3.ディアン第二王子様
ディアン王子様は私の存在を気にかけなかった。
奴隷だから、私が居ないように扱うのは普通のこと。
だから彼は私が居ようとも、今すぐトイレで用を済ませることに抵抗感は無い。
そもそもトイレは完全個室だから、何も目の前で用を済ませるわけじゃない。
よって私もディアン王子様のことを気にかけず、無駄に豪華なトイレを掃除していくだけ。
王族専用とは言え、なんで金ぴか空間なんだろう。
そんな無関係なことを考えているとき、ディアン王子様が入った個室から呻き声が聞こえてきた。
「うぅ~、上手く脱げない~」
あぁ、そうか。
王族の服は普段着ですら手間がかかるものだ。
それに切羽詰まった心持ちであれば、余計に焦って対処できなくなる。
それなら私は奴隷として、彼の面倒をみないといけない。
そんな善良の想いで、私は個室に籠ったディアン王子様を呼び掛けた。
「第二王子様。お急ぎでしたら、この私めが脱がして差し上げます」
「あっ。そ、そうか!うん、お願いするよ!」
ディアン王子様はとても無邪気で、一切の羞恥心が無く扉を開けた。
そこには………衣服が乱れた彼の姿がある。
はっきり言ってしまうと、オーベと違って不器用だ。
それに非常に賢いというウワサ話を聞いたことがあるのに、まるで無知の赤子みたいな危うさが感じられた。
「早くお願い!」
「えぇ……すみません。お急ぎしますね」
ディアン王子様は必死になっていて、私はそれに応える。
いけない。
この気配を浴びると、嗜虐心が煽られる。
オーベとはまた別の角度による煽り方で、ある意味調教されきった私では耐え難いものがあった。
「ね、ねぇ……。まだなの?」
「大丈夫ですよ。あまり刺激を与えない事で漏らさないようにしていますから」
私は適当な嘘をつくことで、あえて時間をかけて脱衣させていた。
なんとも細い四肢。
でも、鍛えているだけあって肌には力強さが表れている。
とは言っても、やっぱりオーベと比べたら貧弱な気はしてしまう。
「早くしてぇ……。このままだと漏れちゃうよぉ」
ディアン王子様は頑張って我慢している。
そうだもんね。
ここで汚しでもしたら、敬愛しているオーベとの時間が台無しになるもの。
それは二人にとって可哀そう。
可哀そうだから………、二人とも服従させてあげる。
私は、さりげなく彼の太ももを撫でる。
するとディアン王子様は情けない呻き声を漏らした。
次に漏らしてしまうのは、どこになるのかな。
「ちょっと……。ねぇ、奴隷のお姉さん?あの…」
「大丈夫ですよ。身を任せて下さい。そうすれば、すぐにスッキリできますから」
次に私は彼の下腹部を指でなぞる。
そして意表を突くようにして、軽く押してあげた。
「ひぃっ…!」
本物の悲鳴だ。
もう子どもじゃないのに、子どもっぽい声の出し方。
次に出すのは、もう声じゃないよね。
「第二王子様。もう我慢しなくていいんですよ」
「お姉さんは、さっきから何を言っているの?僕はただ、その……トイレを…うぅ………」
「オーベは受け入れるのが好きで、第二王子様………ディアン様は我慢がお好きなんですね。ステキな兄弟です。たっぷりと可愛がってあげたい」
私は強く彼の体を抱きしめながら、お互いの脚をからめる。
これでアンバランスな状態になった上、今の彼は我慢の限界で身動きが取れない。
つまり心身共に、私の思うがままに操りやすい状況だ。
まず私は慎重に、下半身が露出したディアン様をほんの少しだけ開脚させる。
なるべく刺激を与えないよう注意して、彼の限界が越えないよう気を払う。
「どうですか?もう出したいですか?」
「出したいよぉ。僕、こんなことされたら……もうダメで…」
「ふふっ。かわいい顔。でも、まだまだです」
「うぅっ、なんでぇ……。どうしてこんあことをするのぉ…!」
弱々しい姿は、甘える愛玩動物みたいで意地悪したくなる。
本当なら私を簡単に押しのけるはずなのに、今はできない無様なディアン様。
何もかもが女の子より可愛いらしい。
「服も脱げないディアン様のために、私が一から用足しの仕方を教えますね」
「そんな必要な…、うぐぅ……!?」
彼が断わろうとする直前、私はディアン様の柔らかい下腹部を押す。
それだけで彼は絶対服従してくれて、涙目で項垂れるのだった。
「お姉さんの言う事は聞くものでしょ?ほら、言われた通りにしなさい」
そう言いながら私は彼をトレイと向かい合せる。
そのとき、ディアン様は困惑する顔を浮かべるのだった。
「えっと、座らないの?」
「奴隷の男性は、みんな立って済ませていましたよ」
「ど、奴隷のようにするの!?僕が……!?王子なのに!」
実際のところ国民のほとんどが立って済ませているけど、ここは奴隷扱いをしたいので私は余計な言葉を付け加える。
「えぇ、そうですよ。だって今のディアン様は何も知らなくて、奴隷より劣っているじゃないですか。奴隷ですら一人で用足しができるのに」
「でも、こんなの初めてだからトイレを汚しちゃうよ」
確かに王族専用トイレだから、実は立って済ませることは想定されていない。
だけど、そんなのは私の前において言い訳にもならない。
「大丈夫ですよ。汚してもお姉さんが掃除してあげるから。だから安心して済ませましょうね」
「お姉さん……」
ようやく私が優しい口調で言ったとき、ディアン様は簡単に落ち着いた雰囲気を見せた。
あまりにも純真で単純だ。
とにかく私は思いつき同然に、用足しの仕方を手取り足取り教えた。
「さぁ、自分を汚さないよう気を付けて。そしていっぱい我慢していた分、いっぱい気持ちよくなって。頑張っていたから、たくさんスッキリできる。がんばれディアン様」
「うっ…ふっ、…うぅ………ぅあ…」
「ほら、よく見て。いっぱい、ディアン様の体から出ているよ。溜まっていたものが全部出ているの。その感覚、忘れないで。そして全身で感じて」
すぐに終わる用足し一つで、ディアン様は解放的にして開放的な気分を覚えていた。
とても爽快で、溜まっていた悪い気持ちが一気に抜けていくのは快感なのだろう。
見れば満足そうな顔をしており、彼は大きな溜め息を吐いた。
「はぁ~………、なんだか凄かったよ。用足しなんて毎日していることなのに、こんな気分になれるなんて」
最高に晴れ晴れとした表情を見せてくれる。
ただ、……ちょっとマズいかもしれない。
多分というより、間違い無く私はディアン様を変な性癖に目覚めさせてしまった。
私の都合とワガママで、彼を変えてしまった。
それは良心が痛むところが少なからずあったけど、この独特な達成感は病みつきになってしまいそう。
とりあえず今は取り繕う他ない。
「良かったですね。それではトイレは私が綺麗にしておきますので、どうかお戻りください」
「うん!ありがとう、お姉さん!できたら、また付き合って欲しいな!」
そう言って礼を口にするなり、ディアン様はご機嫌な様子で個室から出て行く。
だが、私は遅れて重大な問題に気付くのだった。
「あぁお待ちください第二王子様!服を!服を忘れております!」
彼はトイレから出た直後だったが、なんとか私が全力で呼び止めた。
それによりディアン様の痴態は寸前のところで晒されずに済み、事なきを得た………と素直に言えるのかは分からない。
なぜなら、あれからディアン様は用足しをする度に私を探すようになってしまい、我慢が癖になったのだから。




