第2部_5章_199話_ミラ爺の突撃お国訪問 1
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「危険があったらすぐもどってきてね! ぜったい死なないで!」
すらりと背の高いイーロの足にすがりついてそう言う王子は、本当に可愛らしい。
ミラネーロは本来の竜の姿でニコニコと見つめていた。
「主、かの大陸は『死んでも死ねない』大陸なのですよ。死ぬことはありません」
「えっ。あ、そうか。えっと、じゃあ死ななくなりそうになったらもどってきて……?」
「まあ、もとよりハイエルフの死はヒトと同じものではありません。ご心配なく」
イーロが跪いて王子の頬を撫でる。目を細めた王子が黒檀のようなイーロの頬に触れ、その首筋に抱きついた。
「まあとにかく無理しないで」
「……御意」
小さな背中をポンポンと優しく叩くと、満足したようだ。
少し離れたところでシャルルが歯ぎしりする音がうるさい。
王子の御手で撚られた御護りがあれば、1ヶ月のあいだ暗黒大陸に滞在しても問題ないとデーフェクトス様からお墨付きをもらえたので本当はさほど心配してない王子だったが、それでも送り出すほうは心配するものだ。
などとブチブチいいながら見送られたのが四半日ほど前。
イーロは、巨大な黒竜の背に乗ってアンデッドひしめく暗黒大陸上空を飛んでいた。
「ところどころ、融合しきって巨大な肉塊になったようなアンデッドもいますね」
「無限に合体するわけでもないのじゃなあ」
ミラネーロが低空飛行してアンデッドの様子を見たところ、比較対象がないので錯覚していたが1体1体が5メートルから10メートルはあった。つまりある程度は融合した後の状態のものが大陸を埋め尽くしているのだろう。
ケイトリヒが知ったら絶句しそうだ、とイーロも呆れて笑う。
アンデッド絨毯は空を飛ぶミラネーロを追うように、手を伸ばしたり触手を伸ばしたりしてきたが届くはずもなく。
過剰に刺激しないよう、高高度飛行に切り替えた。
「……かなりの距離を飛んでいますが、気候に変化がありませんね」
「そう言われてみればそうじゃな。ドラッケリュッヘンでは砂漠に森林に湿原と様々な土地があったが……精霊がおらんせいじゃろうかの。土地の起伏も少なく見える」
なだらかな丘や多少の谷などはあるが、たしかに見渡しても山らしい山が見当たらない。
それに、どこまで行っても空は薄く烟ったような曇り空。普通の雲であれば大して厚みのない雲が日差しを遮ることはないだろうが、この大陸の雲は黒い。
黒いベールを1枚はさんでいるように、薄暗くて気温も一定。
「アンデッドの出す瘴気がはからずも気温や気候を一定にしているのでしょうか」
「さあのう。これもまたアンデッドを集めたものによる采配かもしれん」
ドラゴンとハイエルフは普段であればどちらも口数少ないタイプなのに、目下の黒い大地に広がる絶望的な風景に飲み込まれないよう、会話せずにはいられなかった。
「見えてきたぞい」
ミラネーロの言葉に、イーロが視線を向ける。
ケイトリヒ王子が絵に描いてくれた「エリンギ」はたしかにこの台地を端的によく表している。高さはないので、エリンギを「かさ」近くで輪切りにした感じだ。
「……あれは」
エリンギの上にそびえる街から、なにか飛行物体が複数飛び立った。
「飛行技術を持っているのか。これは、少し面倒ですね」
「叩き落とすわけにもいくまい。穏便にすめばいいんじゃがなあ」
飛行物体は徐々にこちらに近づいてくる。
ケイトリヒが見たら、あれは飛行しているのではなく「滑空機」、つまり滑空しているだけだと訂正しただろう。
ミラネーロとイーロにとってはどちらでも大差ない。
だが、滑空機に乗っている人員にしてみれば大きな差だ。
「ずいぶんと遠回りに偵察してくるのう」
「……あなたの翼の風に巻き込まれるのを恐れているのではないですか」
イーロの読みは正しい。滑空機は自力飛行ができないので、巨大な翼竜が起こす乱気流に巻き込まれでもしたら、下のアンデッド絨毯に真っ逆さまなのだ。
「交流を試みましょうか」
「うむ」
イーロはバサリとフードを跳ね上げ、拡声の魔法を自らの喉にかけた。
「未知の民に告ぐ! 我が名はイーロ、西の最果てクリスタロス大陸より参じたハイエルフなり! 主に代わり貴殿らの国について知りたい! 話ができるものはいるか!」
ミラネーロよりも高い位置でふわふわと舞っていた滑空機はイーロの言葉に明らかに動きを変えた。言葉は通じているようだ。
「共通語が通じるようじゃな」
「異世界召喚勇者がいる国なので、おそらく通じるだろうとは話しておりました」
異世界人の言語チートについてはケイトリヒが熱心に語っていたが、ハイエルフであるイーロもドラゴンであるミラネーロも完全に聞き流していた。
なにか、異世界召喚勇者は全員共通して「ニホンゴ」を話せるようになるとかなんとか言っていたような……?
ハイエルフもドラゴンも、相手がどんな生き物であろうと念話が使えるのであまり言語について関心がなかった。
やがてどの機体からかはわからないが、上空の滑空機から「訪いを歓迎する!」と声がかかった。
どうやら出会ってすぐ戦闘、ということだけは回避できたようだ。
ミラネーロはなるべく乱気流を起こさないように滑空しながら「エリンギ街」に近づいていく。
羽ばたかない竜に安心したのか、1機の滑空機がゆっくりと接近してきた。
「背に乗ってもかまわないか?」
大きな角がついたフルフェイスのヘルメットのような面をかぶった女性の声をした小柄な人物が、滑空機から声をかけてきた。
「構わんよ」
「案内してもらえると助かる」
小柄な人物が操る滑空機はミラネーロの背の上まで進入すると、パタパタと音を立てて折りたたまれていく。その様子にイーロが目を奪われている間に、ヒラリと身軽に竜の背に降り立った人物。
背はイーロの半分くらいしかない。
スタンリーと同じくらいだろうか。
「ほんとうにアンデッドじゃない……! あ、あなたたちはどこから来たと仰ってましたか? 西の最果て、とは、世界地図で言うと『緋水晶大陸』でしょうか!?」
「緋水晶大陸? ……その呼び名は……」
イーロは旧い記憶をたどる。ハイエルフには寿命がなく、何万年、何億年だって生き続けるが、ヒトと近い精神構造を保つため、記憶は旧いものから消えていく。
「すぐには出てこないが、かなり旧い呼び名ではないだろうか? 君たちは、この大陸でどうやって生きてきたんだ? 教えてもらえないか?」
「それはこっちも聞きたい! 僕たちは、『ムッシュラ』以外は全てアンデッドに飲み込まれたものだとずっと思っていたよ! ドラゴンが生きていたということは、神はまた復活されるんだね!?」
フルフェイスの小柄な人物は、興奮しているようだ。
「ムッシュラ……?」
「あっ……ええと、失礼。僕は……」
もそもそと頭をまさぐると、ヘルメットがボトリと胸元に落ちた。
大きな角は、面についているものではなく、その人物の自前だったらしい。
青黒い肌に大きな黒い瞳。髪も乾いた黒髪で、その合間から深い海のように青い角が伸びている。
「僕はコトリ! ムッシュラのギーナ族で……ええっと、他の大陸ではなんて呼ばれてたんだっけな……たしか、マジン? マゾク? うん、神子様がそう言ってたから多分そうだとおもうんだけど」
「神子……魔人、魔族……これは、驚いた。我々は、話すべきことがたくさんあるようだね」
「そうだね! 外の世界のこと、聞かせて!」
イーロとミラネーロはざっくりと状況を説明し、自己紹介をする。
コトリと名乗った人物には、性別がないらしい。
「も、もしかして外の世界では普通に生殖で増えるの!? すごい、すごい! 本当に旧世界が、アンデッドの向こうに存在してたんだ!」
イーロも男性的な体つきはしているものの、生殖で増える種族ではないのだが……。
ミラネーロがゆっくりと「エリンギ街」こと「ムッシュラ」に降り立つまでの間、コトリのとりとめない話をイーロが根気よく聞き入っていた。
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「ケイトリヒ様、イーロから早速報告が上がってまいりました」
「え、ほんと!」
かまぼこのバター炒めに入っていた細かい野菜をせっせと箸でついばんで食べてたところに、ペシュティーノが報告を持ってきた。
味の染みたズッキーニが美味いんだよね。
この世界ではクルジェットって言うんだっけ?
イーロに持たせているのは、タブレット型の通信端末。
帝国では違法になるハイテク通信機器だ。もちろん精霊仕様で、量産不可能な特別機。
ハイエルフは世界記憶そのものでもある竜脈にアクセスできるので本来通信魔法や通信魔道具など必要ないんだけどね。
暗黒大陸はなにせアナログ回線……竜脈がとにかく貧相でブチブチにちぎれてるうえに、かろうじて残ってるところですら二度とほどけないくらい絡まった釣り糸みたいにシッチャカメッチャカらしいので無理。
なのでこの精霊仕様の特別通信機は、ミラネーロが暗黒大陸に進入した経路、つまり空中に一時的な竜脈を仮置きするという、とってもスペシャルで神っぽい手段で繋がっているのだ。
いや、俺としても神っぽさはよくわからないんだけどアウロラがそう言うからさ。
「なんて?」
「……無事、友好的に『エリンギ街』の住人と接触できたそうです。どうやら住人はその街を『ムッシュラ』と呼んでいるそうで」
「よかった! むっしゅら……? む……ま、マッシュルーム?」
「はい?」
「あ、こっちにはないのかな、マッシュルーム。キノコの一種なんだけど」
「聞いたことがありませんね」
住人たちもキノコ状の台地に住んでることは理解してるのかな。
「なかなか衝撃的な報告です」
「おしえておしえて!」
「まず、住人の多くは魔人……ヒト型の魔族だそうです」
「でた、魔人! 魔人じゃなくて魔人ね! へえ、へえ! じゃあクモミさんやヘビヨさんみたいな……あ、でも彼女たちは人造だから違うか」
「ええ、一部は獣人のようにも見えるそうですよ。まだ数人しか会っていないそうなので定義は曖昧ですが、いずれハッキリしましょう。それと、ムッシュラの住人は自分たちの街以外は全て滅びたと思っていたそうです」
「まああれだけ隔離された土地ならそう考えるのも無理ないよね! それでそれで!」
「街には『神子』と呼ばれる人物がおり、これから会うのだそうです」
「みこ」
「……大丈夫でしょうか」
「多分、だけど……異世界人じゃないかな?」
「ふむ……なんにせよ、敵性でないのならばケイトリヒ様が直接赴いても良さそうです。問題は上陸に際して我ら側近の属性崩壊を防ぐ手立て……ですね」
「えっ。に、人数分御護り作れってこと!? あれけっこう大変なんだけど……」
「竜の巣に入ったときのようには参りません。魔導騎士隊は置いていくとしても、側近とハイエルフたちの分だけでも」
「まさかの手芸づけ……」
俺の作る御護りは、以前父上と皇帝陛下にもあげたクモミさんの糸で作るミサンガ的なものだ。組紐とも言う。
ちっちゃなお手々を動かす練習に、とはじめた手芸だったが地道な作業はとにかく時間がかかる。おまけに俺、飽きっぽいし。手芸には正直向いてない。
冒険者修行に国獲りに、忙しい俺にはなかなか作れないキチョーなモノなんです。
とはいえ、お仕事となれば別。
どうも俺の上陸はできそうな方向なので、念の為じゅんびしておきましょうね!
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イーロとミラネーロが案内されて降り立ったのは、「ムッシュラ」街のはずれ、広い畑の間に広がる草原。見たことのない黒い木々と真っ黒の植物が弱々しい風に揺れた。
草原の一部は緑色の草だが、ところどころ黒い植物が生えている。
畑の植物は、葉も茎も実っている果実も全て墨で塗りつぶしたような真っ黒。
ミラネーロはイーロが畑の作物に見とれている合間にヒトの姿に変身した。
ドラゴンはゲーレと違い肉体よりも精神のほうが支配力が強いので、一瞬で変身できる。
ケイトリヒが興味なさそうに「ふうん?」と説明を聞いていたのを思い出してミラネーロは少しニヤける。
「ミラネーロも同じことを考えましたか? この作物は、きっと主の【命】属性不足に効果的なのではないでしょうか。この大陸で育つくらいです、きっとアンデッド魔晶石並に【命】属性が含まれているかと」
「んあ? んん、まあ、そうじゃな」
ミラネーロの気のない返事を気にすることもなくイーロが周囲を見渡すと、少し離れた場所にある雑木林のような木々の合間から四つ足の魔獣がのそのそと出てきた。
ポルキートのようなシルエットだが、木々も獣も真っ黒なので遠目からは判別しづらい。
「【命】属性の属性色は黒……図ったわけではありませんが、ミラネーロと私が訪れるのは彼らにとっても受け入れやすいのではないでしょうか」
イーロは黒い肌に白い髪、ミラネーロは白い肌に黒い髪。
「ふむ、確かにそうかもしれんな……ん」
街の方からやってくる一団に気づいたミラネーロがそちらに身体を向ける。
「あれっ!? ドラゴン様がいなくなっちゃった……? もしかして、ヒトに変身できるの!? えええ、すごーい! あんなに大きなドラゴンからヒトになれるなんてホントのホントに神話のドラゴン様なんだ!」
一団の先頭に立っていたコトリがヒト型のミラネーロを見てすぐにドラゴンの変身した姿だとわかったようだ。
ぴょんぴょんと飛び跳ねるコトリを制したのは、長身の人物。
「あなたは……執行者? そうですか……我らの神成者を……」
「お待ちを。私は確かに神候補を処する権限を持っていますが、あなたたちの神成者を問答無用に処すつもりはありません。あなたは……」
どうやら長身の人物はハイエルフのようだが、イーロには見覚えが無さすぎてそうとわからなかった。イーロと同様に赤みのない黒檀のような肌、染料で染めたかのように鮮やかなブルーの髪は長く腰まで伸びている。瞳は髪と同様に鮮やかな青色だ。
「……それを聞いて安心しました。私は教導者。エルシ・プラエセプトル・リュフタ。そしてまたの名をヤミ・サルヴァートル・テルヴォ……こう言えば、私が何者かわかりますね?」
イーロは思わず後ずさった。
「2つの名……まさか、融合を?」
「この大陸でハイエルフとしての権能を維持したまま生きながらえるには、それしかなかったのです。……『交感』は、しばらくおすすめしません。もしもこのアンデッドの向こうに旧世界が在り続けたというのなら、私の記憶はあまりにもこの世界で特異です」
ミラネーロがエルシとイーロを交互に見つめる。
「特異だからこそ全部共有したほうが話がはやいのではないか?」
「それも……一理ありますが、私と教導者の間には共通記憶が少なすぎるのです。もしも今『交感』してしまえば、私か教導者……どちらかが上書きされてしまうかもしれません」
教導者ことエルシがコクリと頷く。
「その通り。ご理解いただけて何よりです。ハイエルフにとっては非効率に思えるかも知れませんが、まずは会話による意識のすり合わせから始めましょう。私たちはあなたたちに、あなたたちは私たちに聞きたいことも知りたいこともたくさんおありでしょう」
エルシの後ろにゾロゾロと並んでいる人物は、エルシの態度に従っているようだ。
ミラネーロに対してもイーロに対しても敵意を向けるものはおらず、期待をはらんだような目つきで興味津々。
それも当然だ。この街以外はすべて滅びたと言われていたのに、未知の大陸からやってきた異邦人。敵意も害意もなく、話をしたいとやってきたイーロたちに興味が湧かないはずがない。
「その前に、私の立場を今一度しっかりご説明したい。私には、教導者……あなたとは別の神成者の主を持っている。その御方の名はケイトリヒ・アルブレヒト・ファッシュ。精霊神にゲーレ、ドラゴンを眷属に持ち、いずれ西の帝国の皇帝となる御方。そして権能は既に4つを持ち、段階も飛び石ではあるが3分の2を解放していらっしゃる」
「おお……そうでしたか。そこまで神力を開花させているのならば、その御方が次代の神になるのは、もう間違いないでしょう。ということは、あなたたちの目的は我らの神成者様の『創造』ですね」
「……我が主は心優しく無益な死を嫌う。できれば穏便な方法で権能の譲渡をお願いできないか話し合いたい」
「無益な、死?」
エルシは突然、弾かれたようにビクリと身体を震わせた。
後ろに控えている人々も、信じられない言葉を聞いたように顔を見合わせている。
その反応に、イーロもミラネーロもハッとなった。
ここは、暗黒大陸。アンデッドはびこる【命】属性が支配する大陸。
「本当に、あなたたちはアンデッドのいない世界からいらしたのですね」
「いえ、西の帝国にもアンデッドは存在します。が、組織的、効率的に殲滅され支配権は完全に生者にあります……我々から見たらあなたたちは我々と変わらぬ生者にしか見えませんが、もしや……」
「我々がアンデッドかと聞かれたら、判断の難しいところですね」
エルシは苦々しく笑う。
「……詳細は、街を案内しながらご説明しましょう。もちろん、我々の神成者様とも是非お会いください。あなたの仰る『無益な死』が……我々にとって何を意味するのか、言葉ではなく体感として理解していただきたいと思います」
ミラネーロはこの時点で既に、ある風景が思い浮かんだ。
ロムアの街。神の罰を受けてしまったがために7億年ものあいだ死ぬこともなく生きるしかなかった民。あのときシャルルは「数千年も生きればヒトの魂はヒトでなくなってしまう」と言ったはずだ。
しかし、教導者の後ろで目を輝かせている人々は容貌こそ違うが、ドラッケリュッヘンで見た人間と大差ない。
彼らの精神構造には大きな違いは無さそうに見える。
「……このムッシュラは、一体どれくらい前から世界から隔離されていたのか」
イーロのつぶやきに、エルシが悲しげにニコリと笑った。
「その問いに応えるためにも、どうぞ街へお越しください」
ミラネーロとイーロは顔を見合わせ、深く頷く。
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ミラネーロとイーロが暗黒大陸に渡って、3日が過ぎた。
逐一入る報告は、だんだんとわけのわからないものになっている。
側近会議で届いた報告を共有するけど、みんな首を傾げるばかりだ。
「ハイエルフの教導者と救済者が融合……?ハイエルフってそんなスライムみたいなことできるの」
「スライムに例えないでください。そういうコトができるという話はどこかで聞いたことがあるような気がしますが、存在を確認したのは初めてです」
シャルルも報告書に目を通しながら、ときどき眉をひそめている。
たぶん、シャルルにとっても意味わからん、だよね。
「街は『創造』の権能を持つ神成者によって『時間軸を別に設定』されている……? それってつまり、どうなるんだってばよ?」
説明を求めて呟いても、シャルルもペシュティーノも誰も応えてくれない。
「それも気になりますが、このムッシュラの街……技術的に奇妙に発展しているという点も興味深いです。ケイトリヒ様の鉄道事業に活かせるのでは?」
ガノの着目点ってだいたいそういうとこ!
ブレないね! だがそこがいい!
「イーロは……暗黒大陸の神成者、つまり異世界召喚勇者に会ったようですが、人柄や思想については全く触れられていませんね。それに……権能を明け渡すという意思は理解できましたが、方法はどうしたものか」
ペシュティーノが長い指を顎に絡ませる。
「名前も性格もわかりませんね。まあ、『ナナト・カワグチ』って名前からして日本人には間違いなさそうですけど」
レオも資料を読み込んでいたようだが、ちんぷんかんぷんだと言うように座ったまま伸びをした。
「魔人の定義についてもあまり進展はないですね。定義しようにも個人差が大きい、とだけしかありません。個人差がどの程度の差を指すのか……獣人と何が違うのか……生態や思想はどうなのか。2、3日ではまだわからないのかもしれませんが……」
オリンピオが報告書を睨みつけながら言う。
たしかにそれも気になる。魔人って一体何。魔族って何。っていうね。
「なあ、ここでウンウン唸るよりとっとと行っちまったほうが話が早いんじゃねえか? イーロも『属性崩壊対策を講じたうえで早急にご訪問を』って言ってるし」
それがね、俺の手芸の進行次第なんだよね!
暗黒大陸上陸のボトルネックが、まさかの俺の手先の器用さと集中力というね!
子どもにあんまりなこと要求するよね!
「とりあえず危険は無さそうだし、政治的なしがらみも特に無いから父上や皇帝陛下に話を通す必要もないし……御護りが完成次第、向かおうか」
俺の言葉に、側近たちが頷いた。
暗黒大陸……もう、行くしかない!
2025年も最終日。
いつも読んでいただいてありがとうございます!
まだ199話ですが、年末なので200話記念SSを一足先に順次公開します。
是非お越しください〜!
【1話完結短編集】白石英の玉座 SSひろば
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