天の竜脈をつなぐ柱です』
シャルルがここにきて急に説明してくれた。
あれ何?って言ってる時から教えてくれてもよくない?
「なんで今まで内緒にしてたの」
『いえ……実は今の今まで本気でわからなかったのです。竜脈柱に近づくにつれ、ぼんやりと思い出した……というか、おそらく竜脈から情報が染みてきたんだと思います』
情報って染みてくるもんなんだ?
『ケイトリヒ様、あの竜脈柱にはお一人で入らなければなりません。そこで、メディウム・ステラへたどり着けるでしょう。我々は外でお待ちしておりますので』
「えっ」
「そのような事は……もしや神になるための何らかの儀式なのですか?」
突然の放り出し宣言に俺もちょっとビビっちゃう。
ペシュティーノはもっと動揺してる。
『はい、あの竜脈柱はケイトリヒ様の仰るとおり建造物ではなく、竜脈……世界記憶そのもの。神以外の存在は触れることも叶わず、その中に入れば肉体も精神も霧散してしまいます』
こわっ。霧散ってどういうこと。
「ぼ、僕は霧散しないの」
『しません。5つの権能を持つ、真なる神成者ですから』
ええ〜それって本当ですか〜?
霧散とか言われると入るの怖いんですけど〜。
ここにきてこれまた急に神になることに及び腰になる俺なのである。
めんどくさーめんどくさー1人で行くのさびしー!
心の中でブーブー言うけど、口には出しません。
結局行くことはもう覚悟してるし。
でも不満なんで心の中でブーたれる! それくらいいいでしょ!
『近くに平地があります。着陸しても問題ないとドラゴン様が仰ってますので、一旦着陸して野営しましょうか』
オリンピオからの提案。
示された方角には、何かの建造物の跡のような平たい地面がある。
「安全なのかな」
『完全に安全とは言えんな。主が竜脈柱に入っている間、待機できる休憩所のようなものを作ってはどうじゃ。主の御力で創れば眷属は安全に待機できるじゃろう』
あ、ここで「創造」の権能?
(べつに権能で作る必要はないよ! 僕たちが作って、主が最後に守護を与えれば同じかそれ以上の効果があるから、そっちにしようよ!)
ジオールが脳内で提案してくる。
創造の権能で物質を作るのは控えておいたほうがいい、と言われたばかりなのでそっちにしようか。
「全隊、待機。これから目標地点に、拠点を建造する」
精霊たちに簡単な設計方針を伝えて、俺はボスンとシートに背中を預ける。
やることないし。
「……ケイトリヒ様、お一人で本当に大丈夫でしょうか」
「大丈夫じゃなくても1人で行くしかないから大丈夫にする」
ペシュティーノが心配そうにしてるけど、俺としても心配。
単独行動となると迷子のとき以来だし。
「精霊はついてこれる?」
『主、残念ながら。精霊も置いていってもらうことになります』
「ええええええ〜! なんでなんで、それヤダー! 精霊もムリなんてヤダー!」
とうとう声に出てしまった。
くっ……中身オトナなのに!
『私がついて行きます』
通信から聞こえたのは、スタンリーだ。
『ムリです。貴方は主を悲しませたいのですか?』
シャルルのがスタンリーに対して冷たく言うけど、スタンリーは何故か、確信を持って反論する。
『私であれば霧散したりしません。ケイトリヒ様が、私を不要だと思わない限り』
「それは絶対ない」
『であれば問題ありません』
『それは……』
「スタンリー、それは一緒に行っても大丈夫だって確信があるから言ってるの?」
『もちろんです』
どういうわけか、スタンリーはぜったいに竜脈に取り込まれないという確信がある? ということ? とはどういうこと??
「……なんで?」
『詳しくは下でお話しましょう』
ちょっと混乱した頭でふと下を見ると、メリメリと拠点ができている。
ものすごく精巧に生成できる3Dプリンタみたいに、建物の下の部分からほんとにメリメリと生えてくるかのようにできていく。
見てて面白いけど……やっぱりどういうこと?
スタンリーだけが、俺と一緒に竜脈柱に入れる?
それに、何故かペシュティーノも少し気まずそうな表情をしている。
「ペシュ、何か知ってるの?」
「……スタンリー自身の口からお聞きください。私は……私の口からは、申し上げられません」
誓言の楔も、スタンリーとの間に存在する従魔契約も、隠してることを強引に言わせることは簡単だ。でも俺にとって側近は大事な家族も同然。
強引になにかさせるようなことはしたくないと放置してきた。
……スタンリーが隠していたということは、きっと俺に言う必要はない、と考えたということだ。理由は……わからないけど、保身や意地悪じゃないことだけは確かだ。
それくらいは信じてる。
なんだかジットリした空気感のなか、竜も魔導騎士隊も上空で拠点が建設されるのをじっと待機している。
誰も喋らない。
やがて精霊が「できたよ」と声をかけてきたので、気乗りしないけど全隊に声を掛ける。
「……これより拠点に着陸する」
俺の号令を合図に、斥候部隊が拠点に降りていき周辺の安全を確保。
順番にトリューを下降させ、最後に俺とマリーとフランが降りる。
拠点は、ドラゴン6体を受け入れることもあってものすごく巨大。
ドラゴンの寝床にもなる、すり鉢状の土台が八角形にならび、それを繋ぐように高い城壁が一番外側。
内側にはおおきな広場と、ホワイトハウスみたいな建物。
まあつまり白いです。
俺が着陸すると、側近全員が迎えでてくれる。
俺はマリーとフランがトリューから降りるのを見届けて、拠点へ。
……なんだか気の重い話し合いがされそうな予感です。




