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相棒

戦闘シーンは苦手。妄想でカバーしてくれ。

 逃げ惑う少年を人形を通して彼は見ている。


 木で作られた等身大の人形こそ彼――アルルカンの人形師と呼ばれる存在の武器であった。

 彼は人形師。

 その名のごとく、人形を作り、操る。


 魔力を込めた糸で一体一体自分が作り出したまさしく子供と呼べる人形を巧みに操って、戦う。

 年齢の問題で聖騎士を引退こそしたが、全盛期には10体以上の人形を同時に操って戦場をひっくり返したほどだ。


 その彼はその能力を使い、聖騎士に成りたい……または……になる可能性のある子供達に実地で戦いを教え込む。


 それが聖騎士を止めた彼の今の役割。


「何を選ぶか?」

 サーカスのテントにはたくさんの小物が残されている。


 マーカスは猛獣遣いの鞭だった。

 トールは怪力自慢の大男のハンマー。

 キャルは盾。


 このサーカスのすべての大道具は聖騎士候補の子供達自身が自分を守るために選ぶ武器が置かれている。

 このサーカスから聖騎士に成った三人はそれぞれ命の危機が迫った時にとっさにそれらの道具を手にして戦い続ける。

 ここで選んだ武器こそが生涯の武器――相棒になる。


 聖騎士になりたいとやってくる子供に最初にするのはその武器を見定めさせる事。


 逃げてばかりではらちが明かない。


 それを見つけて反撃をするのを待っているのだ。


 だが、人形の攻撃をいまだあの子供は逃げるだけだ。


「自分の相棒を見いだせない者に聖騎士に成れない」

 ましてや魔物が現れた。魔王とその部下が現れたのだ。


 戦う覚悟がない者に未来を託せない。








 逃げる事しか出来ない。

(反撃をしたくても……)

 避けるのがいっぱいいっぱいだ。


 このままじゃ………。


 そう思った矢先に外套をまとっている人が脳裏に浮かぶ。

 その幻が口を開く。


『帰って来るのを待っていろ』

 ずきっ


「そんな簡単に帰ってたまるかっ!!」

 俺はみんなを助けるのを誰かに委ねたくないのだ。


 悲しみと憎しみと怒りと隣り合わせだと言われても誰かに任せて待っているなんて出来ないっ!!


「絶対に!!」

 ふと何かに触れた。


 無我夢中だった。


 それを握って、気が付いたら。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 人形に向かって反撃していた。


 人形はあっさりそれを防いでしまう。

 当然だ。


 そんなあっさり攻撃をして倒せるなんて思っていない。


 でも、何度も攻撃すればいつかは倒せるはずだ。

 

 ばんっ


 人形に身体を吹っ飛ばされる。

 テントに身体を打ち付ける。


 





「武器を選んだな」

 彼はそれを見て告げる。


 串刺しトリックに使う刃物。

 人を箱の中に入れて次々と刃物で箱を刺していくショーだ。


 その刃物を彼は手にしたが、剣の使い方はつたない。


「使い方を教えるところから始めるか」

 だが、もういいだろう。


 とりあえず、第一難問は達した。


 人形を操り、少年の身体をテントに叩きつける。


「今日はここまでだ」

 もう聞こえていないだろうと思いつつ告げて回収に向かった。


 そう。そのはずだった――。


 ゆらぁぁ


 テントに叩きつけて倒したはずの子供が立ち上がる。


「負けられない………」

 歯を食いしばるように声を出す。


「俺はみんなを………」

 強い覚悟を決めた声だった。


「みんなを助けるんだ!!」

 吠えるように走り出す。


 さっきまでのつたない動きが嘘みたいな力強い動き。


 緑色の目が光る。

 その光は。


『僕は強くならないといけない。泣いているばかりじゃもう何も守れない!! あんな想いは一度で十分だ!!』

 親友……というか戦友が自分の育てた子供を見て欲しいと声を掛けたので会いに行った。人形師としての全力で叩きのめして欲しいと。


 弟子相手にそんなことを言うという事は余程見どころがあるのかさっさと聖騎士を諦めさせたいのかどちらかと思って会いに行ったのはまだ10歳にも満たない子供だった。


 この国では珍しい黒髪で、それゆえ迫害されてきたのだろうぼろぼろにやせ細って実年齢よりも成長が遅れていると思われた。


 だが、その子供は自分が選んだ大鎌を構えて、前線を退いたとはいえ本気で人形を操った自分をその気迫だけで退けさせた。


『風雷斬!!』

 ばりりりりん

 

 久方ぶりだった。

 人形が壊されたのは。


 動揺しているこちらに気付かずに力尽きて子供は倒れる。


『オ…オシリス……!?』

『この子はおそらく……聖騎士以上になるだろう。いや、なろうとしている』

 だからこそいろんな相手と戦わせて育てないといけないと思った。


 強さの先を決めつけないように。

 重すぎる覚悟に潰されないように。 


『本来ならこの子と同じくらいの年頃の共に成長し合える相手がいればいいが………』

 心配していた戦友の声。


 そして。


 その子が数か月後に大鎌に選ばれて英雄になった。


 わずか9歳。

 その半年後に楽器の英雄の危機を救い出した稀有の存在。






「まさかな……」

 その子とこの子はその目に宿す覚悟が似ていると思った。


 だからこそ。

「力み過ぎだ」

 全力で叩きのめして初日を終わらせた。

短いけど。勘弁して

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