06 地獄と現実、それも事実
「死にたくない死にたくない!死にたくない~~!」
ボクは瑞稀と一緒に、森の中を半泣きで走り続ける。
ここの森、クマがいるんだけど~?!
しかも魔力量的にわたしと同じくらいの強さか、それ以上なんだけど?!しかもそれが5匹いるし!
「ねえ!?これどうすんの?!」
と瑞稀が焦りながら言う。
「さすがに知らないって!」
「私たちには、ザクトさんみたいな最強レベルの契約高精霊もいないし、まだ実戦は経験ないし!!無理だってば~!」
もう、瑞稀、泣いちゃってるし。
「ああ!!もういいや!!」
ボクはそう言って足を止めて、振り返る。
「やああああああああ!!」
そのままボクは、追ってきていた5匹のクマの中で、一番前にいたクマが立った瞬間を狙ってお腹を斬る。
しかし、切り口は浅く、そのクマは上げた手に着いた爪を、ボクへと振り下ろす。
や、やばいかも……。
ってかやばい!あのクマの攻撃なんかくらったら、相当……。
「あんた……!」
ボクが覚悟をして目をつむった時、瑞稀の声が聞こえる。
その瞬間、目の前のクマは真紅の炎の塊に1メート程吹き飛ばされる。
瑞稀は、驚き後ずさりをするボクの両肩をつかんで思い切り揺さぶる。
「あんたさ、急に振り返っていきなり戦うとか、ないでしょ!私もいるんだからね!」
そして、瑞稀はうつむいてからボクの方を向いて言う。
「私とあんたで、ここに呼ばれたんだからね!?いい?二人いることを忘れないで!!」
……っ。
「そっか……そう、だよ、ね?」
確かにそうだった。
ボクはここまで、とにかく自分のことを考えてきた。
異世界に召喚されて、いきなり聖女なんて言われて。ボクはホントに心細かった。正直、ボクはボクのことをかわいそうだと思ってた。
でも、それは瑞稀だって同じ。むしろ、前の世界で親がなかなか家に帰ってこなかったボクと違って、瑞稀は家族も兄弟もいて、一緒に毎日暮らしてた。その分、瑞稀の方がつらかったのかもしれない。
なのに……ボクは……!
「ごめん、瑞稀、ボク、自分のことしか考えてなかった……。」
ボクの目からこぼれる涙を、瑞稀はぬぐって、微笑んで言う。
「っふふ、ずいぶん素直だね!でも、そ。そういうこと!」
いつもは悪態をつく、瑞稀も素直だった。
でも、実際瑞稀の言うことはホントに正しかった。
ボクは、瑞稀に微笑みを返す。
と、その瞬間。
ひるんでいたクマは、あとから追いかけてきた仲間と共にボク達に襲い掛かる。
さっきは一匹でも倒せなかったクマが今度は5匹も一気に……。
どうやって倒そう!?
ボクは今、スキルは『聖女』『ソードマジック』『剣の読み』『魔力量可視化』しか持ってない。瑞稀は『魔導士』『聖女』『聖炎魔法』『魔力量可視化』を持ってる。
……。
まずボクの『剣の読み』は敵が剣じゃないから使えない。『ソードマジック』も使えない。剣に自分のスキルを付与するスキルだけど、ボクのスキルに付与できるスキルはない。
っと!ボクのスキルってマジ使えないスキルばっかだな!!
……。
いや、そうでもないかも!そう、『ソードマジック』でつけられる自分のスキルはない。
でも!
「瑞稀、ボクの剣に『聖炎魔法』を使って!」
「え!?それじゃ、信じるよ?!」
瑞稀はボクの剣に向かって『聖炎魔法』を撃つ。
ボクの剣はその炎をきれいにまとう。
そう、『ソードマジック』はスキルを剣に付与する。自分のスキルじゃなくてもいい!
ボクはその炎をまとった剣で、さっき斬った、ケガを負っているクマを斬る。
すると、さっきとは大違いの切れ味でクマは倒れる。
いける!
ボクがそう思ったその時、ボクは後ろからクマが襲い掛かってくることに気が付く。
やばっ!
ううん、大丈夫! 瑞稀がいるから。
ボクは瑞稀を信じて、前にいるクマを斬る。
後ろのクマはもちろん瑞稀がぶっ飛ばした。
ボクはクマたちを何回も斬って倒していく。瑞稀も『聖炎魔法』で援護する。
二人いるっていうのの強さはこれ。これをやっと生かせる時が来た!
ボクたちは10分くらいかけて敵を一掃した。
「ふう、これでやっと終わった……。」
瑞稀はそんな言葉を漏らす。
ボクもつかれた。
とはいえ、こんなところで休んでいたら何があるかわかんないってことで、ゆっくりとではあるけど進むことにした。
……。
クマとの戦いから30分くらい歩いただろうか。
ボクたちは今、恐ろしいものを目にしている。いや、これはもはや何なのかもわからない。
ボクたちの目の前にはものすごく大きな穴がある。いや、地割れとか、そういうことじゃない。どちらかと言えばある程度の大きさの隕石が落ちたような穴だ。
「な、なにこれ……。」
瑞稀は青ざめた顔で言う。
「ボクにもわかんないよ……。」
ボクと瑞稀は少しあたりを見て回る。
と、少し離れて散策していた瑞稀がか細い声で言う。
「え……?これ……って……。」
瑞稀のあの顔はおそらくただ事ではない。
ボクが近づくと、瑞稀は何かをふるえて指さしている。
ボクはそれを少し恐れながら見る。
「……っ!」
そこにはザクトさんの持っていた銀の聖剣が地面に刺さっていた。
「ザク……トさん、の……」
瑞稀は崩れ落ちる。
それもそうだろう。ボクたちが王国にいたとき、ボクたちに誰よりも親切にしてくれていたのはザクトさんだったんだから。
この森に入った時にあった強大な魔力はもうない。おそらくそいつがやったんだろう。許せない。
でも、それでも
「前に進もう。」
ボクは言った。
そして続ける
「もしも、心が張り裂けそうだとしても、事実はこれなんだから。この世界は前にいた世界とは違うんだよ……。」
「そう……だね。絶対にいつか、ザクトさんを殺したヤツを倒そう。かたきを……取ろう。」
ボクはただ一言言う。
「うん……」
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