英雄たちの服の素材
彼らの服の説明。
「ノヴァさま。シエルさま。服の最終確認をしますので着てください」
神殿仕えのお針子さんが服を台車に乗せて運んでくる。
任務が今現在ないので勇者と聖女。英雄が揃って集まっている。
「おっ。やっとか」
椅子に座って、なぜか膝にステラを座らせていたノヴァがステラを隣の椅子に下ろして立ち上がる。
「むぅぅぅぅ」
ステラが不満そうに頬を膨らませている。
「ステラ……なんでノヴァの膝に乗りたがるんだ………」
俺の膝は空いているんだぞと告げたらプイっと横を向かれた。
ショックだったが。
「シエルくんもよばれてますよ。きてたしかめてください」
のほほんとアリアに言われたので仕方なく台車に恭しく乗せられていた服を手にする。
「……………」
正直、手を伸ばしたくない。
凄く貴重な物で作られた高価な材料だと聞かされたら山育ちの田舎者が触れていいものか分からなくて恐ろしく思えるのだ。
「着心地どうですか?」
「おおっ!! いいぜ!! マントもあって流石分かっているな!!」
ひらりとマントを翻してノヴァはご満悦だ。
ノヴァの服は長いマントが付いていて、聖騎士の制服に似ているが色がやや赤みが混じっている黒い軍服によく似たものだった。
「ノヴァくんのふくはどんなコンセプトだったの?」
にこにことアリアが尋ねる。
「ノヴァはとにかく格好いい服だという希望だったから。海軍の軍服をイメージしてみた。マントはノヴァの希望に添うように力を入れたと言っていた」
「あら。よかったわね。にあってるわ」
服の希望を確認してお針子さんに伝えたのはリジエルだったらしい。
アリアが褒めるとステラも。
「ノヴァ格好いい。海賊みたい」
と褒めているのか貶しているのか意味不明な発言をする。
「つまり海の男という感じなんだな!!」
どうだと何度も見せるようにポーズを決めるノヴァに。
「動きも把握したいから模擬戦でもするか?」
リジエルの発言。
「おっ。いいな」
と話がまとまっていく。
「シエルさまはいかがですか?」
お針子さんに尋ねられて同じように身に纏う。
ポケットがたくさんある動きや推服。作業着とかツナギみたいな服がいいと伝えたら。一見すると普通の作業着に見えるが実はそれよりももっと高価であるのが分かる代物が出来上がっていた。
「シエルのコンセプトは動きやすくて、作業道具がたくさん持てる拭くという事でこうなったけど」
「うん。確かに動きやすいが……」
緊張してしまう。
「お兄ちゃん。似合う~♪」
「ああ。ありがと……」
動きがどうなのかと確かめられていろんなポーズをとらされる。
「――じゃあ、模擬戦をするか」
「おうよ」
「あっ、ああ」
リジエルが模擬専用の先を潰してある鎌を手にする。
ノヴァも木造の剣を二振り手にして、シエルもまた同じように木造の剣を手にする。
「がんばって~」
「がんばれ~」
アリアとステラは応援に回って三人で打ち合いをしばらく行う。
………うん。動きの邪魔にならない。
少し動くだけで本当にいい物なんだなと実感できる。
着るのに抵抗があるけど……。
「どうですか?」
「手直しの必要は?」
「ピッタリ誂え向きだぜ」
「違和感はなかったです」
お針子さんの問い掛けに応えると安心したように一度服を回収して予備も作りますと一礼して去っていく。
って……今……。
「予備も作るって……」
とんでもなく恐ろしい事を言われたような………。
「あんな丈夫な服初めて見たぞ!! どうやって手に入れたんだ!!」
ノヴァが興奮したように問い掛けてくる。
「あれは、島守護蛾の繭で作られた絹だからね」
そう言えばそんな話をしていたが……。
「なんだそれッ!? そんな奴もいるのかっ!!」
知らないぞと目を輝かせて尋ねるノヴァに。
「リジエルちゃん。しましゅごがさんにきにいられたのよね」
「気に入られたというか……たまたま依頼があっただけです」
偶然ですよと告げると。
「どうして気に入られたの? 貰えたの? 教えて?」
甘えるように告げるステラの様子を見て、可愛さに悶えていたリジエルはその時の話をするのだった。
余談。
アリアさんの服は城に銀色の糸で雪の結晶の模様が描かれているマーメイドドレス。
ステラの服は赤毛のアンのイメージのエプロンドレス。エプロンには月のアップリケが着いている。
リジエルは胡散臭い魔女のような藍色のフード。下はブラウスにズボン。
没ネタ。
ノヴァの服を闘牛士のような格好にしたかったけど、マントと言えば軍服だよねと変更。
シエルの服装は世界ふしぎ発見のひとし君人形の着ているあれにしようかと思ったけどやめた。




