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夢 1

あり得たかもしれない未来…………(ある時間軸では実際に起きた惨劇)








 手紙を街の郵便組合に出してくれと頼まれたから街に下りて、子供達にお土産としてたくさんのお菓子を購入した。


 袋がパンパンになってしまい、破れないように気を付けて慎重にそれでいて、速足で帰路に着く。


「喧嘩にならないといいけど……」

 何種類も買ったけど、きっと取り合いになってしまうんだろうな。

 喜んでくれるだろうかと子供達の笑顔を想像して笑みが零れる。


 早く帰ろう。みんな待っている。


 村に戻ればいつもの光景があると思っていた。





 ぐるるっ

 ぎゃおぉぉぉぉ


 ぐしゃ

 がしゃっ


 むしゃっ


 がりがりがり

 ばりばりっ


「なんだよこれ……」

 四つん這いになった村人たちが争い、殺し合っている。


 いや……。


 がりっ

 ぐばっ


 ()()()()()()()()のだ。


 ぎょろっ


 村人だったものがこちらに視線を向ける。


 じゅるっ

 ぽたぽたぽた


 涎を流し、こちらに狙いを定める。


「あっ……」

 逃げないと。

 本能が告げる。


 がるるっ


 だが、逃げるよりの先に村人が……朝絵本を読んでとせがんできたミーシャが襲い掛かってきて。


(ああ。もう駄目だ……)

 死を覚悟した。


「あえ!!」

 だが、ミーシャの牙は届かなかった。


「ステラ……」

 まるで守るようにステラが前に立っていたのだ。


「おいいいん!! いえうお!!」

「………逃げるよと言っているのか」

 こくん

 まるで言葉を忘れたようにステラが告げるのを聞いて。


 がしっ


 ステラの腕を掴んでやみくもに逃げる。


 だが、どんなに速く走っても追い付かれてしまう。


 だんっ


 引っ張っていたはずのステラが急に俺を抱えたと思ったらあっという間に追いかけて来た者たちを引き離す。


 そして、完全に追手を振り払う。


「おいいいん」

「お兄ちゃんって言っているのか?」

 こくん

 ステラは頷く。


 何が起きたか分からない。でも、

「どうして………」

 当たり前の日々は帰ってこないのだと知らされた。






『何、これ……』

 よく分からないが、そんな映像を見せられた。


 違う。俺が知っているのは。村人同士の殺し合いなんてなくて、聖騎士という人たちが眠らせて………。


――これは、もしかしたら起こったかもしれない最悪の未来。

 低い男性の声が聞こえる。


『誰だ!?』

 誰何の声を上げる。


 ゆらぁ


 後ろに誰かが立っている気配がする。


――さて、お前の現実の続きはどうなっているか見せてやろう。

 すっ


 後ろの男性の手が見える。ぼろぼろの傷だらけの腕。


 映像が変わる。





『エル様。この少女は薬が効きません!!』

 聖騎士が外套を着た人物――エルという人に声を掛ける。


『殺しますか?』

 がたっ


 映像であってもそんな事が許せなくて、拳を握る。


『――大丈夫』

 りぃぃぃぃぃぃん

 鈴を思わせる音が響く。


 鎌から光が現れて、ステラの身体を包む。


『あっ……』

 光はステラの首でひと際輝いて、首輪に変化してはまる。


 色は不明瞭だが、その首輪にひときわ目立つ大きな宝玉が付いていて、それを囲むように小さな宝石がいくつも並んでいる。


『彼女は誰も殺していない。攻撃してきていない。ただ、守ろうとしただけだ』

 淡々と事実を述べる。


『彼女は聖女だ』

『なッ!? 聖女様っ!!』

 騒ぎを聞きつけた他の聖騎士も集まる。


『………僕が英雄として選ばれた時に聖女の武器も共に付いてきた。おそらく、聖女の危機を未然に防いでもらいたかったからだろう。()()()()()の件もあって、魔王達の方が先回りして英雄。聖女を狙っているのだろう』

『ではッ!?』

『………英雄や勇者が選ばれる前に狙われる可能性があるという事だ』

 この村のように。


『至急伝令を!!』

 ばたばたばた

 聖騎士が村人達を連れて動き出す。


 そして――。


『――ステラちゃん』

 しゃがんで目線を合わせたと思ったらエルが呼び掛けるのだ。


 何故、ステラの名前を知っているんだ。俺が呼んだから?


 分からない。疑問を抱くが答えはない。


 ステラも不思議そうに警戒しつつも首を傾げている。

『約束する。この村の人を全員人間に戻す方法を探して戻すと、だけど、それにはステラちゃんの力が必要なのだ。力を貸してほしい』

 ちりん


 フードを外す。


()()に誓って約束を守る』

 エルは何かをステラに見せるとステラが大きく目を開いてエルを見る。


『一緒に来てくれ』

 差し伸ばした手にステラは自身の手を重ねる。


 そこで映像が消える。


――さて、お前には二つの未来がある。

 男性が告げる。


――一つ目は鎌の英雄の言葉通り村の住民が帰って来るのを待つ。いつ帰るのかという不安と焦燥感を味わいながらも平和を満喫する未来。

 感情を消し去ったように冷たい声。


――もう一つは村人を助けるために戦う未来。多くの悲しみと怒りと憎しみの日々で、心にも身体にも傷を負う未来。

 さあ、どうする。


『……………』

 試されている。そう思えた。


『俺は……』

 一人だけ安全な場所にいられない。


『みんなを助ける方法があるのなら進みたい!!』

 きっぱりと迷いなく告げる。


――そうか。

 やはり、その道を選ぶんだな。


――ならば起きたら目の前にいる聖騎士に告げるといい。人形師に会わせてほしいと。

 それがお前の一番強くなる方法だ。

 そう告げる男性に。


『それはどういう……?』

 振り向いた矢先。


 ちゃりん


 物心ついた時から持っているお守りにそっくりなペンダントを下げているのだけかろうじて見えた。ただし、自分の持っている者とは違い方法の柄がきちんと描かれていて、大きさが二倍であった。


『それは……』

 尋ねようと思ったが既にその存在は消えていた。


――アルルカンの人形師。聖騎士を育てる者。そこで戦い方を覚えるといい。

 そう言葉だけ残して…………。


 



 そして、目を覚ましたら街の教会で、

「気が付いたか」

 街でぶつかった聖騎士とその聖騎士と一緒にいた聖騎士がそこに居た。

謎が多くて混乱するかもしれないけど少し待っててね。そのうち説明するから。

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