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11話「精密探知!」

 長々と真面目に書きましたが、結構くだらない話です。

 結論から言うと、「精密探知」と言う新たな技を開発するお話なので、長い改行の後の「いや、正直に話そう」から読んでいただいても構いません。




 建物の雰囲気は中世の西洋風なのでフカフカのベットさえあればいいと思っていたが、想像以上に豪華だった。

 部屋の家具はどれも煌びやかな装飾が施され、目に映る光景すら楽しませてくれる。

 何より驚いたのがライトだ。光を放つ術式が施された水晶玉に魔力石という魔力を溜めておける石が接続されており、魔力石の魔力が尽きるまで自動的に光を発し続けられる魔道具なのだと言う。

 冒険者ギルドではロウソクのランプだったためこの世界の設備に不安を感じていたが、元の世界に近いレベルの発展を遂げている都市もあるそうだ。

 冷蔵庫や洗濯機などの家電製品と似たような働きをもつ魔道具もあるらしく、それらは勇者達の知識を元に作られているとサチが教えてくれた。





「ふぅ、思案が長くなってしまった」


 なぜ俺が上記のようなどうでもいい考えを巡らせていたかと言うと、これからある実験を行う上で極限の集中状態に入るためである。

 先に余計な考えを処理しておいたのだ。



 さて、実験とは感知能力についてである。


 何気なく使用しているが、俺の感知能力は相当高度な技だ。

 魔力の波によってソナーのように周辺の地形や生物を把握し、常人を超えた五感がさらに精密な情報をキャッチする。

 『魔術師』による魔力操作、『探索者』による画像補正、『演算師』による情報処理、レベル863の圧倒的身体能力。

 これらを統合する事で発揮される匠の技なのだ。


 そして、今回の実験ではこの探知能力をさらなる高みへと昇華させようと思っている。いや、させなければならない。


「それではお先にお借りしますね」

「見張りは頼むのじゃ」

「…ああ」



 話を戻そう。


 探知能力を使用する上で大切なのは、魔力の性質だ。

 これは使用中に気づいた事実なのだが、魔力は物質を透過する性質があるらしい。

 ここで重要なのが『全て透過するわけではなく一部は反射する』と言う事だ。

 物質によって異なるが、その透過率と透過速度、反射率の差を利用する事で俺の探知能力は壁の向こう側にある物体の形状をも把握できている。


 しかし、この探知能力には欠点がある。

 それは、把握できる形状が大雑把という事だ。


 放射魔力によるソナーでの把握は、箱の中身はなんだろなゲームの感覚に近い。魔力の波を一方向から放射する事で形状を把握するため、大雑把な形しか知る事ができないのだ。

 色も把握できないが、そこは想像で補うとする。


 今回の実験目的はこの欠点の解消である。


 壁の向こう側の状況を正確に把握しなければならない場面が、これから訪れる可能性もあるかもしれない。いや、あるはずだ!

 そんな時に出来ませんでしたでは、情けない。

 たとえレベルが863であろうと、スキルを沢山持っていようと、自らの研鑽は怠るべきではないのだ。



 話を戻そう。

 

 思いつく解決策は幾つかある。

 まず、放射する魔力量を増やす事だ。しかし、これでは対象に気づかれる恐れがある。

 次に、意識を極限まで集中させる事。これはもう試したが、把握できる精度には限界があった。


 そこで、最も有効だと思われる解決策が、『放射する方向を増やす』という事だ。


 汎用X線診断をご存知だろうか。

 いわゆるX線検査であり、一方向から照射されるX線の吸収率を可視化することによって生体内部の画像を写し出す検査だ。比較的安全で容易に行えるが、得られるのは平面の画像である。

 それに対し、X線CTは時間はかかる。だが、平面ではなく立体的な画像を得られる検査だ。

 色々な角度からX線を当て、3次元の画像を得る事ができる。


 俺の探知能力は魔力の透過率と反射率、透過速度を利用している。そのため、一方向からの照射でも立体的な形状を把握できるのだが、複数の方向から照射する事で得られる情報を統合すれば、さらに詳細な形状を把握できるのではと考えたわけだ。


 そして、その実験の前段階はすでに行なっている。


 目の前にある袋、中には銀貨が詰まっている。

 ここへ魔力を放射し、詳細な形状を得られる方向、角度、放射数、放射量はすでに割り出し終わった。

 予想通り、複数の方向から同時に魔力を放射した場合、今まで以上に詳細な形状を知る事ができた。

 放射数は3、方向は直線、右から左への円状、上から下への円状がベストだった。



 ここからは、新たな探知方法を『精密探知』と呼称する。


 この前段階を行う上で分かったことは、『演算師』と『魔術師』のスキルに相当な負荷がかかると言う事と、『暗殺者』スキルの効力だ。


 複数の方向から同時に魔力を照射すると、反射してくる魔力とその計算量が尋常ではなく増えるのだ。そのため、『演算師』の負荷も尋常ではない。

 また、複数の方向から魔力を照射しつつ反射してきた魔力を回収する魔力操作技術にも凄まじい技量が必要となってくる。

 前方の対象に2方向からの魔力放射を行う場合、直線的な魔力放射と同時に右方向から円を描くような魔力放射が必要となってくるのだが、円を描くような魔力放射は相当な集中力を要するのだ。


 『演算師』の負荷を減らすには探知範囲を絞るしかないため、『精密探知』は通常の探知よりも範囲が格段に狭くなってしまうだろう。

 今のところはどうしようもないので、これは仕方ない。


 問題は『魔術師』だ。放射数は単純に3倍だが、そのうち2本は湾曲した放射を行わなければならないため負荷は3倍どころではない。

 探知範囲を狭める事で幾分か楽にはなるが、『演算師』ほど負荷が軽減はされないため長時間の発動は厳しい。


 そんな時、『暗殺者』のスキルが発動している感覚があったのだ。

 隠密行動を行う際には魔力操作による気配の隠蔽が重要になってくる。そのため、『暗殺者』のスキルにも魔力操作に関する効果があるのだ。

 つまり、『暗殺者』が魔力操作の補助として働いたと言う事である。


 結果として『精密探知』の発動は、前方10メートル以内の範囲に限られ、通常の探知よりも高い集中力を必要とする。だが、まるで目で見ているかのような再現度の感知が可能となった。


 宿に着いてから30分程しか経っていない。

 部屋に入室と同時に作成を始めたため、『精密探知』の作成時間も同様だ。

 この思考速度の向上も『演算師』によるものだろう。



「よし…」


 ところで、ミーナとサチはどこへ行ったかというと…風呂だ。

 丸一日森の中を移動し、カンナビへ入る際は泥や砂で汚れてもらったため早く入りたかったのだろう。

 

「さてと、やるか」


 これは訓練だ、このタイミングで精密探知が完成した事も何かの縁なのだろう。

 俺はこのチャンスを逃すつもりは無い。












 いや、正直に話そう。


 この能力は覗くために編み出したのだ!

 だって、22才の健康男性が16才の美少女達と同じ宿の一室に泊まるんだ。仕方ないだろ?

 夢を叶えられる能力があれば、実行しようと思うだろ!?

 


 はっ、誰に断りを入れているんだ俺は。だいぶ動揺しているらしい。


 とにかく、俺はこの世界で好き勝手生きると決めたのだ。夢へと突き進むとする。



「『精密探知』!」


 目標は前方約6メートル。

 直線に1本、右と上へ円状に2本魔力放射。

 『演算師』『魔術師』『探索者』『暗殺者』オールグリーン。

 嗅覚と聴覚を全力稼働。


「見えた!」


 湯気の中、長い髪を整える美少女が見える。ミーナだ。

 裸体に張り付いた美しい金色の髪からは、鼻をくすぐるような心地よい香りがする。

 見惚れるほど整った顔立ちと幼さの残る肢体は、可愛いという言葉を体現したかのような魅力を放っている。

 この世界の女性を何人か見たが、皆相当レベルが高かった。その中でも、ミーナの可愛さは頭抜けていると感じる。


 その横で体を流しているのはサチだ。

 控えめな性格とは真逆で暴力的なまでに育った豊満な2つの果実が露わになっている。

 脱衣所にはサラシが置いてあった。動きやすくするため無理やり抑え込んでいたのだろう、想像していた以上に着痩せしていたらしい。

 俺と同じ世界の出身でありながら、サチはこの世界の住人を上回るほどの美貌を備えている。元の世界ならトップアイドルすら夢ではないレベルの美人だ。


 こんな2人と旅をしていたとは、改めて自分の幸運に感謝しつつ、極上のひと時を堪能するのだった。

 









「すみません、結構長く入ってしまいました。ユージさん、大丈夫ですか?」

「なんじゃ?…なっ!ユージ殿、鼻血が!」

「大丈夫だ」

「じゃが…」


 2人は心から心配してくれている。見た目だけじゃなく、心も綺麗なのだろう。

 だがーーーー


「大丈夫だ、心配されるほうが辛い」


 罪悪感でね。




「最低ですね」


 スゥの突っ込みが、静かに響き渡った。

 ストックが心許なくなってきたので、しばらくは1日1話投稿にしていきます。

 そのあとは週1投稿になるかもしれません、ご了承ください。

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