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『呪石』-番外編-  作者: 宮居
アルケア・ヘレナ
4/13

1-1



「ふーん……君は、恩人をここで殺すのかい?」

『恩人はアンジェのほうじゃからのぉ。お主は恩人ではない』

「へぇ。森の主だって言っておきながら、あんなに傷だらけだったのに」

『我が何故、あそこで倒れていたか、お主らは知らんからのぉ……さて、お喋りはここまでにしようぞ』

1度吠える。

カティは怯まない。

「なにか秘密があるとでも?なら吐かせないとねぇ」

カティは剣を構えている。後にいる兵士はなにか呪文を唱えているようで、他の兵士は弓を構えた。

我は空へ飛ぶ。

合成獣にされた所為で弱点だった腹は、硬い鱗で覆われていて下からの弓なんて痛くない。

我は元々竜だった。アルケアのやつらに、子供も庇って捕まるまでは。

アルケアに、カティに捕まって、その国のキーとかいうのと合成された。他にも蜥蜴とか蛙とか蛇とかが近くにいたようだったが、合成されたのかはわからない。

彼女らのおかげで呪いが解けた今、姿は竜のような人。

人の体を持ちながらも竜の力や翼を持つ者。

……このような男に負けてたまるか。


とりあえず、呪術師らしきやつを潰すか。

まずは力試しだ。

人の口から炎が出るなんて見た目不思議な感じだが、我は元々竜であるから、力の使い方に違和感はない。

人から貰ったのはこの体と、言葉と知識。

こいつらのことも、戦い方も良くわかる。

それほどこのキーとやらは重要な人物だったのだろうな。

貴様の力、借りるぞ。

体は人型だから、前のように足で潰したりは出来ない。

ただし、腕の力なんかは人とは比べ物にならないから、殴ったりすれば、そのまま地面にでも倒せば、頭くらい潰せるかもしれない。

炎を吐きながら思考する。

鱗で覆われているので、奴らからの攻撃は通らないし、カティはここまでこれない。

呪術師を隔離する。

一気に距離を詰めて、首を跳ねた。

爪は少し短くなっていたが、鋭さは健在らしい。これはありがたい。潰した時の感触は好きじゃないからの。爪に付いた血を落とす。

それと同時に術式が展開する。

なるほど。しかし遅いな。

すぐに空に逃げる。彼の周囲が凹む。

ふむふむ。そういうのもあるのだな。

こいつら全員にそんなのがかけられているとは思えないが。

後から気配がする。

カティだ。木から飛び、背中を斬ろうとしたらしい。

翼でも落とそうとしたのか?甘いのぉ……。

身を翻し、力を加減して、首を締め木に押し付ける。

『お前は最後かと思ったのじゃが』

「そんなことも言ってられなくてな」

『ほかの兵たちは逃げていくのぉ』

応援を呼んでも無駄だと、わかっているだろうに。

「お前を殺せれば、それでいいと思ってな」

なにかの式が展開する。これは魔法か。めんどくさいのぉ。

しかし、体に埋め込む式の術は発動が遅いのだろうか。

一瞬で、首を潰す。

爆破系のなにかでも埋め込んでいたのかもしれない。

……一応、心臓も潰しておくか?

心臓と脳を潰しておけば、蘇生も不可能だろう。

致し方あるまい。

ぐちゃぐちゃにとは言わないが、潰しておいた。

遺体は木の根元に埋める。

掘り起こされた時のために罠も張っておく。

人から貰った知識の方だ。多少の魔法は使えるらしい。


さて、さっきのヤツらは追いかけた方がいいかの……。

兵はそんなに遠くまで行っていなかった。

彼らはなにがしたいのかのぉ……?

聞いてみるとするか。答えるかはわからんが。

兵達の前へ降り立つ。

『お主ら、何を考えている……?』

「……カティ様の、指示ですから……」

国に帰ったら何かあるというのか?

兵達は国へ帰ろうとする。

……。

その兵達を全員残さず切り裂いた。

……我は国に帰るべきではないだろうな……。




元々我はこの森で生きていた。

アンジェ達もこれで無事だろう……アルケアからなにかがやって来ても、我が倒せばいい。

この森は元々、我の森。

そう言えば、ルイとか言うやつが、彼らの基地の近くに家を作ってくれたとか言っていたような。

とりあえずそこを目指すとするか。

一応、人の形をしているのだが鱗で覆われているため、国には戻れないだろう。あの国に受け入れてもらえるとは思えないしのぉ。

頼らせてもらうとするか。


その隠れ家は、予想以上に立派だった。

……キーの記憶が、知識が、それぞれの設備がどんなものかを教えてくれる。

ふむふむ……一応、獲物をこの森で捕まえても、人の体を持つから調理なんかはした方がいいと……

コンコンっと扉がノックされた。

『誰じゃ?』

扉が開く。そこには可憐な少女。

「はじめまして。あなたがキメラ?」

こいつ、我ことを知っているのか……

少し警戒する。

「あ、ごめんなさい。私ルイの知り合いで。名前がわからなかったから、そう呼んでしまったのだけれども」

『ほう、ルイの。そなたの名はなんという』

「私はアナリアです。ルイからあなたのお世話を頼まれてて。人型はまだ不慣れだろうし食事とか大変かなって」

『そうか……恩に着る』


人間に、助けられる日が来るとはのぉ……

何があるかわかったもんじゃないな。

暫くは甘えさせてもらうとしよう。


その代わりに、この森は、我が守る。

守護神の名にかけて。


アンジェが初めに立ち寄ったアルケアヘレナのその後。

合成獣×カティでした。


あっさり殺しちゃってごめんね!!!

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