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アルルカンの人形師

巡業という名目で人材を確保をしている。

 街で会った時は鎧を着ていたが、今は白い軍服に身を包んでいる。胸には教会のシンボルに剣と盾のシンボルがある。

 ………そう言えば鎧にも同じ模様があった。


「よかった。目を覚まさないと思った……」

「――アルルカンの人形師」

 何かを言い掛けた聖騎士を遮ってその言葉を口にする。


 ぴくっ


 マーカスと呼ばれた街でぶつかった聖騎士が反応する。


「君……どこでその名前を?」

 名前を知らない方の聖騎士がどこか警戒したように尋ねてくる。


「………夢で」

 夢で教えてもらった。


 がたっ

「そんなわけ!!」

 勢いよく立ち上がり椅子を倒す。


「トール」

 マーカスが立ち上がった聖騎士の肩に手を置いて、落ち着けと促す。どうやらもう一人の聖騎士の名前はトールというらしい。


「人形師がどうした?」

「会えと……目的を果たすために」

 淡々と銀灰色の目が向けられて聞かれる。


「目的?」

 トールが口を挟んでくるが、それをマーカスが手を伸ばして手出しをするなと首を振る。


「村人が帰ってくるまで待っていろと言われた。でも……」

 待てなんて言われて素直に待てない。


「何が起きているのか分からないけど、何かしないといけないんだ……元に戻すために」

 悲しみと憎しみと怒りと隣り合わせの道だと言われても………。


 二人は顔を見合わせて頷き合う。


「………アルルカンの人形師は聖騎士を育てる人だ」

「聖騎士になるつもりか?」

 聖騎士になれとあの夢の男は言っていたのか。でも、なんかニュアンスが違った気がする。


 でも、聖騎士………。


 村人を連れ去ったのは聖騎士。


「――なる」

 それが自分のすべき事なら。


「トール」

「ああ。――ついてこい」

 寝巻だったので着替えろと言わんばかりに服を投げ渡される。


 着替え終わるとすぐに外を出る。

 外に出ると自分が寝ていたのは街の教会だと知った。


 二人は一言も何も言わずにずっと歩き続ける。


「ここだ」

「えッ? ここって……?」

 サーカス団のテント。


「サーカスを隠れ蓑にして、神殿は子供を集めて聖騎士候補を集めている」

「アルルカンの人形師はその聖騎士教育係の一人だ」

「……………」

 言われたままに告げたけど、とんでもない事になったのではと冷や汗が流れる。


「止めるか?」

「止めません!!」

 ひるんでしまったがここで足を止めるわけない。


 みんなを助けるのだから。


――**が一人で戦っているからな。

 あの夢の中の男の声がした。


「えッ……」

「何ぼんやりしている!?」

 トールに聞かれたが、

「なんでもありません!!」

 そうだ。何でもないのだと強く告げると。


「そ、そうか……」

 なぜか曳かれた。


「なんでもないのならいいんだ……うん……」

 気をとりなして……こっちだ。

 声を掛けられて、マーカスが先に歩いてテントの入り口を持ち上げる。


 テントの中では練習中だったのか動物を訓練している感じでごちゃごちゃしていた。


「マーカス? トール?」

「キャル。なんでいる?」

 二人に気付いて近付くのは大きな盾を持つ女性。


「アリア様の護衛の任務が休みだから団長に会いに来たのよ」

 護衛の休み?


「大丈夫なのかアリア様は五年前に」

「だから護衛の質を伸ばしたいと思って訓練をしに来たのよ。アリア様には他の護衛が付いているわ」

 でも、長居はしないわよ。筆頭護衛はあたしなんだから。


「ところで」

 じろじろと見つめられる。


「この子は?」

「聖騎士希望だ」

 マーカスの簡単な説明。


「そっか。あたしはキャル。聖騎士になったらよろしくね」

 名前も聞かれない。後今はよろしくしないというニュアンスに聞こえた。


 いや、それ以前に彼女の格好は男女の違いこそあるが二人の着ている軍服と同じものだ。


「貴女も聖騎士ですか?」

 確認。


 それに気づいた事にキャルと名乗った女性は面白そうに猫のように目を細めて。

「ふ~ん」

 じろじろと顔を近付けて見詰めてくる。


 少し動いたらぶつかりそうな近距離でドキドキしてしまう。


「この子残れそうね」

「お前はそう思うか?」

「そうだといいがな」

 好き勝手に告げて、

「そこら辺は団長に鍛えられてから教えてあげるわね」

 と面白がるように、結局答えなかった。


「――客人か?」

 声がした。


 そこには一人の道化師の格好をしている人物。


道化師(アルルカン)の人形師。このサーカス団の団長だ」

 トールがそっと説明をして、

「団長。聖騎士になりたいという子供を拾いました」

 マーカスが告げる。


「……………」

 団長はそれを聞いても反応しない。


「あの!! よろしくお願いします!!」

 大きな声であいさつをすると。


 しゅたっ


 目の前に等身大の人形が現れる。


「人形を倒して見ろ」

 その言葉に合わせるように人形が襲い掛かってくる。


「これを対応できなければ不合格だ」

 告げると同時にマーカス。トール。キャルを連れてテントの向こうに去っていく。


「たっ、倒すって!!」

「武器はテントにある物を自由に使え」

 それだけ告げると完全に姿が見えなくなってしまった。


 さっきまでテントに居た動物もすべていなくなり、人形にひたすら襲われるのを逃げ続ける。


(倒す……これを……)

 避けるのが精いっぱいだ。


 これをどうやって倒せばいいのか。


 武器があると言われたが、武器がどこにあるのか分からない。


 やり方が分からずただテント内で逃げるしかなかった。

マーカスの武器は鞭。

トールの武器はハンマー。

キャルの武器(?)は盾。

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