小ネタまとめ
本当に短い小ネタ5本。
①ジュニアスから見たラッセル
②姉から見た愚弟
③シャーロットの弟妹の会話
④ラッセルとジュニアスの会話
⑤ラッセルとシャーロットのデート?
①~④は過去に拍手で公開していたものです。
⑤だけ初公開。最初はまともにデートの話を書こうとしていたと思われるのですが、途中で放り投げていました。今回、オチをつけて蔵出しします(などと言っている時点でもうオチが読める)。
【ジュニアスから見たラッセル】
僕、ジュニアスは、ラッセルやシャーロットと三年連続で同じクラスだ。
ラッセルを観察して(面白がって)いて、気づいたことが一つある。
「ねえラッセル、なんでシャーロットの後ろに座ってるの? 特に春から夏の終わり」
ラッセルは、寒い時期にはシャーロットの隣でべったり、暑い季節はシャーロットの後ろでうっとりしているのが常なのだ。
「……夏は、薄着になるだろ」
「そりゃ、暑いからね」
「で、薄着になると、服の……背中に、その、……透ける、だろ」
「ああ、下着の線が? ラッセルは授業中もそれを見て一人で喜んでるのかあ」
「ぐっ――喜んでるのは否定しない。が、いつも俺が後ろにいてやらないとシャーロットは無防備だから!」
「はいはい」
「け、決して、『髪をアップにしたシャーロットのうなじが綺麗だ』なんて見惚れてたりしないんだからな!」
「……へえ、うなじも見てるのか」
「ぐっ……」
墓穴掘ってるよ、ラッセル。
今日新たに気づいたこと。
ラッセルは情欲まみれで、結構アホだ。
【姉から見た愚弟】
愚弟から借りた百科事典を開く。ほとんど使われた形跡の見当たらない事典の中で、一か所だけ開き癖がついているところがあった。
見開き二ページに、色とりどりの花の写真が何枚も並ぶ。見出しには大きく「チューリップ」とあり、その横には子供の字で「しゃーろっと の すきな はな」と書き込まれていた。
ページ下部には花の解説の欄があり、その中にはチューリップの花ことばに関する記述もあった。花の色によって異なるチューリップの花言葉。その中で「紫」の項だけは、赤ペンで大きく丸印がついていた。
そこから欄外に矢印が伸ばされ、その先にはこっ恥ずかしいメッセージ。
『俺のいちばん愛する君へ。君の好きなこの花を贈ろう。ずっと変わらない俺の気持ちとともに……。世界で誰よりも君を必要とする男より』
か、痒いわ~……じんましん出そう。
そもそもなんで、こんなところに書くのかしら? 落書きしてないで、手紙に書いて本人に渡せばいいじゃない。
しかしそれができないところが、我が愚弟の愚弟たる所以である。いろいろ溜め込み過ぎたせいで最近では、「愚」の上にさらに「変態」の冠まで付くようになってしまった。
「頑張れシャーロット。うちの弟の愛は、なかなか根が深そうよ」
溜め息を吐いて、事典を閉じた。
【シャーロットの弟妹の会話】
「『シャロ姉とお嫁さんごっこ』なんて、いつの話よ」
「えーっと、何年前かな? 僕が5、6歳の頃だったかなあ。……いや、そんなことよりさ。見た?」
「見た! ラッセルのあの顔!! シャロ姉ったら、愛されまくっちゃってるわぁ~」
「睨まれた時は本当に怖かったよ。殺意を感じた……。あれ? もしかして僕、ラッセルにライバル認定されちゃったかな」
「された! あれはされたわね間違いなく!」
「うーん、僕、シャロ姉とは正真正銘血の繋がった姉弟なんだけど。あのオールディントン公爵家の子息がああなるとはねえ」
「次期公爵があれで大丈夫かしら。もう深刻な病気だと思うんだけど」
「手の施しようがないね」
「シャロ姉の、どこがそんなにいいのかしらね?」
「……どこだろう? 確かに、シャロ姉のお弁当は美味しいけど」
「そうねえ。確かに、シャロ姉が笑うと幸せになるけど」
「確かに、僕たちもシャロ姉が大好きだけど」
「確かに、シャロ姉は脱ぐとスゴイけど」
「え! そうなの!?」
「……うそ」
「やっぱり」
「ぶっちゃけてしまえば、同世代の女の人と比べるとかなり貧相ね」
「着飾っても盛ってもあまり変わらない?」
「そう」
「そっかあ……」
「……」
「……」
「……でも、シャロ姉には、幸せになって欲しいよね」
「そうだね」
【ラッセルとジュニアスの会話】
「ラッセル、ダンスパーティが始まったきっかけって知ってる?」
「かつての学園理事の息子の我儘が始まり、だろ? 片想いした女に素直に気持ちを伝えられなかった阿呆なお坊ちゃまが、ダンスパーティの雰囲気を利用してイイ感じになろうとしたんだったよな。まったく、けしからん奴だ」
「君がそれを言う?」
「ジュニアス! なぜそこで俺を見る!? ……大体な、『女と接近』=『ダンス』などという発想は安易すぎるだろう! そりゃあ、手は握れるし肩は抱けるし腰に手を回しても不自然にならないしさりげに彼女のいい匂いも嗅げるし触れてはいけない部分同士が接触しても事故で済むしで、オイシイ所だらけだが!!」
「……ラッセル……」
「だが何と言っても、普段と違う装いにお互いの知られざる一面を覗き見てドキッ……☆ これは外せない展開だな!」
「……へえ……」
「だから何故そんな目で俺を見る!? いや、俺が思っているのではないぞ。これは理事のお坊ちゃまとやらの下心を代弁してやっただけなんだ!」
「うーん、どうかなあ。理事の息子さんは、ラッセルよりはかなり純粋な気持ちで提案したと思うけどね」
「だから、俺ではないと言っているだろう!? 普段と違う装いにときめきながら手を握り肩を抱き腰に手を回したりして彼女の匂いをこっそり嗅ぎながら男の子の大事な部分を擦りつけたいがために、ダンスパーティを開こうなんて考えないんだよ、俺は!! なぜなら!!」
「……なぜなら?」
「俺はシャーロットとそんなことができたら――なんてことは、毎日妄想しているからだ!! わざわざダンスパーティを持ち出すまでもなく、な!」
「……………………」
「…………ん?」
「ラッセル、僕はもう何も言わないよ。というか言えない」
「どうしたの? ラッセル。なんか私のこと呼んだ?」
「しゃ、シャーロット!? な、何でもない! あっち行ってろ!!」
「あーあ、落ち込んでるよ。シャーロット、かわいそう」
「うぐ……っ。だが今近づかれたら、さっきのセリフを全部実現したくなるだろ! ついでに、それ以上のこともしてしまうだろ!」
「わあ。面白いけど、ここではこらえてね?」
【ラッセルとシャーロットのデート?】
「ラッセル。手、繋ご?」
「……」
初めてのデートではのっけからシャーロットに、なんとも可愛らしいおねだりをされてしまった。
嬉しい半面、動揺してしまう。シャーロットをお見合いから奪還した時にも手は繋いだし、決して初めてではないというのに。俺の方がリードして、さりげなく手を繋ごうと思っていたのに。シャーロットを前にすると、どうにも上手くいかない。必死で狼狽を押し隠し、彼女の手を取る。
柔らかい彼女の手は少し冷たくて、熱くなった俺の手にはひどく心地よい温度。俺の掌が熱く渇いた砂漠だとすれば、彼女のそれはさながらオアシスのよう。……動揺のあまり、表現がおかしい。
ああ、幸せだ。彼女は可愛いし、俺の顔は脂下がるし、シャーロットの方を見られない。
「ね、ラッセル。こっち向いてよ」
「シャーロット。お前、俺の気持ちを知っていてそんなことを言うのか」
「ラッセルの気持ちって?」
小悪魔!
「可愛すぎて眩しくて見ていられないんだ!」
途端、シャーロットの顔が真っ赤に染まる。
「もう。恥ずかしいよ……。でも、嬉しい」
可愛らしすぎる反応に、俺の中の何かが振り切れた。
思わずシャーロットの顔を上げさせ、唇に触れ……ようとしたところで、目が覚めた。
ゴスンという、頭に落ちてきた衝撃によって。
姉貴の手には、分厚い本。しかもおそらく角が当たった。
「おはよう愚弟。夢オチの気分はどう?」
「……あともう少しだった……」
ラッセルの姉「ダンスって種類にもよるけど別にそこまで密着しなくない?ラッセルは妙な色眼鏡で物事を見るのをやめなさい」
ジュニアス「色眼鏡かあ、桃色かな?」
ラッセルの姉「桃色妄想しか映さないレンズよね……」




