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使い捨てカメラ  作者: 藤島絢乃
1/1

タイムカメラ

プロローグ



カメラは、一瞬を切り取り思い出を残してくれる。



滑り台の影が伸び、どこからともなくドヴォルザークの『新世界より』が流れ出す。

座っているベンチが徐々に冷たくなる。

ポケットに入れていた使い捨てカメラのフィルムを巻く。ファインダーを除くと、メロディーと共に公園の出口へ駆け出す子ども達がいた。

ふと、昔のことを思い出す。明日の約束をして、明日に期待して、今日を振り返っていた毎日の放課後を。

「もう帰るよ。」

ファインダーを除きながら、声の方向を見ると見慣れた彼が隣にいた。思わず、シャッターを切る。

「何撮ってんだよ。」

「いるなーと思って。」

彼は頬を上げると、鼻でふっと笑った。その表情を収めようとシャッターボタンに指をかけると同時に、手が伸びてきて視界が明るくなる。

「なにかあったの?カメラなんて珍しい。」

「実家から送られてきたの。高校時代のものが。その中に使い捨てカメラが入っていて、またしようかなと思って。」

彼はフィルムを巻くと、カメラのレンズを私の方に向け、公園の方を指差す。その指の先を見ると、風が通り抜けた。髪の毛を耳にかけ、風が来る方へ向くと、シャッター音が微かに鳴った。

「綺麗だよ。すごく。」

まるで耳元で囁くかのように、彼の声は落ち着いている。

昔からだ。そんな彼を私はずっと好きだった。

「高校時代って懐かしいな。もう10年も前か…。」

彼は独り言のように、夕日を眩しそうに見ながら言う。

「高校時代は楽しかった?」

「君がいたから、楽しかったよ。」

「それ、卒業しても言ってたね。」

彼と出会ってもう10年も経った。でも、昨日のように彼との思い出はいつだって蘇る。

鞄の中から、レンズの曇った傷だらけのカメラを取り出す。

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