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運命の選択

夜中。

暗闇のシオンの寝室の机の近くの隅に身を隠していた。


あの後。

私はシオンを襲って来る暗殺者に備えて、彼の部屋に来ていたのだった。


(寒っ……。やっぱり夜は冷えるわね。現実世界みたいに暖房とかあればいいのに)


両腕を組み、体育座りで座りながら寒さで身体を震わせている私に突然、シオンはバサッと私には何かを被せてきた。


「わっ!?」


「これでも被っていろ」


素っ気ない言葉と共に彼から投げられた物は毛布だった。


「有難う」


「俺は休んだフリをして敵を待つことにする。お前はここから逃げずに敵が来るのを確かめるんだ。分かったな」


「もちろん、分かってるわ。何度も言わなくっても大丈夫よ」


シオンは私を一瞥したあと、ベットに横になった。

室内は静寂で支配をされていた。

予定では、暫くしてから暗殺者が部屋の何処からか侵入し、シオンを襲うこととなっている。

シナリオ通りに進んでいるとはいえ、確実にその通りになるとは限らない。

アイリスがいることでシナリオのズレは生じているのだ。

もしかしたら、暗殺者が襲ってこないこともありえる。

そうなったら私はシオンに殺され、死亡フラグは確定してしまう。

だからと言って、暗殺者が来ても私の身の安全はどこにも保証はされない。


これって、どっちに転んでもろくなことにならないような気が……


そんなことを思っていると、窓から黒い何かが動き、窓が僅かに開いた。

そして、その隙間から黒ずくめの暗殺者が部屋の中に侵入して来たのだった。


(来た!?やっぱりシナリオ通りなんだわ!!)


暗殺者は足音を忍ばせてベットで眠っているシオンに近づいていく。

だが、シオンは何も反応を見せない。

もしかして、本当に眠ってしまっているんじゃないかと心配になってくる程、彼は動かなかった。

私は心配になり、身体を動かしかけたその時、暗殺者は眠っているシオンに近づき、ナイフを取り出した。


ナイフの刃には黒い禍々しい渦を纏い、刃からは黒い液が滴り落ちていた。

暗殺者はそれをシオンへと突き刺そうとした。


「ダメ!?」


私はその場から立ち上がり、シオンの元へと慌てて駆け出そうとしたが、それより先にシオンは瞬時の速さで身体を起こし、既に手にしていた短剣で敵の攻撃を防いだ。


「なに!?貴様気がついていたのか!?」


「やはりお前はカタストロフィ国の者だな。俺の命を狙うとはいい度胸だな。お前は誰の命令で動いている」


「お前に教える義理はない。ここで死んでもらう。カタストロフィ国の為に!!」


「それは出来ない相談だな」


暗殺者はナイフでシオンに攻撃を繰り出していくが、シオンも彼の攻撃を短剣で防ぎ、押していっていた。

シオンの短剣を繰り出すスピードは凄まじく、相手に攻撃の隙を与えず、敵は押され、劣勢になっていた。

暗殺者は苦悩に顔を歪めたあと、シオンの短剣が彼の胸を貫こうとした。

その時、彼はいつの間にか手にした魔法石をシオンに向かって放った。


カッ!!!


と、白く眩い光がシオンの視界を奪った。


「しまった!?」


「悪いがもう終わりだ」


冷酷に告げる暗殺者はその声と共に彼の胸へとナイフを向けた。


(そんなこと私が絶対にさせない!?)


私は駆け出し、近くにあったスタンドライトを手にして、無我夢中で暗殺者の方へと走り出した。


この時の私の頭の中はシオンに信用される為に暗殺者を倒すことなんって忘れていた。

ただ彼を助けたい。

なぜだかわからないけど、私の中でそんな思いが私を強く動かしていた。


───シオンはこの世界にとってラスボスで、私にとって、もしかしたらあの王子と同じ脅威となる存在になるかもしれない。

同じ脅威ならば、彼にかけてみたい。

この世界の未来は神様である私が変えてみせる───。


「はぁぁぁぁ!!!」


私は暗殺者へとスタンドライトを勢い良くぶつけた。


「この小娘が!?」


暗殺者は右手で魔法陣を出現させ、瞬時にスタンドライトを破壊したあと、シオンに向けていたナイフを私へと向け、私の腕を掴んで首筋にナイフを刺そうとした。


「邪魔をしやがって、お前から殺してやる!?」


(しまった!?)


死を覚悟した瞬間。

私の目の前に赤い魔法陣が出現し、敵のナイフを弾いた。


「なに!?」


驚く暗殺者の背後に冷たく冷酷な声が聞こえた。


「お前の相手は俺のはずだったが。もっともお前には俺の相手は務まらなかったようだな」


ドス!!シオンは暗殺者の背中から短剣を突き刺し、暗殺者はその場に身体のバランスを崩し、その場に倒れてしまった。


「くっ……」


「この俺に刃を向けた罪をあの世で死よりも深い地獄で味わってもらう」


冷たく吐き捨てるように告げるシオンの足元に紫色の輝きを増した魔法陣が出現し、魔法陣から黒い霧が現れ、霧は暗殺者の身体を取り囲んだ。


「やめっ……やめろ!やめてくれぇぇ」


暗殺者は抵抗しながらも、霧に身体を取り込まれ、魔法陣の中へと沈んでいった。


「これで終わったの……」


私は呆然としたままそう呟いた。


「ああ。奴には先程闇の冥界に通じる魔術『闇の扉』を使ったからな。生きて戻って来るには不可能だ。奴の魂は一生冥府を彷徨うこととなるだろう」


シオンは私の方へ瞳を向けて、私の傍に近寄って来た。

真剣な顔で見つめてくる彼に対して、思わず私は後ずさってしまう。


(もしかして、私シオンに利用価値が無いと判断されたの!?なんか、すごい真剣な顔でこっち見ているけど……。それとも何か気づかないうちにやらかしちゃったとか……)


緊張しながらも、そんなことを考えていると彼の口から意外な言葉が聞こえた。


「お前、名は何というんだ?」


「へ?……アイリス·カトルナートだけど……」


「そうか。では、アイリスお前を俺の妻として迎えることにする」


「えっ?……どうして?だって、あなたは私のことを利用価値があるかどうか判断していただけじゃないの?どうしてそれが、妻にすることになっちゃうのよ!」


私は動揺しながらシオンに訊ねる。

そんな私に対してシオンは至極冷静な顔で私に答えた。


「お前の言う通り、お前には未来を視る予知能力がある。その力はこのエルガルド王国にとって有益なものをもたらすものだ。それに先程、お前は丸腰のまま臆することもせずに敵に向かっていった。そんな奴初めて見たぞ」


「だって、あれは身体が勝手に動いて……」


そう言う私にシオンは一瞬だけ柔らかい表情をした。

だけど彼はすぐに表情を真剣なものへと戻した。


「お前みたいな面白い奴傍に置いておくのも悪くはない。俺はお前を妻にする。お前には拒否権はない」


シオンに認められるようにするのが目的だったけど、まさかこんな展開になるなんって聞いてないよ~~!!


でも、シオンの妻になるということは当面は私の安全は確保されるということになるわよね……。

だとしたら、シオンがどういうつもりで私を妻にするのか分からないけれど、ここでシオンの提案に乗らない訳にはいない。

それに、私を殺そうとしたあの王子よりも私の命を救ったシオンをこの世界の王にしてやる!

あの腹黒王子に復讐して、シオンを世界一の王に私が導いてやる!!


(シオンを世界一の王にすることが私が死亡フラグを回避する方法なら、私は絶対に彼を導いてみせる!だって、私はこの世界の神様なんだから!!)


「分かったわ。あなたの妻になるわ」


私は強い瞳で彼を見つめてそう言ったのだった。



(4話 終)



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