利用価値の証明
青年から連れて行かれた先はある王国の城だった。
彼は私を城の中にある一室へと連れて行った。
室内の中は豪華な調度品やベッドがあり、なぜ自分がこんな場所に案内されているのか不思議で堪らなかった。
(何で私こんなところにいるの?これどう見たって王族とかの客間よね?)
訳が分からず混乱している私に彼は言った。
「お前は暫くの間ここで過ごしてもらう。ここにいる間は食事はここに運ばせる。お前の身の安全、命の保証はしてやる。だが代わりにお前の国であるカタストロフィ国の内部、王族に纏わる情報を全て話してもらう。それがお前を生かす条件だ」
(この人私を利用する為にここに連れて来たんだ。しかも王族に関わる人間だって勘違いされちゃってるし。仕方ないわね。ここは話を合わせるしかないわ)
「見る限り、お前は貴族の人間だろう。それくらいの情報は持っているはずだ」
「わかったわ。あなたに情報を渡したら私を解放してくれるの?」
私はハッタリをかましながらも強い瞳を彼に向けてそう訊ねる。
だが彼は私を射抜くような視線を向けた。
「お前には情報以外にも利用価値があるかもしれん。利用価値がある以上ここにいてもらう。そのつもりでいろ」
(ひぇぇぇぇ~~。コイツ本気だ!!自分の利益の為に私を利用しようとしてる!!)
「良いか。この部屋から出るなよ。間違ってもこの俺から逃げようと思うな。もし逃げたとしても必ずこの俺がお前を捕まえに行く。俺に無駄なことをさせるなよ」
氷のように冷たい表情を向けられて、思わず足がすくみそうになってしまう。
だけど彼に弱みを見せてはいけない。
自分の直感がそう告げていた。
私は彼を見ながら毅然とした態度で返事をした。
「安心して約束は守るわ」
青年は私の顔を一瞥したあと、その場から踵を返し、部屋から出て行った。
パタンと扉が開く音が聞こえ、一人になった私はほっと息をつき、思わずその場にへたりこんだ。
「はぁ~~。疲れた……。とりあえず、これでひとまずは安心かな」
そうじゃない!!
ちっとも安心なんってないじゃない!!
私はハッと気づいて勢いよく顔を上げた。
青年は私のことをあの金髪の王子がいる国の王族の関係者か何かと勘違いをしていた。
彼に国の情報を渡さないと彼に殺されちゃう!!
ピンチなことに変わりないじゃない!!
ここで悲観になったって何も変わらない。
まずは動かないと。
そして。
(あの人に利用価値がある人間だと認めさせて、気に入られるために頑張らないと!)
私は意気込み、決意を新たにするのだった。