神風の名前
星武器の特徴
シエルたちと別行動をしたけど、
(やっぱりか……)
明らかに狙われている。
(別行動をして正解だったな)
外套を脱いだけど、きちんとこちらを追いかけてくるのは外套を目印ではなくて、星の武器を目印にしているからだろう。
そんな事を考えている矢先に目の前に住民が現れて襲い掛かってくる。
しゅっ
鎌を振るう。
振るった鎌が住民に触れる寸前に光の粒になって消える。
「まだ、人間という事か……」
星の武器には特殊な性質がある。
人間相手に攻撃をしても効果が無いのだ。
星嵐の場合は触れる寸前にその本来なら触れる箇所のみ鎌は消えて、光の粒に変化する。よって、魔物が人を人質にしようとしても無駄であり、人のふりをして近づく魔物を見抜く効果があるのだ。
欠点は操られれている人間には効果がないという事だ。
その場合は。
とんっ
鎌の柄を振り回して、気絶させる。
いや、気絶だけで済むだろうかもしかしたら怪我させてしまったかもしれないけど。
「後で謝っておこう……」
手加減をしてはいるけど、これ以上手加減したらこっちが危険だから。
人々の向こうに見える巨大な木に視線を向ける。
あれに関しては三人を信じている。
(僕の聞いた話よりもひどい状況じゃない)
ならばこそできると思っているが。
「コカの実は人を魔物にするものだと思っていたけど、それにしては」
妙だと独り言のつもりだった。
「”ああ。それは、熟していない状態だからだね”」
返事がした。
「”鎌の英雄。君をこの木の苗床にしようと思ってね”」
操られた人間全員口を動かして同じ声を発する。
「魔人……」
こんな芸当が出来るのは魔物ではない。
「”あたりです。鎌の英雄”」
人々が一斉に捕らえるかのように腕を伸ばしてくる。
「”英雄を苗床にすれば我らの目的を早く達成できるでしょう”」
その為に尊い犠牲になってください。
誇らしげに告げる声。
「――ふうん」
冷たい声が出る。
――殺してくれ
あの声が脳裏に蘇る。
――仲間を殺した。家族も、みんな……もう殺したくない……頼むっ!!
赤い血の涙を流していた。
誰よりも優しい人だった。
犠牲が出る前提の最終戦で死んでいった仲間の死を嘆いて、心を痛めていた。
本当は戦うのは嫌いで、戦わないでいられないかと考えて考えてその優しい心をいつも傷だらけにしていた。
その優しさを付け込まれた。
彼が全魔族の目的を叶える存在に変貌させられたのだ。
「搾取するだけ搾取して叶える願いなんて」
風が生まれる。
手袋の宝玉が輝き、陶器の壺が出てくる。
さらさらさら
壺の蓋を外し、壺をひっくり返す。
「僕がさせるわけないだろう!!」
神風。
風の属性を強く持っているから生み出せる風に乗って運ばれるのは強力な睡眠薬。
いくら身体を操る能力を持っている者であっても効果を発揮する。
「筋肉弛緩剤でもよかったけどね」
後遺症が心配だったから止めておくよ。
「”お前、それでも英雄か。操られている人間を薬で眠らせるなんて……”」
「さあ」
薬の入っていた壺を地面に落とす。
ばりんっ
「僕ほど星武器に相応しくない者はいないと思っているよ」
昔も今も。
「文句は僕を選んだ星嵐に告げてよ」
りぃぃぃん
苦情を訴えるように鎌が鳴り響く。
「だって、聞きたいのはこっちだよ」
なんで選んだのかって。
りぃぃぃん
「素質ね~。余程成り手が居なんだな~」
りぃぃん
「はいはい」
ぽんぽんと会話らしきものを行いつつ。
「あっ!!」
それに気づいて町の外に視線を向けた。
逆鱗に触れたから本当は自分の手でぶちのめしたいけど作戦のために我慢している




