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第2部_4章_197話_精霊王爆誕_2

「レトルトのカレーにシチュー、肉じゃがにポトフ……もうこんなにメニュー展開されてるの!? しごとはやすぎ!」


ルーメン・ヘリカ()の調理室はレオの希望でセンターアイランドのシステムキッチン。

俺の冒険者修行にまでついてきてくれたレオの弟子たちは、冒険中だと3〜4人が交代制で城馬車(ホッホブルク)に乗車して時々食材採取なんかもやってたみたいだけど。

塔の料理人は冒険の必要がないので、冒険を希望しなかった弟子たちがまとめてやってきた。


さらに、一部のやる気ある市民が塔での労働を希望しているので何人か料理人として雇ったらしい。


グラディアーク要塞都市では、絶賛「都市内商業活性化計画」を進めちゅう。


いわゆる完全社会主義だった旧体制から、ちょっとずつ資本主義に切り替えるつもりなんだけど、あまり大きく改革しちゃうと混乱するからほんとにちょっとずつね。

社会主義って別にこういう世界じゃ悪くないと思うんだけど、それにしてもこれまでは市民が持つ権利も義務も人権も無さすぎた。


そんなわけで都市では今「就職」が大流行中。

どういうこと?と思うけど、これまで聖教が担っていた全ての事業を、開業希望者に段階的に移譲しているのだ。いわゆる民営化。


その中には手始めの分野として食品系と、製造系。

都市に店を構えるような事業を優先して民営化していく。そうすれば市民にとって目に見えて社会が変わっていくんだ、っていうビジョンが描けるでしょ、というわけ。


「ケイトリヒ様、レトルトは煮込み料理だけではないですよ。生姜焼きに焼肉丼など、少し汁気のあるタレっぽい焼料理もラインナップされています。こちらの回鍋肉(ホイコーロー)魔導騎士隊(ミセリコルディア)での試食コンテストで1位を獲得した出来でして!」


レオの製品説明が続いている。

加工食品の開発がレトルト寄りなのは、当然父上の鶴の一声だ。

もちろん目的は兵站の食糧事情改善。マズい携行食はほんとうに兵士たちの士気を下げるということに父上は気づいていて、携行食の研究には補助金を惜しまなかったそうだけど目立った成果はこれまで出なかった。


レオのレトルトが一気に携行食のレベルを押し上げたので、父上もホクホクらしい。


生姜焼きに焼肉丼、回鍋肉(ホイコーロー)と肉肉しいメニューもまたラウプフォーゲル軍の兵士たちに合わせたものなんだろう。


試食として一口ずつたべたけど、前世の市販品ではありえないくらい肉多め。

前世の価値だとレトルトなのに一食かるく2千円越えそうなくらいのボリューム。

レトルトのパウチも、やたらでかい。大きな肉がゴロゴロ入ってるので、大きくしないと間に合わなかったらしい。


「味はほんとに美味しいね、レオの料理そのものだ」


「はい、兵士たちからの声で普通の食堂より美味いと評判で! いやあ、嬉しいですねえやっぱり美味しく食べてもらえるっていうのは〜! あ、それに合わせて一般家庭向けに料理の『モト』を開発しまして」


レトルトは兵站向けの公共事業がメイン。

そして一般向けには、いわゆる「回鍋肉(ホイコーロー)のモト」とか「生姜焼きのモト」となる調味料だ。


レオの料理はすっごく美味しいんだけど、それを一般の人が再現するにはあまりにも材料が難しい。ラウプフォーゲルではスパイス類は較的入手しやすいけど、醤油はかなり限られた地域で似たようなものがあるだけ、それにソースやケチャップ、マヨネーズなどといった調味料は似たようなものすらない。

スパイスも入手しやすいとはいえ一部でしか流通しておらず、ニンニクすら簡単には手に入らない素材だ。


そもそも多様な調味料に慣れていないので醤油とニンニクを組み合わせるという発想すらまだ難しい市場に、いきなり醤油を売り出してもあまり効果はないだろう。


なので「これ一つで王子の料理人の味!」という調味料のモトを作ったのだ。

この味を覚えてもらって、意欲あるひとやニーズが高まれば自然と調味料に関連する需要が増えて、そうなれば原料となる作物を生産したいというヒトも増えてくるはず。


特に今回の事業で大きく生産量を伸ばしたのはショウガとニンニク。


ここはフォーゲル商会の農業部門と連携していて、ショウガとニンニクは生産を希望する農家に格安価格で苗を販売し、ラウリによる農業指導までついているそうだ。

このへんは複合企業(コングロマリット)と公共事業を手掛ける公爵子息ならではだよね!


「レトルト部門は既に工場の増設が各地で検討されています。トリュー工場を逃した領がこぞって手を上げていて、選び放題ですよ」


ガノが報告書を手に補足しながら、生姜焼きのサンプルをちょっと必要以上に試食している。美味しいんだね。もう食べちゃえばいいよ。


「畜産関係も、ムームに続きポルキートの飼育実験が始まっています。ラリオールクックは少々難航しているようですけど……きっといつか安定供給できると思います!」


レオが嬉しそう。牛肉の代わりになるムームに、豚肉の代わりになるポルキート、この2つは前世とさほど飼育の条件が変わりないので事業化の見通しはたつんだけど……。


ラリオールクック、これはまあ難しいだろうね。

この世界の生き物は地球と似たものも多いとはいえ、どれもこれも大きい。

しかしラリオールクックについては別格だ。地球ではニワトリといえば40センチくらいだったと思うけど、こっちじゃ5、6メートルあるっぽいもんね。10倍。しかも凶暴。ちょっと品種改良しないと無理かも。


魔導学院でラリオールクックの家禽化に興味ある生徒と話をしたけど、まあ簡単ではないはずだ。これは精霊の力を借りたほうがよさそう。


「うん、食料関係はもうフォーゲル商会とレオにまかせて問題なさそうだね。ラリオールクックの家禽化は、精霊の協力をあげたほうがいいかも。近いうちに鳥の巣街(フォーゲルネスト)の研究所に派遣させるよ。じゃあ、鉄道については追加報告ある?」


「そうですね、予定通り開通した海岸線沿いの鉄道は、公共放送(エフ)での宣伝効果もあって乗車チケットは発売と同時に即完売、終着駅のウンディーネ領はこれまで経験したことのない好景気に湧いています。そしてそれは全て、ケイトリヒ様から得られた恩恵であることは領主自ら喧伝するほどの忠誠ぶりです。どうです、あの地もケイトリヒ様の支配下にしては?」


「いや、そゆのいいから。結局、クラーニヒ領とブラウアフォーゲル領にも駅、つくったんだね」

「ええ、駅の建設費用はすべて領から出させましたから、フォーゲル商会には特に不利益はありません」


そういうとこちゃっかりしてるー。


鉄道の開通により、ラウプフォーゲル在住のお金に余裕のある貴族や豪商たちはこぞってウンディーネ領への観光を希望した。

ドラッケリュッヘン大陸に向かう途中で寄ったとき聞いた「水の平原」は観光名所となったが、別荘地を新設する案も出ているそうだ。

今までの交通手段、馬車であれば1ヶ月から1ヶ月半はかかる道程が、わずか2日で行けるとなれば足を伸ばしたくなる気持ちも当然だ。


そしてウンディーネからは、特産品である良質な白蝶貝製品が続々とラウプフォーゲルに運び込まれた。ラウプフォーゲルまでやってくれば、帝国中にひろがるのは簡単。

貴族たちはこぞって白蝶貝のボタンや螺鈿細工の小物、アクセサリーなどを買い漁り、新しい製品を求める声も高まる。

ウンディーネ領の経済の夜明けといってもいい時代に突入したわけだ。


「これは領主の概算で、まだ確実ではない話なのですが……ウンディーネ領の税収は去年の4倍になるという計算も出ているそうですよ」


「それだけあれば白蝶貝の細工師たちも潤うねえ。いいこと、いいこと。」

「はい、ケイトリヒ様の提唱した『ふぇあとれーど』がウンディーネ領の技術者や漁師たちにとても好評で。事実上、フォーゲル商会の一括買上げ状態です」


フェアトレードは新しい仕組みでもなんでもないただの概念だけど、そういう言葉をちゃんと知っていれば生産者たちは搾取しようとしてくる仲介業者に対して交渉できる。

価格は適正か? ムダに釣り上げてないか、ムダに買い叩いてないか。

このあたりのバランスが崩れると、どんなに「濡れ手に粟」状態の産業でも長くは続かない。


短期でがっぽり儲けるよりも、長期的に安定した利益を得たい堅実派なのです。



食品事業も鉄道事業も、順調、順調!


さて……ご機嫌な報告を聞いてから、気の重いお仕事に移ろう。


場所を変えて、謁見室。


神成者(ディフィカトゥス)様へのお目通りが叶いまして光栄にございます」


ドラッケリュッヘン大陸最大のエルフの里、|セーブル・ド・サフィール《サファイアの砂》の里長であるサムリさんと、オルビの港町で会ったグウェナエル、オーブリー、そして戦闘職と思われるエルフ数名。


法国とは敵対していたので、その本拠地だったこの要塞都市へやってくるのは勇気が要ったことだろう。


「|セーブル・ド・サフィール《サファイアの砂》ではもっとフランクに話してくれたのに、淋しいな。サムリさん、今まで通りでいいよ。僕がこの国を落として国主になったのはやむを得ない事情があっただけで……」


サムリさんとオーブリーが力なくニコリと笑った。


「こんなにも早く法国を解体させてしまうとは、やはりハイエルフ様が認めし主であるからこそ。どうか我々の敬意をお受け取り下さい」


グウェナエルは硬い表情のまま変わらない。


「……すでにあらかた、説明は聞いてるんだよね」


「はい……」


サムリさんが目を伏せて苦痛に耐えるような表情で答える。

無理もない。


200年前から続いていた、里のエルフの失踪。

その結末は、彼らにとって最もツライものとなった。


「遺灰や遺骨などがあればよかったんだけど……どうやらそれらも、その……」


「ええ、わかります。魔力あるものの遺灰も遺骨も、禁術を使うのならば有益な『媒介』となりましょう」


「サムリはその禁術について、何か知ってるの?」


「ええ、少しだけ。失踪が始まる200年前より以前は、ハイエルフのブノワ・カブール様……いえ、あの外道とは少なからず交流があったのです」


サムリの怒りも最もだ。

良い隣人のふりをしながらエルフをさらい、命を奪って利用していたのだから。


「カブールはその名を奪われ、存在が消滅しました。今は仲裁者(ポンティフェクス)の権能を受け継いだ者の名はネフェルタ・マエル。非道の限りを尽くしたかつての者の二の舞いにならぬよう、主が側において監視します。このようなことは、もう二度と起こりませんし、起こさせません。それが主の意思です」


シャルルが言うと、サムリたちは何か固いものを飲み込むような顔をしながらゆっくり頭を下げた。


「精霊と相談してね。犠牲になったエルフと異世界人たちのために慰霊碑の建立と、精霊樹を植えようとおもうんだ。賛成してくれるかな?」


苦しそうに俯いていたサムリがバッと顔を上げる。


「……そのような……よろしいのですか」


「うん、もちろん」


エルフにとって精霊樹はとても深い意味のある樹なのだ、とイルメリに聞いた。

何故か彼ら自身では育てることが出来ず、かつて神のいた時代からずっと生きる精霊樹を命よりも大切に守っているのだという。

エルフの里がある土地には、必ず精霊樹がある。

精霊樹のあるところにエルフが里を構える、のほうが正しいかもしれない。


「疑っていたわけではありませんが……殿下はやはりこの世界の主となる御方なのですね。同胞を多く喪ってしまったことは悲しいことですが、我々は生き残った。新たなる主が無二たる玉座に座るこの時代に居合わせたことを、心より嬉しく思います」


「うん、えっと……ジュジュ!」


俺がおもむろに叫ぶと、ポンと音を立ててマリモみたいな精霊が現れる。

アヒムが増やした俺の植物精霊だ。


植物精霊はその形によって特性が違っていて、葉っぱを育てるのが得意な子や根っこを太らせるのを得意とする子など様々。ジュジュと名付けたこのマリモ……じゃなくて毛玉……でもなくて精霊は、樹を大きくするのが得意。


「精霊樹の苗、ちょーだい」


俺が手を差し出すと、ジュジュは毛玉をワサワサ、ブルブルさせた。

やがてニョキッと頭? というべきか、上から新芽にしては立派にしっかり樹皮に包まれた若葉が生えてきた。


「これちぎっていいの?」


毛玉は空中に浮かびながらポンポン跳ねて俺の手に近づくと、メリッと音を立てたかとおもえばペッと吐き出すように新芽が俺の手の中に落ちてきた。


……。


もうちょっとさあ、なんていうか、ない? 様式美というか、そういうの。

まあいっか。


「どこに植えたい?」


問われた里長のサムリは目を見開いた。


「……え、選ばせて頂けるのですか?」


「え? うん、そのつもりだけど、おかしかった?」


「いえ、精霊樹であれば、育つ場所には精霊が多い場所など制約があると聞いておりましたもので」


「本来どうやって精霊樹の苗が手に入るのかわからないけど……あ、精霊が出すの? じゃあ自動的に精霊が多い場所に限られるってのはあるかもね、でもほら。この大陸は今から再生期に入るから、どこに置いても多分この樹を中心に再生するはずだよ」


そこまでいって、そういえばイシスにエルフの里の精霊になれば?ということを言ったことを思い出した。


「あ……ねえ、精霊樹もし好きな場所に植えられるなら、|セーブル・ド・サフィール《サファイアの砂》はどうするつもり?」


「実は里は何年も昔から飽和状態で、里の拡大も難しい状況です。ですので里とは別に新たな拠点を作れればと考えております」


それならよかった。

イシスに紹介した手前、「新しい里ができたら放棄します」って言われたらどうしようかと思った。


「ざっくりどのへんとか考えてる?」


「できれば里で話し合いたいところではあります」


「あ、うん。それがいいかもね」


そうだよね、里長ひとりじゃ決められないか。

この苗どうしよう……と思ってたら、横からジオールがランタンみたいな容れ物をフタを開けた状態でスッと差し出してきた。


促されたので苗を入れると、樹皮の茎からヒゲ根が伸びて何か丸いものに絡まるように丸くなっていく。容器の中で、苗はプカプカ浮いてる……ふぁんしー。


「なにこれ?」

「精霊樹の育苗容器だよ〜。いまバジラットがつくった」


大地に根を下ろしていない精霊樹は、俺から離れたら枯れてしまうそうで、サムリたちの「第二のエルフの里候補地」が決まるまでは俺が預かることになった。


サムリたちは悲劇的な報告に打ちのめされたが、幾分か元気を取り戻して帰っていった。



塔の上の物見台から、徒歩で離れていくサムリたちエルフ一行を見送りながら考える。


「ちょっとは世界の崩壊、防げたかな?」


独り言に応えるように、ふわりとウィオラとジオールが現れる。


「大陸全体の地帯属性偏向は地底遺跡ロムアと先日の海岸沿いの【命】属性吸収によって大幅に緩和されたかと存じます……が」

「大きすぎる元凶がねえ、すぐ隣りにあるから。効果もあんまり続かないだろうねえ」


そうだった、後回しにしている暗黒大陸の件……。


聞かなきゃだめかなあ。


なんだかすごくイヤな予感がするんだよね。


調査結果が出ていながら、あえて概要を報告してこないうえに、聞くことを強要してこないペシュティーノも含めて。


「サミュエル?」


「は、ここに」


今日のおつきの護衛はサミュエルひとり。


「なにかきいてる?」

「暗黒大陸についてでござるか? いえ、何も」


またござるってゆった!


「サミュエルのその『ござる』ってのはさ、どこからうけついだもの?」

「これは……我が師から。我がネコヤナギ流は皆この物言いを受け継ぎます」


「ネコヤナギ流!?」

「な、なにか……?」


サミュエルが頭の上の耳をピンとたてて緊張している。


「ごめん、ちょっとビックリしただけ。その一派は、異世界人の影響を受けてる……のかな?」

「申し訳ない、私は存じ上げません」


「そっか。で、そのネコヤナギ流というのはどういう戦闘スタイルなの?」

「大まかにはジュンと大きな違いはございません。武器はそれぞれ得意なところを主軸としつつも、あらゆる場面で適正な武器を効果的に使う、が流派の教えです。状況に合わせて長刀、小刀、投擲武器に魔導に魔法……使えるものはなんでも駆使して例え卑怯と罵られようと勝ち、そして生き残ること。そう教わりました」


「ニンジャだ!」

「……レオ殿からもそのように。それはイーロ殿の呼び名であったのでは? イーロ殿はどちらかというと戦闘寄りではなく諜報寄りかと存じますが」


「ニンジャは影の諜報部員なんだよ。戦闘も得意」

「そ、そうだったのでござるか。異世界にもそのような組織が……」


ま、いると勘違いしておいてくれても何の問題もないからスルーするとして。


暗黒大陸の報告内容が他の側近に共有されていないということは、相当にどうでもいいか相当にヒドイかどっちかだ。たぶん後者。

まあアンデッド関連でどうでもいい内容とは思えないし〜。


……。


カクゴして聞きに行くかあ〜!!



俺の執務室。


あ、書類箱に書類がちょっとたまってる。

今朝に全部片付けたはずなのになあ!


テテテッと執務机に駆け寄ってぴょんと椅子に座って、広い机の向こう側にある書類を風魔法でフワリと浮かせて手元に。

ササッと斜め読みして、「承認(ゲネ)承認(ゲネ)承認(ゲネ)承認(ゲネ)……ん、これは……差し戻し(ツリュック)! で、承認(ゲネ)承認(ゲネ)……えっ。またこれでてきてる。却下(アプゲ)!!」


俺の呪文に合わせて、バンバンと音を立てて書類に大きなハンコが押されていく。

ちなみに却下したのは広場に大きな俺の像を作りたい、という一部の熱狂的な支持層がしつこく出してくる建造許可申請書だ。一瞬で却下。


ほんとは捺印(ペッタン)っていう呪文を作りたかったんだけど、よく考えたら手元にあるハンコを押すだけの呪文ってすごい非効率的じゃない?と思って今の形に。

ちなみに俺のためにつくられた白いハンコは俺の名前が入ってるので、特別な時に使うようにした。賞状とか、感謝状とか、そういうやつのときね。


書類が風魔法で1枚ずつヒラヒラと順序よく並んで俺の前に差し出してくれるのはアウロラの補助つき。ついでにウィオラとジオールが内容にちょっと目を通して、俺にテレパシーで送ってくれるので俺はほぼ一瞬の斜め読みで理解できる。

これぞ並列思考! 書類処理のオートメーション化!


俺、国家規模の社長のはずなのにイチバン事務仕事してる!

ウッウッ。べつにツラくないからいいけど。


「ケイトリヒ様、お戻りでしたか」


ペシュティーノが新しい書類を手に執務室へやってきた。

ヒラヒラと書類が舞うのを見てニコリと微笑む。

俺がべそをかきながらハンコを押していたのを知ったうえで、効率のいい方法を編み出したのでご満悦みたいだ。


「こちらの書類は今朝の聖教側での会議を経ての今後の見通しをいくつか法案化したものですので早めに目を通していただきたく」

「いまやっちゃう。終わったら、暗黒大陸の報告について聞くよ」


「おや。逃げ回っていると思いましたが、覚悟が決まりましたか」

「うっ……ま、まあいつまでも逃げ回ってるわけにもいかないし」


バレてたかー。俺が渋々言うと、ペシュティーノはやっぱりトロケ顔。もう。

「ちゃんと判断できてえらいですね!」みたいな顔やめて! 恥ずかしいから!


「では……少々、内容が衝撃的なので改めて緊急側近会議を招集しましょう」


やっぱりそういう案件かあああ。


書類仕事は効率化のおかげですぐ終わり、ただちに側近たちが招集されて緊急会議。



俺と俺に相当に近しい側近とその近辺しか入れない、ルーメン・ヘリカ()で最高位の会議室、通称「玉座の車輪」と呼ばれる部屋。

玉座に車輪があったら車椅子じゃね?という俺のツッコミはレオ以外の誰にも通じなかった。神の玉座にはふつう車輪がついてるらしい。初耳である。


「早速ですが、魔導騎士隊(ミセリコルディア)が記録した記録映像(アウフナーメ)をご覧下さい」


「玉座の車輪」の会議室はテーブルもボードも全て魔道具仕立て。

あまりにも進化しすぎてSFっぽい。


大きな円卓をスクリーン代わりに「ブンッ」と音を立てて空撮画像が現れる。


「これが暗黒大陸……」

「海岸線から内地まで、ずっと、その名の通り真っ黒……ですね。これが【命】属性に偏ったゆえの影響でしょうか……?」


テーブルに表示されたのは、ドラッケリュッヘン大陸上陸のときに見た黒いモヤとは比べ物にならない、焦土のように真っ黒な大地。

そりゃあ暗黒大陸と呼びたくなる気持ちもわかる。

しかし、これのどこが衝撃というのか……と疑問に思って画像に手を伸ばした瞬間、なんというか、緑の絨毯のようなものから一本の木が見えたように、何かが見えた。


「これ……」


側近たちが俺の発言を待つ。


「これ、もしかして」


うそだろ。


「ぜんぶ、アンデッド?」


「その通りです」


すかさずペシュティーノが答えた。うそだろ。


「……え?」

「この画像の何処かに……ってわけじゃなく?」

「どういう……」


ペシュティーノが空撮画像の一部を拡大していく。

焦土のような画像から黒いつぶつぶとなり、さらに拡大するとそのつぶつぶの1つ1つがアンデッドであることがわかる。

東京の満員電車も真っ青の密度。

地面は見えていないのでその下が赤土なのか草原なのか石畳なのかもわからない。


「ま、まさか、これ、大陸全土が、これ!?」


「はい」


クラリ、とめまい。


うそだろ。

皆様のイイネ、感想は制作の励みになります!

今年もあと僅かですが200話も間近!


記念SSは複数話公開します!

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