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残念。虚像威嚇です

「わたくしの再生能力をもってすればこの程度なんてことありませんわ!」


 アイムはあの場から逃げ出した後。しっかりと元の状態に戻っていた。彼女の一番の特徴は再生能力、水であるために斬られても、身体を吹き飛ばされても、しっかりと元に戻ることができる。驚異的な耐久力を持つのだが、それ故に油断しやすいといえる。


「ギヒャヒャ! ざまぁねぇな。ただ逃げてきただけだろ?」


 アイムは再生が終わり、なんとなく木の近くで休んでいると。黒いフード付きのローブを着て、身体の殆どを覆い隠した怪しい見た目の存在……。これでも精霊である。名前はグリア、繁栄の精霊。そんな奴がアイムの傍までやってきて、大げさな身振り付きでアイムを茶化している。


「……。貴方、何処で見てましたの? 悪趣味ですわよ」


「ギヒャヒャ! お前が油断してただけだろ? 精霊の感知能力を持ってすれば俺が近くで見ていた事なんて解るはずだぜ」


 精霊は自然に対して大きな干渉力を持っている。自然を介すことによって、広い範囲を認知することができる。その為、感知能力に秀でているのだ。特に、森のような自然の力の強い場所なら尚更。


「関係ありませんわ。わたくしには何も効かないのですから!」


「その割には、無様な姿を晒してたな。ギヒャヒャ!」


「わたくしが本気を出せばあんな場面なんてこと無かったですわ! ただ、ちょっと油断してただけですわ!」


 アイムは自信過剰に返している。指を突きつけ、胸を張っている。グリアはまるでやれやれとでも言うかのように首を振る。そして、唯一見える口元が、ニヤリと笑みを見せる。


「ギヒャヒャ! その油断がある限り、お前は俺に勝てないな」


「何を言ってますの? わたくしは貴女が戦っている姿を見たことがありませんわ?」


 キョトンとしてしまうアイム。グリアは更に笑みを深め、ゆっくりと右腕を前に出し、アイムに向ける。


「最後の手段って奴は隠し続けるものだぜ? 俺には対精霊の秘策があるんだよ」


「何があろうと、わたくしには何も意味がありませんわ。もし、万が一があったとしても、エンシェント様の力によって再生できますもの」


 自然を大きな一つの生命体という考え方をする秩序。全ての命がつながっているという理念故に、エンシェントを精霊は繋がっている。そして、精霊は自然とつながっている。その繋がり、共生の力によって増幅した生命力。それを供給されることによって精霊は存続しており、その供給を多くすれば再生能力も強化される。だが、裏を返せば。精霊は供給される生命力に依存している訳だ。


「俺は、唯一エンシェントに依存しない精霊だ。というか、名目上精霊で、ほとんど精霊とは違う存在とも言えるな」


「脆弱な肉体に依存しないといけないなんて、欠点にしかなりませんわ」


 グリアは唯一肉体に依存する精霊。アイムのような肉体に依存しない精霊とは違い、肉体の重要な器官を破壊されただけで、死を迎えてしまう。再生能力だって、一般の人間よりも多少早い程度だ。


「違うな。俺は確固とした肉体を持ってるという事だ。自ら、自分の糧となる、生命力を摂取できる。ギヒャヒャ! お前には解らないだろうけどな」


 肉体を持つグリアは、食物を摂取することができる。そして、それを生命力に還元できる。エンシェントの生命力に依存する必要が無い。


「わざわざそんなことする必要もありませんわ。それに、何かを糧にしないといけないというのは、欠点にしか見えませんわ」


 秩序は、共生の中に生きる存在。共生を乱すものを排除することはあっても、何かを犠牲にすることはない。何かを犠牲にしてまで、何かを得るというのは。混沌の領分だ。


「違うな、お前にできないことが俺にはできる。秩序でありながらも、最も混沌に近い俺だからこそ出来る事がな!」


「だから何だと言うのです。わたくしに勝てる要素なんてありませんわ!」


 水球を周囲に浮かべるアイム。対するグリアは何かをこっそりと取り出して。


「ギヒャヒャ! そんなんだから。お前は勝つことが出来ねぇんだよ!」


 グリアは何かを地面に叩きつけた。アイムは警戒して、水の膜で自分を包み込むが、全く関係なかった。辺りが煙で包まれた。ただの煙玉のようだ。


「何も見えませんわ!?」


「ギヒャヒャ! 言いかえてやるよ、そんなんだから精霊の中で最弱な俺を倒す事だって出来ねぇんだよ! 精々感知する癖でもつける事だな! じゃあな!」


 煙が晴れた頃には、グリアは居なかった


「何なんですの!?」

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