第2部_4章_196話_精霊王爆誕_1
ルーメン・ヘリカの頂上では、「自由」の赤竜シュペックが本来の姿で巣を作ってごろ寝している。
竜にはそれぞれやんわり権能みたいなものがあって、「要楔」と同様にその土地がどういうふうに発展するかみたいな方向性を決められるらしい。
と、ミラネーロの黒竜じいちゃんに聞いた。
こういうの要楔と内容が反対で矛盾してるとどうなるんだろうねえ?
答えとしては「矛盾というのはどちらかしか存在できないという意味ではない」というなんか哲学的な答えをいただいた。なんとなくわかるけどさ。
「主のお手々はちっちゃいのう」
「ほんとね。これじゃ何年かかるのかしらあ」
今日もせっせ塔の頂上で「微精霊集合!」して、ちっちゃなお手々でおにぎりのようにそれらをギュッとにぎっておにぎりサイズの精霊を生んでいます。
デオスレア聖教国の国主、ケイトリヒ10歳です。
赤竜シュペックの巣になった頂上は、枝じゃなくて木そのものが絡み合ったようなお椀型で、隙間には謎のウレタンっぽい素材がぎゅうぎゅうに詰まって案外ふかふかで快適。
竜が巣作りの時に分泌する体液なんだって。その情報聞きたくなかったッス。
まあ国会議事堂くらいある竜が丸くなるためにある巣なんで、広さはサッカーコートくらいあるんだけど。
本来の姿のシュペックが寝転ぶ背に座って、せっせと微精霊おにぎりを作る。
横にはミラネーロとウィオラとジオール、シュペックの腹のあたりでは今はスタンリーが一応の護衛としていてくれている。
護衛もなにも竜と精霊で過剰防衛なので、側近たちはちょっと様子を見に来るだけ。
ウチの精霊神たちがドラッケリュッヘン大陸各地に散らばっている微精霊を集合させるための道、「臨時竜脈」は効果がだいたい1ヶ月くらい、ということらしい。
一ヶ月とかちょーヨユーじゃーんと思ってたけど最初の1日500個できて、次の日は300個に落ちて、そのあと体力と集中力と相談して400個くらいに落ち着いている。
本日5日目。
数え方がおにぎりだけど許してくれ、精霊たち。
微精霊たちはおにぎりと違って勝手にあつまってくれるから、コメをすくってー、お塩をまぶしてーという工程は不要。
俺が手をおにぎり型にスタンバイすればそこにわーっと集まってくる。
なのでそれをギュッとして、「でっかい精霊になあれ!」と心の中で願って手をひらくと微精霊の集合体、半精霊のできあがり。
この工程、実は心のなかで願うのが一番重要だったりする。
ぼんやりにぎってるだけだと、そのあとパラッとほぐれてまた微精霊に戻るんだもんね。
チャーハンか?
精霊は微精霊→半精霊→主精霊→大精霊→精霊王→【越えられない壁】→精霊神となる。
「それは……精霊王にするまで何回やればいいんじゃ〜?」
「なにせ微精霊から半精霊を作るのも初めて聞く話よ。そこから大精霊まで作れたのまでは確認できたけど、それを精霊王にするとなるとやっぱり数が必要よね」
そう、おにぎり実験では大精霊を作るところまでは成功した。
俺のそばにちょこんと座って、にぎにぎする俺の手先をじーっと見つめているうっすら半透明のネコ耳幼児、それが実験で作った大精霊。何故ネコ耳なのかは不明。
「幼児の体重が人間基準だと10キロくらいと想定して……成人の平均的な体重を考えるとあと6体くらい必要なんじゃないかな」
「人間の体重基準でええんかのう」
「まあ大体の指標にはなるんじゃない?」
ちなみに精霊王ができるまでにつくった精霊おにぎりは
半精霊(1500個)→主精霊(300個)→大精霊(60個)→精霊王(12個)。
つまり1500+5+5+5+1で1516回にぎって1体の精霊王ができた計算だ。
これをあと5回なので7580回のおにぎり作業が必要となる。
計算して絶望した。ぶっ続けでやったとしても、あと13日くらいこの作業つづけないといけない。
今は少しコツがつかめてきたから効率が上がったけれど、微精霊1500がツライ。
「主様! お辛いようならお休みください。そのようにお疲れになったお身体から生み出された精霊は、悪い気を溜め込みやすくなってしまいます。私のように!」
6日目になってヘトヘトになった頃、付近の港から水揚げされた観賞用の美しい魚をおおきな水槽で献上しにきた領主の目の前でいきなりアイスラー湿原の精霊カメオが現れた。
水槽の水面からニュルッとでてきたカメオに、領主はびっくり仰天、尻もちをついて腰を痛めてしまったという。
ラーヴァナもなかなか唐突な現れ方をするけど、それでも常識の範囲内だった。
そういうところ社会性が関係してくるのかなあ?
とにかくカメオの現れ方は今後禁止!
ちなみにその港町ではマグロに似た魚が取れることが判明。
今後が楽しみ!
そしてカメオいわく「主の元に集まる竜脈が整ったので訪れやすくなった」という話だけど、ラーヴァナはちゃんとドアを開けて入ってくるからね! と説教するとものすごく反省しておいおいと泣いた。まあアッサリ追い返し。
「しんしんともに健康じゃないと悪い気を溜め込みやすい精霊ができるってのは聞き捨てならないよね」
おにぎりを作る以外にも俺の心を疲弊させる理由はある。
王国から、かつての異世界召喚勇者の「肉体」が届いたのだ。
なんか「ひとつにまとめて」くれたそうで、全裸でも男性とも女性ともわからない体型のヌルリとした肉体が培養液みたいなおおきなポッドで液体に浸かって届けられたのだ。
無表情に目をつぶっているけれど、これがハイエルフ……というかカブールのあみだした「転魂の術」によって魂を別の肉体に移動された空虚な肉体。
魂を移動された異世界召喚勇者たちは、同意の上だったとはいえ……。
やっぱりなんか前世の倫理観を基準にしてしまうとどうにも拒否感が拭えないわけで。
「出自に対して否定的になってしまうのは仕方ないことですが、どうかこの存在そのものを拒絶なさらないでください。できあがる精霊王が不憫ですから」
そう言ったのはシャルル。
シャルルは「転魂の術」についてまったく関与していなかったので許せるけど、それを実際に使っていた王国のハイエルフたちにはまだ会っていない。
やっぱり同意の上とはいえ生死に関わる人体実験をしていたとなると、倫理観あれこれよりも先に恐怖感のほうが強い。
死刑執行人は本人の意志とは関係ない仕事なので恐くないけど、合法でも明確な自分の意志をもって死刑を実行したヒトってのはちょっと怖いのと同じだとおもう。
覚悟と意思ってここではだいぶ違う。たぶん。
そんな状況よくわからんけど。
ちなみにリクの遺体は日本の様式に従って火葬しました。
利用する気もありません。
ハイエルフはヒトと感性が違うとはいえ……なんとなくね。
シャルルいわく、俺が面会を拒否することそのものが彼らにとって大きな罰となっているそうだから、しばらくは会わないでおこうとおもう。
ハイエルフなんだし数十年待ったところで問題ないっしょ。
3日目くらいからだいぶ作業には慣れたし、ネガティブな気持ちで作業すると精霊によくないって聞いたので建物サイズのシュペックとペチャクチャおしゃべりしながら延々とおにぎりをにぎること、本日で10日目。
「今日はもうおしまいー! つかれちゃった」
コロンとシュペックの前足の指の股で寝転ぶと、鼻先を近づけてきた。
「主、おつかれさま! 明日は港町の査察で外出するんでしょ? 精霊たちはアタシが面倒みておくわね!」
「うん、よろしくね〜」
俺がこさえた精霊たちは俺の魔力に惹かれてやってきているのでそう簡単に俺から離れていったりはしないけど、数千もいたらきまぐれなやつもいくつか出てくる。
どこかへ遊びに行こうとしたり、元いた場所へ帰ろうとする精霊をシュペックがやんわり結界をつくって囲ってくれているのだ。
おかげで3日か2日おきにお休みの日もとれるようになった。
そして15日が過ぎた頃には、作業が大変そうだと見かねたマリーとフランが俺の退屈しのぎの喋り相手に、と俺の横で楽しげに精霊たちが大きくなっているのを一緒に見てくれていた。
おかげでだいぶ作業感というか、1人で黙々とツライ作業を強いられてる感じはなくなって楽しく過ごせたよ! さすが俺の婚約者!
そして約一ヶ月。
大精霊8体が完成。
あれだけたくさん集まった微精霊も、今はちらほら。余った……というか自己増殖した半精霊や主精霊もちらほらいるけど、こころなしか精霊王の誕生を見届けたいような気配を感じる。言葉がかわせないので多分だけど。
この一ヶ月の間で皇帝陛下の毒殺事件はとっくに無事に終わり、ヒルデベルトはまだ処分待ち。帝国での鉄道開通の報告が上がってきたり、レオの調味料と加工食品の販売事業が開始した報告、それに暗黒大陸の調査結果が上がってきたり色々あったけど今は棚上げしている。
神の権能で暴走気味だった「予見」も、ネフェルタの指導の甲斐あってか今はなりをひそめてときどき夢に見るくらいだ。
相変わらず内容はしょーもないけど、ガノが新種の貝を食べて食あたりする、ってのを防げたのはいいことだと思う。
大陸の竜脈調整を担う大事な精霊王を生み出すことに集中しないと。
精霊はやっぱり室内じゃなくて、おひさまの光の下で風に吹かれる場所のほうがいろいろと都合がいいらしい。精霊王を作る場所は、グラディアーク要塞都市から少し離れた穏やかな森に囲まれた泉にほど近い草むら。
ロケーションがいいので、今後もピクニックなんかにいい場所かもね!
運ばれてきた木箱がシャルルたちの手によって荷解きされ、中から柔らかな布に包まれたガラスのカプセル……異世界召喚勇者の肉体が保管されている容器が現れた。
相変わらず無表情で眠っているが、これは生き物であって生き物ではない。
くるりと後ろを振り向くと、半透明の子どもたち……俺の半分くらいのサイズの幼児が8人。こうみえても立派な大精霊。サイズは幼児だけど、明確に俺に従う意思を見せてくれる確固たる精神を持っている。
「みんな、この大陸を管理する大精霊になるためにこの肉体に宿ってほしいんだ……異論はないかな? いやだというなら、無理をさせたくないと思ってるんだけど」
ほとんどが嬉しそうに頷いたが、1体だけ目を逸らして反応の鈍い大精霊がいた。
「……イヤだったら意思表示していいんだよ? イヤだと言ったからって、僕がキライになることなんてない。本当は、イヤなの?」
その個体に向かっていうと、おずおずと頷いた。
「わかった、いいよ! このままの姿でいたいんだよね。大精霊のままでいてくれても、充分この大陸のためになるんだ、イヤなことまでやる必要はない。ちゃんと意思表示できてえらいね!」
合一を拒んだ精霊の頭を撫でると、嬉しそうに笑った。
こういうときのために自然増殖した個体も含めて予備として大精霊を8体こさえたのだ。
まあマリーとフランがお喋り相手になってからは時間が経つのが早くて作業効率がさらに上がったというのもあるけど。
ほかの幼児姿の大精霊たちも撫でられたくて、我も我もと群がってくる。
ちなみにこの半透明の大精霊、触れられるのは俺だけ。
俺は感触はあまりよくわからないけど、大精霊のほうは触れられるのが嬉しいみたいだ。
「みんなありがとうね! 合一して、この大陸を守る立派な大精霊になって。大陸のどこに住んでくれてもいいよ。いずれ増えすぎたアンデッドは僕がキレイさっぱり消してあげるから、好きな場所をえらんでね!」
わらわらと8体の幼児が俺に抱きつく。
みんなかわいい。身長や体型にバラつきはあるが、みんな2、3歳児くらいのサイズ。
そう考えると俺、大きくなったな〜。お兄ちゃんになったな〜。
スタンリーや精霊たちをちょっと自分の子のように思っていたけれど、この子たちは紛れもなく俺の子だ。
「さあ、行って」
俺が促すと、依代となる肉体のほうに勢いよく駆け出す子、こちらを振り向きながら笑顔で手を振る子、淡々と歩いていく子と既に個性豊か。
こういう個性ってどこから来るんだろう。
そうして1人……いや1柱、また1柱とカプセルの中に消えていく。
なんだか寂しい。
でも新しい精霊王として生まれ変わるんだ、いなくなってしまうわけじゃない。
どんな姿にしようか、と考え方を変えてワクワクしながら見つめる。
どうやら姿については俺の意思が強く反映されるのではないか、というのがシャルルの見立て。
ド派手なダンサーみたいなギャル系のラーヴァナに、ワカメをまとった情緒不安定気味のカメオ。すでに結構個性強めの自然発生精霊にさらにもう1体増えるわけだ。
うーん、やっぱり少しおとなしめなほうがいいかな……?
最後の1人がカプセルの中の肉体と溶け合ったのを確認して、一息つく。
「赤砂の大地を抱くドラッケリュッヘン大陸、その遍く竜脈を統べる精霊王を、ケイトリヒ・アルブレヒト・ファッシュの名の元に生ず。その名は……」
ウィオラたちは完全に無性だけど、ラーヴァナは女性っぽくてカメオは男性っぽい。自然発生の精霊なら性別があるほうが自然かな、と考えてなんとなく女性をイメージした。
砂漠の女神……いや、精霊だけど、そういうイメージで。
「その名は、イシス。砂漠の統治者にして、豊穣と繁栄を司る魔術の精霊王たれ」
ガラスのカプセルがバリンと音を立てて割れたけど、中から水が吹き出すようなことはない。ふわりと水蒸気になって渦を巻き、辺りを覆う。
「おお……これが、精霊王誕生の瞬間ですね!」
「永き時を生きて参りましたけれど、初めて目にする瞬間ですわ」
「すごいよねえ、いままでどの神もやったことない偉業だよ!」
「素晴らしい……これが真の神の御力なのですね」
シャルル、イルメリ、グルシエル、そしてセヴェリのハイエルフ組が目を輝かせている。
対してペシュティーノやガノといった側近のほうはちょっと不安げだ。何故なのか。
やがて湯気のような白いモヤが薄れ、カツン、と足音を立てて俺に近づく影。
ん、これは……?
「我が名はイシス……主の手によって生まれしドラッケリュッヘン大陸の精霊王……」
豊かにうねって艶のあるブルネットをふわりとなびかせた、タレ目で厚ぼったい唇の……巨乳で素肌に直接ジャケットを着たタイトスカートスーツ女性が現れた!!!!!
スーツは白!
ああああああ!
これ前世の俺の性癖どストライクやんけー!!
はずい、これははずい!!!
うわああああ!
「……これは……少し、ララに似ていますかね?」
「ゲイリー様の第一夫人リーゼロッテ様にも似ていらっしゃるように見受けられますが」
「簡素な服装ですね」
ペシュティーノとガノ、スタンリーがヒソヒソ。
うわああん、どっちも前世ではめっちゃタイプでしたー!!
ちょっと年上で、自立した大人っぽい女性に「頼りになるわね♡」なんて言われるのが夢でしたあああ! すみませんっ! 性癖丸出しでごめんなさい!
身近なリクルートスーツではなく、ハイファッションな白スーツってのがポイント。
VOGUEの表紙になりそうな感じで……ってそうじゃなくてえええ!
と、心のなかではすっごくわたわたしてたけど、顔はつとめて平静。
だって僕、子どもだし!
このときほど胸の内を上手に隠せたのは、この世界に転生して初めてでした。
もとのエジプト神話でもイシスは母神としての神性があったそうだから、巨乳は……きっとそういうアレだよ、うん、そうに違いない。
前世ではさほど巨乳好きだったわけでもないんだが……まああるならあるでいいんじゃないという派だった。消極的巨乳派。いや、もう前世の話はやめよう。
「ラーヴァナ、カメオときて次は女性かなって」
俺の言葉に納得したハイエルフと側近たちは特にそれ以上なにも言わず頷いていた。
イシスは、合一を拒んだ大精霊を抱き上げると周囲に群がる主精霊や半精霊を愛おしげに見回す。
「ここまで主に祝福されて生まれた精霊がいるでしょうか……主、わたくしを生んでいただいてありがとうございます。この大陸の竜脈の管理者として、主に賜った使命を期待以上に全うしてご覧にいれます」
俺に近づいて、そっと跪く。
そうそう、俺が子どもだからといってサッと抱き上げてくるような距離感じゃなくてこういう少し控えめなところもね! 俺の好みというか! まあ、うん、きっとそう。
「うん、よろしくね。住処はどうする?」
「精霊神様がご用意くださった仮の竜脈が残っているうちに、この大陸を少し見てまいります。落ち着きそうな場所が見つかればそこに。主に賜った神性のおかげで、住む場所にはあまりこだわらず済みそうですが……生き物が適度にいてくれたほうが相性が良さそうです」
しなやかな手をそっと頬にあてながらニコリと微笑んで喋る感じも、もう完全に俺の理想の女性像そのものだ。あくまで前世のね! 今は……今は、うーん、なんともいい難い。
「……もしも適した土地が見つからなかった場合は、このグラディアークに住まいを構えてもよろしいでしょうか?」
「え、そんなことありえるの?」
「ヒトに愛されヒトに育てられた主によって生み出されたわたくしは、ヒトとの関わりが無くては生きていけません。適度な集落があればそれが望ましいのですが……この大陸では主のような崇高な要楔を持つ集落が見つかるかどうか」
「できればイシスの力で集落を育てて欲しい……っていうのもあるから、できれば僕との重複は避けて欲しいかなあ。もしもどこにもいい場所が見つからなかったら、港町のオルビにするといいよ! 少し西に偏りすぎてるかもしれないけど……グラディアークが東寄りだから、ちょうどいいんじゃないかな?」
それかオルビよりも少し南にあるエルフの集落であれば、大陸のバランス的にもいいかもしれない。エルフの集落なら精霊にとってもきっと心地良いものになるだろうし、エルフたちもきっと精霊の扱いは心得てるはずだ。
「主のお墨付きがあるのならば安心ですわ。では早速、行ってまいります。竜脈を整えながら参りますので、戻ってご報告さしあげるまでにはしばらく時間がかかりましょう」
「うん、わかった。竜脈のことはまかせるね! いってらっしゃい、きをつけてね」
「……素敵な言葉をありがとうございます。行ってまいります」
イシスは満足げに笑って、フワリと消えてしまった。
ふう……心臓に悪いビジュアルなので、いなくなってくれてホッとしてしまう。
さて、俺は棚上げしておいたお仕事を……と思って振り向くと、マリーとフランがこころなしか乾いた眼差しで俺を見ている。
な、なんでしょうか?
「……どしたの?」
「あの精霊王の外見って……ケイトの……いわゆる、理想、というか願望というか……想像で創られた外見ですのよね?」
「あの衣装は異世界のものかしら? 男性のようなジャケットに、あのように体のラインがはっきりわかる短いスカート……足を丸出しにするなんて、私たちの感覚では裸とかわりませんでしてよ」
あっ。
ドン引きされてるのはタイトスカートでしたか。
ちなみにタイトスカートの丈は膝の少し上。あまり短いと下品だからね。
しかし、さすがに2人にとって、あのルックスは無視できないものだったらしい。
婚約者の観察眼、おそろしや。
「あれは異世界ではわりと普通のスカートだったんです。足はたぶん、タイツみたいなものを履いていて……上着を素肌にまとうのはさすがに一般的ではなかったですけれど……たしかに、前世で憧れていたような外見が反映された気が……します」
ここは下手にウソをつかないほうがいい。
これ俺の持論。
「気がする……ということは、今はどうですの?」
「わたくしたちに、あのような格好をして欲しい……とかいう願望はございませんの?」
「ま、まさか! フランの言う通り、あそこまで足を露出した女性はこちらでは見たことないしっ! 精霊じゃなくていきなりそんな女性が現れたらビックリしちゃうと思う! 前世では確かに憧れた気がするけど……どこか他人事のような気もしてて」
マリーとフランは俺をジッと見つめて、やがて顔を見合わせてフフ、と笑った。
「ケイトが着て欲しいというのならやぶさかでもなかったんですけれどね?」
「もちろん3人のときだけよ?」
「はえっ!? い、いやそれは……うーん、でも……あっ、そ、それはもうちょっとオトナになってから改めてかんがえさせてください!!」
考えてみたらビジュアルはともかく、マリーもフランも俺の4つ年上。
今は若いながらも独立心も好奇心も旺盛で、かなりしっかりした芯のある女性だ。
前世の夢がかなってるのかもしれない。
まだ「頼りになるわ♡」なんて言われてないけど。
と、ともかく精霊王は無事……なんといえばいいんだろう、成功? 生成? 誕生?
うん、誕生でいっか。
お腹を痛めたわけじゃないけど俺が産んだことには間違いない。
精霊王イシスはさっさと使命を果たすために出発したので放置してても問題ないし、俺は棚上げされていた報告や問題に取り組もう。
まずは……うーん、皇帝陛下暗殺未遂の件は特に俺としてはやることないからいっか。
それよりレオの調味料と加工食品事業だ!
これはちょっと詳細希望です!
暗黒大陸の件は……後回しでいいかな。




