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行動しなければ始まらない

翌日。

私は自室で暇を持て余していた。

シオンに気に入ってもらう為にはまず、ここで情報を集めないといけない。


(シオンが欲しがりそうな情報はカタストロフィ国の情報なんだろうけど、彼の役に立つことを示すためには情報だけじゃなくって、この国の未来を彼に伝えること。でも、私が介入したことによって、この世界のシナリオにズレが生じているかもしれない……。だから、まずここでちゃんとシナリオ通りの展開になっているのか確かめないと!)


私は勢いよくソファから立ち上がった。

シオンからここから出るなと言われてはいるが、ここで一人じっとしていても情報なんって手に入らない。


(だとしたら、自力で情報を手に入れなきゃよね。行動あるのみよ!)


私は扉のドアを開こうとした。

だが、ドアには外側から出られないように鍵が掛かっていた。


「そうよね……。普通は鍵掛けるわよね。私信用されてないんだし」


だけど私にはとっておきの秘策がある。


私は結っていた髪からピンを取り出し、それを鍵穴に入れてガシャガシャと音を立てながらピッキングした。


「見よう見まねだけど、ドラマとかだったらこれで部屋のドアとか開くはずなんだけど……」


暫く繰り返したあと。

カチャンとした音がして部屋の鍵が開き、私は思わず喜んだ。


「やった!開いた!!」


私は扉をそっと開け、私は辺りを見渡しながら誰もいないことを確認して、こっそりと部屋を抜け出したのだった。


****


(情報を持ってそうな人って誰なんだろう?定番といえば噂好きのメイドとかなんだろうけど……)


そんなことを考えながら、私は長い廊下を歩いていると、運良く掃除中の三人のメイド達を見つけた。


(よしっ!メイドの会話を聞いてれば何かわかるかもしれない)


私は近くの壁に隠れて、彼女達の会話から情報を得ることにした。

メイド達は廊下の窓拭きをしており、私の存在には気づかず、手を動かしながら噂話をしていた。


「ねぇ、聞いた!!昨日王様が連れて来た客人。どうやらカタストロフィ国の人間らしいわよ」


「知ってるわ。それ!私、昨日二人が歩いているところを偶然見ちゃった!とても綺麗な方よね。あの格好からすると、もしかして王族関係の人間かしら?」


「それは絶対に無いわよ。だって、うちの国は昔からカタストロフィ国と戦争しているのよ。それに、私はカタストロフィ国の人間はあまり好きではないわ。例え王の客人かもしれないけど、カタストロフィ国の人間はこの王国から出ていって欲しいくらいよ」


三人のメイドの中の一人、15歳ぐらいのセミロングに勝ち気そうなメイドは悲しさと悔しさを織り交ぜながらそう言っていた。


(ここでも、やっぱり私は嫌われ者なんだ……)


私は小さくため息をついた。


(仕方ないと言えば仕方ないよね……。ここの人達にとっては私は敵国の人間だもの)


それに、この国ではカタストロフィ国とエルガルド王国の戦争があっている。

カタストロフィ国の人間である私がこの国の人間に嫌われることは仕方がないこと。


(でも、あれ?)


カタストロフィ国とエルガルド王国の戦争はカタストロフィ国の王が戦争で亡くなったあとにクリスが王座に着いた時、シオンがカタストロフィ国に攻め込み、戦争は卑劣を極めることとなる。

だけど、それまでの間互いの国には小競り合い程度だったのに……。

どうして、そこまでカタストロフィ国を嫌う必要があるの……。


「ところで話は変わるけど、明日は魔術剣士試験ね」


黒髪のロングヘアーのメイドは話を変えるように楽しそうに話し出した。


「そうね!どんな方が選ばれるのか楽しみね。選ばれた方は皆ここの兵士になるんでしょう。しかもなぜだか選ばれた兵士は皆イケメン揃い。のちに兵士から騎士に昇格する者だっているし、本当に楽しみ~~」


「またサラはそんなこと言って。本当にイケメン好きなんだから」


「良いじゃない!カッコイイのは事実なんだし、遠くから見ている分は目の保養になるでしょう。でも1番はやっぱりうちの王様だけどね!」


「わかる!!あの誰も寄せ付けないクールな雰囲気が堪らないわよね。しかも騎士団長様と互角の腕を持ち、他国の姫たちの誘いを片っ端から断り、一切誰にも靡かない。誰にも落とされない鉄壁の王。素敵だわ!!」


(うわぁ~~。ラスボスとはいえ、さすが女の子には人気だなぁ……。確かに顔はカッコイイからなぁ……)


でも、待って。私何か忘れているような気が……。


(魔術剣士試験……?どこかで聞いたことがあるような……。そっか!思い出した!!)


エルガルド王国は魔術に特化した国。

カタストロフィ国は魔術ではなく、剣術が全てだけど、エルガルド王国の兵士や騎士は基本魔術を使えなければ国の兵士になれない。

その為に『魔術剣士試験』を開き、王の謁見の中で合格した者だけが兵士となれるのだ。


だけど、この『魔術剣士試験』の夜。

シナリオの中ではシオンの元にカタストロフィ国からの暗殺者が送り込まれ、シオンは暗殺者に刺され重症、もしくは殺されかけてしまう。

シオンの負傷を知ったカタストロフィ国はエルガルド王国に攻めて来る。


それが今日『魔術剣士試験』の夜なんって……。

シナリオの大筋は進んでいるってことなんだわ!


(シナリオを変えるには暗殺者からシオンを護るしかない。シナリオを変えないと!そうと決まったらシオンにこのことを伝えないといけない。シオンが信じてくれるのか分からないけど……)


そう思い、私はその場から動き出した。


****


私は廊下を歩きながらシオンを探していた。


(シオンが行きそうな場所ってどこなの?王だから公務とかに行ってるのかしら……)


でも、早めにシオンに会って伝えないといけない。シナリオ通りに進んでしまうと大変なことになる。


シオンがもし死んでしまえば私は確実に死亡フラグになってしまう。

それだけは絶対に阻止しないと!


(シオンに会うためには、やっぱり大人しく部屋でシオンを待っていた方が良いのかしら?でも、部屋に来なかったらシナリオを変えることは出来ないし……)


やはりここは自力でシオンを探すしかないのか。


そんなことを考えていると。

私は突然誰かに声を掛けられた。


「誰だ」


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