11 成功と油断
戦闘、怪我表現があります。ご注意ください。
少しずつ夕闇が迫る中、大公家別邸の庭にはいまだに多くの騎士達が足止めされていた。
魔獣の討伐に成功したことで、避難していた住民の帰宅と専門の治療が必要な重傷者を治癒院に送る馬車とで街道で渋滞が起こり、すぐに移動が必要がない者はここに留まるようにと伝達が出されていたのだ。この調子では今日中に大半の者が王城へは戻れず、ここに留まることになるだろう。
あまり広くない離れの屋敷では少ないながらも参加していた女性の魔法士や騎士と、重傷とまでは行かないが怪我のやや重い者で既に一杯となっている為、彼らの殆どは庭で休むことになりそうだった。だが幸いにも天気は良く、気温も春先で寒くも暑くもない。それに外とは言え手入れされた大公家の敷地であり、後で大公家より特別に食事と酒が振る舞われると伝えられたので不満は出ていないようだった。遠征の野営などを経験している騎士達からすれば、ほぼ気楽なピクニックも同然だった。
相当な苦戦を強いられたものの、ひとまず魔獣の脅威は去り、幸いにも死者が出なかったこともあって彼らの間で少し緩やかな空気が流れる。それを上官達も、ここの持ち主である大公家の令息が許可していたこともあって、厳しいことは言わずに部下達をそのままにしておいた。この後酒が入って羽目を外す者が出て来た場合は容赦なく鉄拳制裁を落とすのだろうが、常に規律で雁字搦めに管理している訳ではないのだ。
「…いましたか?」
「はい。今、私が向いている方向にいます」
アトリーシャは、レンザに連れられて上官達に挨拶回りをしている態を装って、例の首謀者と思しき者を探していた。彼女の側にはディルダートが護衛としてぴったりと張り付いている。その護衛と言うにはいささか近すぎる距離感に、アトリーシャの姿に見惚れていた多くの騎士達が羨まし気にディルダートを眺めていた。
ある区域に差し掛かった時、ほんの少し彼女の動きが固くなったのを敏感に察知したディルダートがそっち耳打ちをする。アトリーシャは完璧とも言える淑女の微笑みをたたえながら、ディルダートの陰に隠れるようにして少しだけ正面からズレた方向に足先を向けて立った。こうすれば大きなディルダートの体に遮られて彼女の向いている方向は相手からは見えない筈だ。
「ディル様。お怪我の具合はいかがですか?傷は痛みませんか?」
「あ、ああ…おかげで殆ど痛まない。そう言えばアレクの怪我にも治癒魔法を使っていただいたそうで。ありがとうございます」
「いいえ。少しでもお役に立てれば良かったですわ」
ごく自然な様子でアトリーシャが話を振って来たので、ディルダートが少しぎこちなく答える。こちらで過ごすようになってから、アトリーシャ本来の好奇心旺盛で無邪気な一面が前に出ていたが、長年に渡って王子妃候補として貴族社会の中枢で完璧な令嬢として足場を固めて来た実績を持つのだ。表情も会話も一度スイッチが入ってしまえばごく自然に芝居を打つことなど全く問題ない。むしろディルダートの方が固さが態度に出ているようだった。
「アトリーシャ嬢。先程はありがとうございました」
「ノマリス副団長様。お加減はいかがですか?」
「問題ありません。あまりにも痛みが無くなったので、完治したと勘違いして悪化させないように気を付けているくらいです」
こちらもごく自然な様子で、アレクサンダーが話しかけて来た。よく考えれば彼も子爵家当主であるし、ずっと王城の警備を務めているのだから貴族とのやり取りはディルダートよりはるかに慣れている。内心、この中では一番身分が高い筈であるディルダートが「おお、何か貴族がいる」などと思っていたのだった。
「大変図々しいお願いだと分かっておりますが、もし魔力に余裕があるのであれば、彼の足にも治癒魔法を少し掛けてやっていただけませんでしょうか」
「ええ、構いませんわ」
「…あの、申し訳ありません…」
アレクサンダーの後ろには、見覚えのある騎士が立っていた。騎士団の中ではあまり多くない槍使いのサミュエルだった。片足を軽く地面から浮かせるようにして、自分の槍を杖代わりにして体を支えている。
一瞬だがアレクサンダーとディルダートの視線が交錯する。このサミュエルが捕縛の協力者として選ばれた一人なのだろう。
「立ったままでよろしいですわ。少々そのままでいてくださいませ」
「では、俺の肩を支えにするといい」
「し、失礼いたします…」
サミュエルの足に治癒魔法を掛ける為にアトリーシャがしゃがみ込む。そして彼女のすぐ脇にディルダートも片膝を付いた。サミュエルは目的の人物から隠すように、さり気なくディルダートの肩に手を添えて立つ。ディルダートは腰に下げた剣が邪魔になるのでするりとベルトから抜いて、遠目からは分からない程度に僅かに鞘から抜いた。その刃は既に高温に熱せられていた。
サミュエルの足に治癒魔法を掛けるかがみ込む体勢を取りながら、アトリーシャは指先程度の水球を素早く幾つも発生させ僅かに熱された刃に触れさせる。この触れるか触れないかの距離でないと小さな水球は一瞬で蒸発してしまう。そして練習の中で編み出した、湯の温度を下げず、更に湯気が外部に漏れないように薄い水の膜で包み込むようにして素早く二重の水球を作り上げた。これは最高レベルの制御力がないととてもではないが出来る技ではない。
「行きます」
アトリーシャが小さく呟くと、作り上げた20を越える熱湯を包んだ水球が上下に分かれて一斉に同じ方向に飛んで行った。
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彼は、奇妙な魔力が自分に向かって来るのを敏感に察知していた。
大きさはごく小さな物だ。スピードもそこまで速くはないので、何かの攻撃とも思えなかった。魔力を僅かに含んだそれは、彼めがけて頭上から落ちて来る。何のために何が来るのかは分からなかったが、自分に向かって来るものは排除するだけだ。
含まれている魔力は水魔法だろうか。それにしては少し奇妙な魔力のような気がしたが、より強い魔力をぶつけてしまえば消滅する。大したことはない。
彼は頭上の魔力を消滅させようと指先に魔力を込めた。自分の魔力ならば指一本で即座に消失させることは容易い。きっと周囲にいる誰も気付かないだろう。
が、次の瞬間、彼は足元から突如出現した魔力に気付いていなかった。頭上から来るものは囮だったか、と思考が追いつくと同時に、顔に強烈な痛みが走った。
「…っが…!?ぐあああぁぁぁ!」
その痛みが熱さだと分かった時には、反射的に彼の口から悲鳴が漏れていた。
「わあっ!」
「何でここに!?」
「お前何でっ?」
ここからすぐに逃げなければ。彼は咄嗟に周囲に風魔法で風の刃を四方八方に飛ばして一瞬の隙を作り出し、足元に転移の魔法陣を展開した。転移先の座標は定める余裕はなかったが、とにかくここから離れなければと本能が警鐘を鳴らす。
「捕縛!!」
怒号と混乱の中、彼は体験したこともない衝撃を喰らって、意識がガクンと途切れるのを感じた。
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アトリーシャが飛ばした水球に、相手はすぐに気付いた。しかし、それも既に想定済みであった。
上に飛ばした水球は、上空まで一気に持ち上げて自然落下の速度も加えて一気に相手の頭を狙う。が、それは囮で、実弾は足元を迷走させるようにバラバラに地面すれすれを飛ばしていた。その軌道は一つとして同じものはない。ただ一点、着弾する場所が相手の顔であると言うだけだ。
狙い通り、相手は頭上の水球には気付いたが、足元の方にはギリギリまで気付かれなかった。最後の瞬間に気付いたようではあったが、既に避け切れずに相手の顔に熱湯が弾けた。
「…っが…!?ぐあああぁぁぁ!」
相手が顔を押さえて思わず悲鳴を上げた瞬間、側に立っていたアレクサンダーとサミュエルの姿がかき消えるように視界から消える。本当は、悲鳴が上がると同時に身体強化を掛けて全力で捕縛に向かったのだが、あまりにも速過ぎて目で追い切れなかったのだ。
アトリーシャは、複数もの水球を誰にも当てずに目標に向かって同時に制御していた為、恐ろしく集中力と魔力を消費していた。たった一度きりの機会と思って、必要以上に緊張していたようだった。どうやら成功したのを確認すると、足元から血の気が引くような感覚がしてしゃがみ込んだ姿勢のまま、ガクリと地面に崩れ落ちそうになる。
その寸前、アトリーシャはしっかりとした暖かい何かに包まれたのを感じた。それが何かはすぐに分かったが、魔力切れによる急速な睡魔に捕われて目を開けることが出来ない。そのままアトリーシャは安心しきった表情でコテリとその身を預けて意識を手放したのだった。
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アトリーシャが渾身の魔力制御で、相手の顔に熱湯を浴びせかけた。
思わず悲鳴を上げた者目がけて一気にアレクサンダーは身体強化で距離を詰める。予め信頼できる軽傷の騎士数名にも、突然顔を押さえてもがいた者を捕縛するように、と打ち合わせていた。
その相手は、彼女の放った熱湯を顔にまともに浴びて、隠遁魔法が解けてしまったようだった。今までぼんやりとしか認識できなかった存在が、急に現れたようになって周囲も思わず声を上げていた。どうやら隠遁魔法は解けたものの幻覚魔法はそのまま効力を保っていたらしい。
幻覚魔法は、見るものに最愛の者の姿を見せる魔法である。いきなり自分の大切な人間、恋人であったり妻であったり我が子であったりが出現したのだ。一瞬にして周囲は混乱に陥った。
アレクサンダーに捕縛を依頼された騎士達も、話には聞いていたもののやはりほんの一瞬ではあるが、その動きに躊躇いが生じる。その一瞬の隙を突いて、相手が四方八方に風の刃を飛ばして来た。目眩ましが目的な為か、威力は大したことはなかったので、アレクサンダーはお構い無しに一直線に突っ込んで行った。
微かに顔や腕を掠めたのか、チリッとした痛みが走ったがその程度で彼は止まらなかった。
分かっていながらもほんの僅かに遅れを取った騎士達の中、一切の躊躇いもなくアレクサンダーが一番最初に鞘に納めたままの剣を相手の顔目がけて一気に振り抜いたのだった。
「捕縛!!」
顎の骨を砕いて相手の意識を刈り取った後も、アレクサンダーは容赦なく手にした魔法封じの魔道具で拘束する。それに続いて、他の騎士達も相手の手や足にロープを掛けて身動きが取れないように縛り上げた。
「てめぇのせいでヴィーラに会えなくなったんだから、もうちっとマシな幻覚くらい見せやがれ…」
完全に意識をなくして転がっている男を、アレクサンダーは容赦なく胸倉を掴んで引きずって行った。そのキレ散らかした顔は、周囲に完全にトラウマを植え付ける形相になっている。
「さすが…さいきょうの愛妻家…」
捕縛に協力した騎士の誰かが、ふとそんなことを呟いた。それが「最強」だったのか「最凶」だったのかは定かではない。
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「外見だけではどこの誰かは分からないですね。やはり意識を戻して話を聞かないと」
レンザは、拘束されて巨木に縛り付けられた男の顔を覗き込んで呟いた。
捕まった男は、随分見窄らしい様相だった。背は高そうだったが痩せて骨の浮いた体つきに、乾いてカサカサとした肌。髪も艶はなく伸び放題で、白髪なのか汚れなのか灰色をしている。一見すると年寄りのようだが、先程の動きを見た印象では意外と若いのかもしれない。実際の年の頃は全く分からなかった。
ただ大きな特徴として顔に大きな刀傷があって、その傷は目のあった場所を真横に走っていた。その刀傷は古いもので、目は傷に覆われて完全に機能していない。おそらくこの男は、膨大な魔力で周囲を感知することで目と同じ機能を果たしているのだろう。
「あと、このままでは喋れないでしょうから、そちらが終わりましたらこの男の顎の骨の治療を」
「はい」
座り込んでいるアレクサンダーに治癒魔法を掛けている魔法士にレンザは声を掛けた。
この男は、捕縛時のアレクサンダーの一撃で完全に顎の骨が砕けている。このままでは事情聴取しようにも意思疎通は出来ないだろう。
「ノマリス副団長、無茶しましたね…」
「いや…まあ、そうだな」
応急処置を終えた魔法士が離れると、その様子を眺めていたサミュエルが少々呆れたように溜息を吐きながらアレクサンダーに水の入ったカップを手渡して来た。アレクサンダーはカップを受け取ると一気に水を飲み干し、大きく息をついてから脇腹を押さえて「痛ってぇ…」と呻いていた。
ただでさえヒビが入っていた肋骨が、捕縛時に妙な方向に力んで剣を振り抜いた為にポッキリいってしまったらしい。
「大丈夫ですか?」
「あ?ああ…これは別に痛みの影響じゃない」
飲み終わったカップを回収した時、差し出されたアレクサンダーの手が僅かに震えているのにサミュエルは気が付いた。応急処置をしてもらったとは言え余程痛みがきついのに我慢しているのかと思い声を掛けたのだが、アレクサンダーは自分の手をチラリと見やると苦笑混じりに頭を掻いた。
「……やはり対人は苦手でな」
「充分通用するご活躍だったと思いましたけど」
「さっきみたいな瞬間的な怒りで動くのは出来るんだけどな、後からちょっとばかりクるものがある」
サミュエルは、アレクサンダーにまつわるよろしくない噂を未だに耳にすることがある。どれもこれも直接アレクサンダーの人となりを知っていると眉唾物の噂ばかりだが、ただ騎士としての腕前の割に対人戦が極端に苦手という結論に帰結するのにいつしか気付いていた。彼が自分の口から言わない以上詮索するのは失礼だと思うので追求する気はないが、いつかこの人が笑って話せるような過去になったらいいな、とサミュエルは思った。
「それなら第四に来ませんか?ウチならだいたい魔獣相手しかないですよ」
「遠征が多いから断る」
「ですよね」
どこまでもブレないアレクサンダーに、サミュエルは肩を竦めて笑ってみせた。
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「アトリーシャ嬢はいかがですか?」
「魔力切れで眠っているだけだと言われました。ベッドメイクが整ったら呼びに来てくれるそうなので、このまま俺が運びます」
ぐるりと周囲を見回って、レンザはアトリーシャを抱きかかえたまま佇んでいるディルダートの元へ近寄り声を掛けた。
今回の捕縛の最大の功労者であるアトリーシャは、成功を見届けると魔力と緊張の糸が切れたのかそのまま昏倒してしまっていた。側にいたディルダートが抱きとめたので、地面に触れることすらなかったが。
混乱の中、心配のあまりディルダートが頑に彼女を抱きかかえたままでいた。ようやく手の空いた治癒魔法士に診てもらってただ眠っているだけだと判明してから少し落ち着いたのか、彼女を休ませる場所の手配に気が回るようになったようだった。
「彼女には何かお礼をしないとなりませんね」
「はい…リーシャ嬢には随分と辛い選択をさせてしまいました…」
「彼女は、君が思っている程か弱くはないよ」
美しく凛とした白百合と喩えられる程、若いながらも社交界で地位を築いていたアトリーシャ。いくら第二王子の婚約者という立場であったとしてももっと地位の高い令嬢は多数いるにも関わらず、未婚の令嬢の中では右に出るものはいないとさえ言われた才は本物だ。表向きはきらびやかであっても権謀術数、魑魅魍魎の渦巻く貴族の社会は、ディルダートの生きる辺境とはまた違う戦いがある。ある意味この可憐なご令嬢は、社交界では最強の一人に名を連ねているのだ。
「ディルダート殿は、これからどうするのかな?」
「俺は、クロヴァス領に戻ります」
「そうか。では、次は僕が『百日詣で』…いや、彼女に『百夜の誓い』を申込んでも良いということですね」
「……俺に、とやかく言う資格はありません」
「…なるほど」
レンザは思わせぶりな視線をディルダートに投げると、そのままこの場を離れた。いくら鈍いディルダートでも、レンザに挑発されていることは分かった。しかし仮に今日で「百日詣で」が達成できたとしても、彼女にダンスを申込む権利を得るだけだ。自分の望みはそこで終わりだ、と思うとディルダートは胸の奥がチクリと痛んだようだったが、気のせいだと呑み込むことにした。
それに結果的に達成は出来なかったのだ。明日になれば、それでこの楽しかった日々は終わる。
わずか2年余りで強制的に終わってしまった学生生活。そこから9年間ずっと領民達に支えられながらディルダートは領主として走り続けて来た。
今回の100日あまりは、領主であることも忘れて友人と軽口を言い合いながら狩りに出掛け、自分のことを恐れない美しい女性と毎日他愛のないお喋りをして共に食事をし、祭も一緒に出掛けることも出来た。
まるで夢のように毎日が幸せだった。あの時出来なかったことを、9年間頑張った褒美だと今になって女神が与えてくれたのではないかと、そんなことを思った。
アトリーシャの休ませる準備が出来たと侍女のマリアが呼びに来たので、ディルダートは揺らさないようにゆっくりと一歩を踏み出した。
「待て!」
「避けろぉ!!」
不意に背後から、レンザとアレクサンダーの悲鳴のような声が響いた。
その声に振り返ると、目の前に身の丈をはるかに超える火球が迫っていた。もう避けるのは間に合わない。一瞬でそう判断すると、ディルダートは火球に背を向けて抱きかかえたアトリーシャをその大きな体全体で守るように柔らかく包み込んだ。
「ディル!」
アレクサンダーの悲痛な叫びと、巨大な火柱が夜の空を真っ赤に染め上げたのは同時だった。
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治癒魔法により、捕らえた男の砕けた顎は回復した。しかし目が見えないのでその男が意識を取り戻したのかどうかが分かりにくかった。それが判断を遅らせた。
レンザが処置を終えたと報告を受けて改めて近付いた時、男の口が微かに動いていることに気が付いた。それは彼も聞いたことのない言語ではあったが、僅かに炎を表わす古代言語の一部だけ辛うじて聞き取れた。ただ魔法封じの魔道具で拘束していたので、そこに油断があったのは否めない。が、次の瞬間巨大な魔力の揺らぎが男の体から陽炎のようにゆらりと立ち上った。
「待て!」
思わず声を上げた時、巨大な火球が出現して飛ばされた。
「避けろぉ!!」
その火球が飛ばされた先には、アトリーシャを抱きかかえたディルダートがいた。座り込んだままだったアレクサンダーは、咄嗟に体が動かずただ声を出すことが精一杯だった。
その声にディルダートが振り返り、刹那、彼は迷うことなく火球に背を向けてその場に座り込んだ。
「ディル!」
火球が着弾した瞬間、離れたところにいるアレクサンダーでさえも目を開けていられない程の光と熱風が襲った。そしてその炎は、空高く柱となって中空を焦がした。




