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第2部_4章_198話_精霊王爆誕_3

「どうすりゃいいのこれ」


衝撃が過ぎてそんな言葉しか出てこなかった。

大陸全土が、東京の満員電車なみのぎゅうぎゅう詰めアンデッドで覆われた土地。

それが、暗黒大陸。


いや暗黒にもほどがあるやろ!!


「アンデッドホイホイを設置……?」


「大陸と同じ大きさのアンデッド魔晶石ができますね」


たしかに! 保管どうする問題!

暗黒大陸がアンデッド魔晶石大陸になるだけやんけ!

まあでも魔晶石はヒトを襲わないので最悪そういう手もあり。


「んんん。デーフェクトス!」


「お呼びでしょうか」


俺の背後に、大きな白い布が現れる。

ここ最近大活躍のデーフェクトス先輩だ。相変わらず5メートルくらいあるけど、アンデッド海岸で見た数十メートルの塔みたいな姿でも「まだ抑えてる」というくらいだから、配慮せずに出たらどれくらいになるんだろうね。


通称「玉座の車輪」と呼ばれる会議室で、側近全員とハイエルフ組のイルメリ、イーロ、グルシエルにセヴェリ、そしてネフェルタ。

もう国主になっちゃったもんだから、セヴェリが持つオルビの街への影響力とラウプフォーゲルの微妙な関係とかどうでもよくなっちゃったね。グルシエルも同様。

おかげでもう彼らハイエルフ組は、完全にデオスレア聖教国の一員として俺の側近の一部になっている。


「この大陸どうすりゃいいの」

「……『予見』を使ってこの大陸のことを知るじゃろうと思っておりましたが、こういう方法があるのですなあ。ふむふむ、主の【死】魔法をもってしても、この大陸のアンデッド討滅は困難じゃろうの。主はまだニンゲンの肉体に縛られる存在ゆえ……」


「で」

「神になるしかありませんなあ」


「それ以外で」

「……難しいことを仰る」


暗黒大陸は、この世界でバランスを崩して増えすぎた【命】属性を集めた土地。

誰が集めたのか、という問いには「おそらく」精霊だろうという話。


もしも【命】属性が暗黒大陸に集められていなかったら、世界はやんわり滅びていただろう。世界崩壊を避けるためアンバランスの一部を一箇所に集中させてより早く壊滅させ、他の多くを残すことで次なる神を待つまでのつなぎとした。

そういう、世界の延命措置のひとつなのだそうだ。


「まって。そういえば、僕の【命】と【死】のバランスが崩れてるのは、【死】が多すぎるからだよね。この世界で足りない【死】属性と、僕の中の多すぎる【死】属性の総量ってもしかして等しい?」


大きな布の塊がゆっくり首を傾げる。


「総量……わからんのう、そこまではさすがに。世界記憶(アカシック・レコード)の領分じゃろう」


ダメか。


「シャルル、わかる?」


「……いえ、そういった世界の真理に関わる疑問に対する答えは引き出せません。あくまでハイエルフは神候補を神にするべく立ち回る機構です。神になればケイトリヒ様ご自身で接続し放題ですよ」


無料Wi-Fiみたいなセールストークをするんじゃない。


「ヒトの身でできることには限りがあります。どうです、この際、暗黒大陸に行く前に神になってみては」


神って散髪に行くくらいのノリでなるもんじゃないでしょ。

でも現状でその程度のノリでなれるもんなのだろうか。


「……暗黒大陸をどーにかするには、神になるしか方法ない?」


俺の言葉に、カッと目を見開いたのはシャルル。想定内の反応。


「かっ……神になる以外の方法となれば、今のところ考えうるのは例のホイホイとケイトリヒ様ご自身での【死】魔法による浄化……どちらも大陸全土を網羅するには膨大な時間と手間がかかるでしょう」


ソワソワしながらいつもよりちょっと早口のシャルル。

俺が神にたいして前向きな発言をしたので畳み掛けたいけど、自制してる感じが丸わかりである。


「じゃあだいぶ棚上げしてたけどさ……『メディウム・ステラ』ってどこにあるの」


【死】と【命】の精霊神、デーフェクトスとエンブリュオンに名を与えたときに聞いた言葉。「世界の中心、星の軸、全ての竜脈の源泉、『メディウム・ステラ』へ来たれ」という言葉を聞いてすぐに、俺は世界地図の島を思い出していて「多分ここやろ」と目星がついていた。


この世界に現存する世界地図は、古代の伝承から写し写し、代々引き継がれて描かれているもの。前世みたいにちゃんと測量したわけでもなければ宇宙船からこの星を俯瞰したものでもない。


前世であれば、日本製の地図はだいたい真ん中に日本があるような、太平洋が中央にある地図となる。そして欧米の地図はだいたい、大西洋が中心となった地図だ。大西洋中心の地図だと日本はユーラシア大陸の一番端、東の果てとなり「極東」と呼ぶに相応しい位置となる。

このように、地図というのは制作者の目線で変化するのが普通だ。


だが、この世界の世界地図はどれも同じ。

地図の真ん中には不思議な形の島があり、その西にはクリスタロス大陸、その南にヴィントホーゼ大陸。中央から南側にはドラッケリュッヘン大陸。中央から北には細かな諸島とドワーフ大陸と呼ばれる島。そして中央から東側には暗黒大陸。


ゲームのマップにするなら「ここ絶対なんかあるやろ」という島が世界地図の中心にあるのだ。そしてその島は、クリスタロス大陸とドラッケリュッヘン大陸の間くらいにある島であるにも関わらず、完全に情報がない島。

距離的にはドラッケリュッヘン大陸と大差ないのに船から見た図なども存在しない。


こういうところがこの世界の、魔法的なところなんだよね。


この島にはバリアのように、近づくと必ず流されるどころか木造の船なら簡単にめちゃくちゃに壊れる鉄砲水みたいな潮流があるんだそうだ。船を進み入れなければわからず、潮流に入り込んでしまえば脱出不可能。つまり海路での到達は不可能。


「ここでしょ?」


俺がテーブルに表示された世界地図の真ん中の島を指差すと、側近たちも「だろうな」みたいな顔で頷く。

高いとこから落としたショーユのシミみたいに放射状に広がった形のその島は、海岸線だけはハッキリと描かれているものの地図内では「完全未調査大陸」と記されている。


地形も気候もわからず、上陸の記録が一切存在しない陸地のことだ。


ちなみに暗黒大陸も同じ。

ただ、今回魔導騎士隊(ミセリコルディア)が上空から調査したのでその記載から外れることになるだろう。


ついでに説明するとネコ神ナラシンハが教えてくれた「ドワーフ大陸|(仮称)」については「完全」ではない「未調査大陸」。

上陸の記録がある大陸でなんらかの集落の形成も確認できている。


「……そこで合っています。トリューを使えば、すぐ到達できるでしょう……が」


シャルルがソワソワしながらも自制するように言葉を飲み込みながらゆっくり言う。


「その島には、かつての神が制御しきれずその島に閉じ込めるしかなかったあらゆるものが封印されています。危険度でいえば、冒険者修行や遺跡での迷子などの比ではありません。神候補に対し明確な殺意をもって襲ってくる危険な魔獣やニンゲン、そのほか今のこの世界では失われた色々な危険が残っています」


「ちょっとまとめ方が雑すぎん? てか、ニンゲンいるの?」

「いますよ」


「村とかある?」

「それはありません」


村がないのにニンゲンがいる? どうやって生きてるんだろう?

まあそれはいいや。


「トリューで上陸すれば、そういう危険なのは無視して目的地のメディウム・ステラに到着、ってならない?」


「まあ、ドラゴンが6体も眷属になっている時点で島での覇権は間違いないのですが……問題は襲撃者だけでなく、主の状態も関係します」


そう言うと、シャルルは深刻そうな表情をしてひとつため息をついた。


「今の主であれば問題ないでしょう? 幼いながら、精神は安定していらっしゃいます」

「どうかなあ、人身売買に関わると少し様相が変わるところあるよね」


イルメリと、グルシエルだ。


「それに主にはこの世界に愛するもの、信頼するものが多くあります。心配ないかと」


イーロだ。


「不安はありませんが、心構えはしていただかなければ不要に傷ついてしまうかもしれません。使徒(アポートル)……いえ、シャルル。どうぞ丁寧にご説明を」


セヴェリ、わかってる。

話の内容からして、問題は俺の心にクるものなんだろう。

倫理的なアレとか、道義的なアレとか、そういう。


「お優しいケイトリヒ様にとっては、あの島の存在はそのものが許せないに違いありません。あの地は、ロムアの民やワイバーンのように、『神に呪われたもの』……それに『神がその存在を許さなかったもの』……その他、目を覆いたくなるような存在が多く在るのです」


目を覆いたくなる存在ってなんだろう。


「たとえば?」


「……かつての神が乞われるままに与えた恩恵のせいで、永遠の命を手に入れてしまった魔術師、とかですかね? これは呪いではなく名目は恩恵ですが……結果的には呪いと大差ないです。数千年も生きれば精神はもうヒトのものではなくなり、魔力に反応するだけの謎の生命体と成り果てました。そういったものがたくさんあの島にはあります。触れないでいただければそれに越したことはありませんが」


触れた時のショックを考えてくれてるのね。

確かに事前通告はありがたいっちゃーありがたい。


「魔人兵器とかね」


グルシエルが言う。

クモミさんやヘビヨさんのような、兵器として創られた生命体のことか。


「あとはヒトが作り出して神が認めた邪神とかかしら」


イルメリがサラリと言うけどそれヤバくない?


「信仰する存在がなければただの無力な神ですよ。今の主のほうが神性は上でしょう」


「たしかに解放できないパンドラの箱みたいな島だね」


「ぱんどら……?」


ペシュティーノが俺の言葉を拾ったので説明すると、「興味深い逸話です」といってそれ以降、その島の名前は「パンドラ島」になった。

まあわかりやすくていいけど。


「で、僕ってそのパンドラ島のメディウム・ステラにある白の玉座に行けばもう神になれるってこと?」


「いえ、今少し不足が。1つは神の権能、『創造』ですね。暗黒大陸に存在する異世界召喚勇者に宿っているとされています」


「暗黒大陸に上陸するために神になんなきゃいけないのに、神になる前条件が暗黒大陸にあるってこと!? 詰みじゃん!」


「いいえ、上陸だけであれば神になる必要はありません。暗黒大陸のアンデッドを駆逐するために神の力が必要だと言うだけで」


「あそっか。て、いうかあのアンデッド大陸に、異世界召喚勇者がいるってこと?」


情報表示インフォメーション・オープンでたしかに赤い点は見たが……。


「それが衝撃の報告の2件目です」


ペシュティーノが再び、テーブルに暗黒大陸の空撮写真を映し出す。


「平地、水辺、砂地……人が直立できるであろう土地は全てアンデッドが覆い尽くしておりますが、とある山岳地帯の隔離された高原に、国の存在を確認しました」


「国!?」


俺と数人が同じように驚いた。

こんな、アンデッドが地面を覆うような土地で人間社会が構築できんの!?


「ご覧下さい」


真上からの空撮ではなく、やや横からのアングルの空撮画像。遠目から見ると、キノコ型になった台地に人口建造物らしきものが見える。

台地から生えたでっかいエリンギの傘の上に、山があり、川が流れていて、人が住める大地が残っているようだ。

草原には四つ足で走る動物……いや魔獣っぽい生き物の群れも見える。


それらの下に広がるアンデッドで埋まった地面を考えなければ、のどかな風景だと思うことだろう。

この土地は、おそらくこの大陸に残された最後の楽園なんではないだろうか。


「川が……畑も見えますね」

「生き物がいます」

「こんな狭い区画で、生命活動が営まれているとは……!」


「それよりも、この街……やけに機械的じゃない? なんだか、文明度が違うっぽく見えるんだけど」


遠目から見たエリンギ街は、超大型のクレーンのようなシルエットや飛行物体のようなものまで見える。


「その通り。高高度からの空撮は察知されそうでしたので、遠方から横視点での空撮のみとしております。まだ敵性かもわかりませんので。ヒトが住んでいることは間違いありませんが、その『ヒト』が我々と同じ人類なのかもまだ確認できておりません」


空撮画像を指先で操作してクローズアップしていくと、畑を耕すヒトの姿が確認できる。


そのヒトは、麦わら帽子のようなものをかぶってゆったりした服を着ているので農夫なんだろうとわかるけど……頭にどう考えても邪魔そうな大きな耳か、角のようなシルエットがあった。


「耳? 角?」

「わかりません」


ジッと眺めてもわからない。


「……暗黒大陸に、精霊は……」

「いない、絶対いない」


「ハイエルフは?」

「我々が確認できる限り、いる可能性があるとしたら2人。数千年前から姿を見た者がいない救済者(サルヴァートル)教導者プラエセプトルでしょう。どちらも神の権能における『創造』の指導者ですので、彼の地の異世界召喚勇者に『創造』の権能が宿っていることも納得できます……正規の手法で取得しているのであれば、ですが」


カブールが「神が現れないのなら作ってしまおう」という思想だったがために、リクはとんでもない非人道的な扱いを受けた。


暗黒大陸ではどうなのだろう。

異世界召喚勇者がいることは間違いない。

そしてハイエルフもいる。

「創造」の権能を持った神候補もすでに存在する。


「もう一つ気になることが」


側近会議には似つかわしくないシェフコートのレオが、いつになく険しい顔で発言する。


「異世界人関連?」

「はい。ケイトリヒ様に見せていただいた情報表示インフォメーション・オープンの赤い点。なぜか暗黒大陸のものだけ、やや薄くなかったですか?」


そうだっけ?と俺が首をひねり、「情報表示インフォメーション・オープン」と呟くと空撮画像と同じようにテーブルに世界地図が映し出された。

精霊製、俺の見ている映像を投影できる特殊なテーブルです。


「……たしかに、帝国にいる異世界人たちの赤い点よりも、暗黒大陸にある点は……薄いというか、霞んでいるように見えますね」


「こういう情報って竜脈から得てるんだよね? 暗黒大陸の竜脈が乱れてるからじゃないかな?」


俺の中では、竜脈って要は天然のインターネット回線。

精霊の力で伸ばしたり整えたりすることができて、土地の力が弱ると消えていく。


竜脈が正常で長くラーヴァナの管理下におかれ、世界の最終防衛線となっているクリスタロス大陸は光回線。整備されていて、最高速度を持っている。

そして精霊の力が微妙に弱りかけていて、管理者が存在しなかったドラッケリュッヘン大陸やヴィントホーゼ大陸は雑多に伸びたADSL回線。イシスに手を入れてもらって段階的に光回線へ整える必要がある。

そして暗黒大陸は、ろくに画像をやりとりもできない古いアナログ回線と思えば納得。


「俺にはすっげえわかりやすいですけど、この世界の人は全然わかんないでしょうね」


レオが感心した。

俺もネット詳しいわけじゃないけど、これくらいならわかる。


「僕の仮定の裏付けとして、この霞んだ赤い点だけは名前も状態もわかんないんだよね。ドラッケリュッヘン大陸の異世界召喚勇者は段階的にわかったのに」


「そして、おそらく暗黒大陸の異世界召喚勇者にも情報表示インフォメーション・オープンは失伝してるってことなんでしょうね。知ってたらきっとアンデッドひしめく大陸でずっと助けも呼ばずに暮らしてないですよ」


レオの言葉ももっともだ。


「緊急地震速報の手法で、強引に異世界召喚勇者にだけ連絡を取り付けるという荒業もあるけど……もしもドラッケリュッヘンのように社会的にピンチだった場合、僕たちからのコンタクトが命取りになってしまうこともあるかもしれない」


悩ましい。


アンデッド大陸にすむ謎の人類と、正体不明の異世界召喚勇者。

謎の街、謎の社会。


「謎だらけですね」

スタンリーがため息をつきながら言う。


「なんにしても、なんとか驚かせないような形で交流を持ちたい」


俺が言うと、全員が肯定するように頷く。


「こういうときこそケイトリヒ様の眷属を……ゲーレか、ドラゴン、ハルプドゥッツェント……あるいはカッツェでも、ワイバーンでも。あの台地にいそうな生き物に似た姿を持つ眷属がいらっしゃれば、様子を探れるのではないですか?」


「あ、それいいかも! いきなりヒトじゃなくて、使いをよこすみたいな?」


「ふむ……ではその役目、儂が買って出ようではないか」


腕を組んで目をつぶって寝てた?感じのミラネーロがむにゃりと口を開いた。


「暗黒大陸のように崩壊寸前の土地で、まともに活動できるのは儂らドラゴンくらいじゃろうて。それに翼を持たぬ獣では荷が勝ちすぎる」


「何を言う! 我らゲーレは主に長く連れ添う第一の眷属。移動には確かに助力が必要であるが、それさえ超えればドラゴン以上の働きをしようぞ。我らはヒトに愛される見た目をしておるし、イヌ型魔獣はどの土地にでもおる。きっとかの土地の人類を威圧することもなかろう!」


俺の足元にいたコガネが立ち上がって肉球の前足をテーブルにかけて言う。


「それも一理あるね」


「いや、主。その助力が問題じゃ。暗黒大陸を調査した魔導騎士隊(ミセリコルディア)隊員に、問題はなかったのかえ?」


ミラネーロの言葉にオリンピオがギクリと肩を震わせた。


「……いま、発言しようと思っておりました。ケイトリヒ様、これ以上魔導騎士隊(ミセリコルディア)を使った暗黒大陸調査はしばしお控え願いたい。精霊様の加護でなんとか無事に帰ってまいりましたが、暗黒大陸調査後はほぼ全隊員が体調不良を訴えております」


「『死人病』と同じ状況だね。あまりにも【命】属性に偏りすぎた環境に身をおいたせいで、肉体に異変が起こるところだった。僕たちが保護していても、あの大陸の異常さを全て防ぐには足りないみたい」


ジオールの言葉に、青ざめる。


「た、隊員はぶじなの!?」

「全員、全快済みです。2、3日休めばもとに戻るようで」


オリンピオの返事にホッとする。

魔導騎士隊(ミセリコルディア)ホワイト宣言をしているので、危険な任務地への派遣はもう絶対にさせたくない。


「その2、3日の間に儂が処置を施しておるのだがな。儂の処置がなければ、3ヶ月から半年は寝込むことになっただろう。ヒトの【命】と【死】属性の均衡崩壊はわずかでも命に関わる」


背後にいたデーフェクトスがボソリと言う。


「隊員を守ってくれてありがとう、デーフェクトス!」


笑顔で振り向くと、デーフェクトスはおじいちゃんみたいに「フォッフォッ」と嬉しそうな声を上げた。


「ミラネーロであれば、危険はないんだね?」


「属性均衡の崩壊についての影響は問題ないでしょう。万一、その未確認の国の人々が我々人類にとって敵性であっても、ドラゴンが相手となればすぐに敵意を示すこともないはずです」


シャルルが言うと、ミラネーロも頷く。


「……わかった。じゃあ、ミラネーロを派遣しよう。他に誰かつれて行く?」


「そうじゃな……ハイエルフを借りたい。もしも交流が必要になった場合、儂は説明があまり上手くないからのう」


「では情報収集役として、わたくしが」

イーロが手を上げた。

シャルルにグルシエルが心配そうに顔を見合わせている。


「ハイエルフは属性の崩壊の影響は?」

「ヒトと同程度でしょう」


「え、それマズいじゃん。えっと、デーフェクトス?」

「うむ。主の命令とあらば加護を授けることも吝かではない……が、儂の加護は呪いにもなりうる。なにせ【死】の加護じゃ」


「うーん……何か、御護り(アミュレット)みたいな形にしてイーロに持たせるとか?」

「主が手ずから作り上げた御護り(アミュレット)であれば、儂の加護も乗せやすい。それがよろしいでしょうな。うむ、素晴らしい案ですぞ、主」


デーフェクトスから褒められた。

うん、いい結論がでたと思う。


「では僕の御護り(アミュレット)が完成次第、イーロとミラネーロを暗黒大陸に調査派遣するということで、けってい」


俺が言うと、その場にいた全員が俺のほうを見て頷いた。


形式は決まってないけど、みんな俺に従ってくれる優秀な部下と眷属たち。


「最終目標は、暗黒大陸の国家との交流ではありません。あくまで調査としてどういうものかを把握しておきたいだけでしょう。ケイトリヒ様、暗黒大陸の最終目標は」


ペシュティーノに聞かれ、ハッと思い直る。


そうだ、暗黒大陸にある国家は正直、副次的な目的。

俺の本来の目的は……。


「メディウム・ステラに到達して、神になるために異世界召喚勇者の『創造』の権能所持者に会う。そして、最終的には……大陸のアンデッドを全て駆逐し、イシスのように精霊王を置く。これが最終目標かな」


俺の言葉に、精霊たちとゲーレ、ミラネーロたちも満足そうに頷いた。


「暗黒大陸にはまだ見ぬ資源もきっとあることでしょうしね……」


ガノがぽつりと呟いた言葉が、今日イチ胸を弾ませたことは内緒だ。

200話目前、クリスマス記念SS公開中です

【1話完結短編集】白石英の玉座 SSひろば

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