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『呪石』-番外編-  作者: 宮居
ウルの国
5/13

2-1

これは、4人の幼少期の話。

「ねぇ、君、同業者?」

「……」

「あれ、違ったの?」

「仕事は、してない」

「そう。じゃあうちに来なよ。協力して欲しい」

差し出された手のひらを見つめる。

「なに?」

「……別に……雇ってくれるってことでいいの?」

「そゆこと」

手のひらに手を乗せる。

「契約、完了だね」

呪いってのはホント便利で、最悪な"道具"だ。




うちのグループに、新人が入った。

ここ何年、メンバーがいなくなることがなかったから珍しい。

リーダーが拾ってきた、あまり喋らない不思議な子。

オレと同じく、"呪術"を扱えるらしい。

呪術ってのは、生まれつき素質のある者が、何らかの原因で使えるようになるもの。

既に使える者に教えてもらったり、感情の昂りで、発動してしまうこともある。

恨みや憎しみだけでなく、喜びや悲しみ、哀れみなどでもトリガーになるらしい。

上手くコントロールできるようになるとオレが得意とする"呪鎖"になる。ほかの人には見えない様な鎖が手から出て、呪いをかける。

はたから見たら魔法みたいな、だけどそんな綺麗なものじゃないもの。

魔法なんてのはこの世界じゃ、学べば誰でも使えるようになる。だけど、大きな力は使えなくて、日常生活がちょっと便利になるくらいのものだ。たまに例外もあるけども。

呪術を扱えるやつは、魔法はあまり使えない。

オレの場合は呪鎖と上手く掛け合わせて、それなりに使えるようになったけど、呪いを扱えるから、魔法も上手い、なんてことは無い。

こいつから─ シナ─からは魔法の気配を感じないし。多分、呪鎖しか学んでないんだろうな。

呪いが使えれば、それより弱い魔法なんて知らなくたっていいし。

「よろしく」

「こいつ、こんなんでも副リーダーだから。呪鎖も使える。ここでは君含めて3人だね」

「こんなんでもってなぁ。お前が指名したんだろ?……まぁいいや。ルイっていう」

「シナ。よろしく」

一応、握手を交わす。

「今日の仕事は?」

「あんたが遊んでる間に終わってますよ」

「流石だなぁ」

頭を撫で回される。

「あとで書類だけ見といて」

「了解。じゃあ今日は歓迎会でもするか。みんなを呼んでくれ」

それに頷いてメンバーを呼びに行く。




「へー……橘の」

「美月さんを知ってるの?」

「オレも、あの人から教わったから」

「その後俺が拾ったんだよな」

ドヤ顔でリーダーが言うが訂正する。

「正確には、あんたが先にオレを拾って、呪術が使えるんじゃないかって、橘のところにやったんだろ」

「あれ、橘さんのとこで会ったのが最初だと思ったけど」

「そうだけど、あの頃はまだろくに呪いなんて使えなかったから」

なるほどーなんて言ってる。腕は確かだが、記憶力が乏しい。多分書類のことも忘れてんだろうな……

「シナは、どうして橘のところへ?」

「……両親が仲良くなくて、喧嘩してるところに呪いを使っちゃって。親がいなくなったから、さまよってたら、見つけたの」

「あの場所を見つけたのか」

「そう……で、呪いを教えて欲しいって、お願いして」

「なるほどねぇ」

橘美月は呪いの人形師。数多くの呪いを持った人形を作っている。

呪鎖は使えないが、それを開花させる力はあるし、呪術の腕は確かなものだ。

今は、等身大の人形を作っているとか。

「凄く、綺麗な人形だった」

「そう言えば今子供たちは何人?」

「13人、だった」

「随分減ったな……」

オレが呪いを教わっていたときは28人だった。

因みに子供たち、というのは、橘の作った小さな人形の事だ。

それぞれが色と呪いを持つ。

「誰が残ってたか覚えてるか?」

シナは頷き、答えてくれる。

「凄いな。男の子も残ってるんだ」

橘は女の子の人形を作るのが上手くて、男の子の方はよく失敗してたから驚いた。

それも昔の子だ。だけどその頃の橘はその子を作るまで精神が安定してなかったから、その子を作ったから戻ってきたというか。そういう子だからかもしれない。要は特別な子だということ。

「みんな変わらないのかな?」

「会いに来てって、シュプが」

「シュプリールとは凄く仲が良かったんだ」

"首吊り人形"シュプリール。

彼女の即興劇を聞いてしまうと、首を吊って死んでしまうという呪い。色は黄色。

当初は1番仲の良かった人形だ。

「誰のことかわからなかったけど、伝言を伝えられてよかった」

「まぁ橘さんから連絡があったから、シナを迎えに行ったんだかな」

「珍しいね」

「あの人はあまり外に出ないし、俺のこと嫌いなのにな。珍しくシナを引き取ってくれと話があったんだ」

「……そう」

「あの樹自体に呪いがかかってるからなぁ。橘さん以外はあまり長くは居られないんだよ。呪いが扱えるやつは無意識に防衛してるらしいけど、それにも限界がある。それを一瞬で見極めて、その期間でどれほど呪いを、呪鎖を扱えるようにするかっての考えてんだな。扱えるようにつれ、少しは期間も伸びるらしいぞ」

「久々に行ったら、どんなもんかわからないかなぁ」

「お前じゃまだ無理だな」

「いつかは、あの呪いを解いてあげたいんだけど」

「でもあの人は今終活してんだろ?」

シナの方を見る。シナは頷いた。

等身大の人形のことだ。

橘はそれに、自分の全てを注いで、死のうとしてる。

なんとかしてあげたさは、あるけども。

「まぁいいか。とりあえず、シナに仕事教えたら、橘さんに会いに行こう」

頷く。シナも頷いているのが見えた。




それから半月ほど。

シナはオレとよく仕事に行くようになった。

2人して呪鎖を使って仕事する。

リーダーが時々合流して、3人で隠密に仕事する。

そう言えば、シナが来た頃の報告書は、やっぱり忘れていて、本部に怒られていた。



「こういうことするって、わかってた?」

「ニコルが教えてくれたから」

「あぁ、契約の時?」

因みに"ニコル"とはリーダーの名前である。

「そう。でもその前から分かってたかもしれない」

「契約の前から?」

「同業者って聞かれたし、なんとなく、雰囲気で」

「あー……うーん……それはシナがそういうの見分けるの上手いからかな……」

「そう?」

「ニコルはそういうの表に出さない人だから……誘うつもりだったから、その時だけは違ったのかもしれないけどさ。でも今まで仕事してきて思うよ。人の本心見抜くの上手いんだなーって」

「ふぅん……」

シナはあまり関心がないのかもしれないけど、これ結構すごいことだからね。

と添えて、前を向く。

実は今も仕事中だったのだ。

ターゲット待ち。相手は若くない男。

「来たよ」

それから数分後、男が現れた。

と言ってもオレらは隠れてるから、相手はこっちに来てはいるけど、オレらに気づいてない。

「とりあえず後付けるよ」

呪鎖で足音などを消して、男のあとを追う。

こいつ、同業者のはずだけど警戒心薄いな……

周りを気にすることなく、アジトであろう所へ入っていった。ニコルに連絡する。

『おーけー……こちらは準備出来てる。あとはそっちのタイミングに合わせるよ』

シナの方を見て頷く。シナが頷き返す。

さぁ、仕事だ。



「簡単だったね」

「この街じゃあ強いとこだって聞いてたのに」

「まぁそんなもんだろ……呪鎖がなかったらって考えてみろよ」

「んー、どうだろうね」

もうすっかり呪鎖は体の1部。仕事の時も後始末とかが楽になるから、ついつい。

まぁでも昔は、呪鎖なんて扱えなかったから、えもの使って仕事してたのだけれども。

まぁ証拠が残りづらいのだから呪鎖を使わない手はない。

その所為で、後始末にだけ呼ばれることもあるけど。それは別の話。




とある日、いつも通り仕事をこなして帰ろうとした時、たまたま橘の樹の近くだから寄ってみた。

すると樹の根元、扉からは反対のところに、人がしゃがみこんでいた。

「……誰だ?」

橘が気づいてないはずない。なにもしてないってことは、呪い持ちか。


いや、違った。

こいつは呪術なんて使えない、けど、

竜の子供を抱えていた……



番外編です!やっと投稿を開始しました。

とりあえず主要4人+αの過去編です。

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