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5 ホウティスという世界

 ホウティス―――――

 それは様々な人種と様々なモンスターが共存し、魔法という不思議な力が存在する、この世界の名前である。


 人々はこの世界にまだ名前がなかった古来から、モンスターという驚異の傍らで生活してきた。

 この世界のいたるところに見受けられる”ダンジョン”によって、人とモンスターの境界線が引かれ、両者がダンジョン以外で交わることはない。

 それがこの世界のルール。

 平和を維持するための誰も無視することのできない暗黙の了解。のはずだった―――――


 しかし、平和というものはいつの時代も長くは続かない。

 世界に人とモンスターという、相対する二つの勢力が存在している以上。いつまでも平和を維持するなど不可能だったのだろう。


 今から千年程前のある日、突如として、モンスターの王と呼ばれる”禁獣”が大量のモンスターたちを引き連れて、自らのダンジョンを強行し、人の生活に干渉してきた。

 想像もしていなかった出来事に、人々は混乱し、恐怖した。

 その時初めて、人類はモンスターの恐ろしさを実感したのだ。


 禁獣はその脅威の手を止めることなく、次から次に人の生活を破壊していった。

 このまま、禁獣によって人類が絶滅させられ、この世界から人という存在がなくなってしまう。誰もがそう思っていた。


 そんな時、一人の青年が立ち上がる。


 当時、人類最強と言われていたホウティス・シェルフィード。

 のちにこの世界の名前の由来となる、偉大な人物だ。

 その優れた才能と、桁外れの身体能力や魔力で、当時まだ名前もなかったこの世界を統治していた。

 彼は、禁獣によるこれ以上の侵攻を防ぐため、優秀な臣下を四人ほど連れて禁獣と対峙した。

 この戦いが現在のホウティスの基盤となる、”ギルド”と”パーティー”の原点とされている。


 激闘の末、見事に禁獣を撤退させたホウティス・シェルフィードは、その後、人類の発展と繁栄のためリベルという街に城を作り、ギルドという組織を結成した。

 ホウティス・シェルフィードがこの世を去ったあと、人々が彼を英雄として称え、この世界の名前を”ホウティス”とし、リベルを王都に現在のホウティスを築き上げていったのだという―――――


「―――――と、このような成り行きでこの世界……ホウティスは誕生しました」


 シャルルは真剣な様子で、この世界の成り立ちを説明してくれた。

 難しい単語だらけで、頭が痛くなってしまい、説明があまり入ってこなかった春斗だが、一つ気になったことがあったので聞いてみる。


「そのホウティスさんと、シャルルのシェルフィードって名前が同じなのは偶然なのか?」


「……いいえ、偶然ではありません。私はこう見えても一応ホウティス・シェルフィード様の血を受け継ぐ、王家の人間なので…………」


 シャルルは苦笑いし、そう告げた。

 道理で、言葉遣いや立ち振る舞いが上品だったのか。納得。

 もっと深く事情を聞いてみたいが、何やら複雑な問題がありそうなので、今はこれ以上の質問は控えておく。


「ところでシャルルさん、禁獣はまだ生きているのでしょう。未だに人とモンスターの争いは続いているの?」


「はい、未だに争いは絶えません。私が生まれてからは起きていませんが、昔は、ダンジョンから抜け出したモンスターによって、小さな村や町がダンジョン化してしまう。ということもあったそうです」


「そりゃ大変だな」


 冬彦が心配そうに顔をしかめる。

 その言葉にシャルルは、はい。と頷いて話を続けていく。


「秋さんの言う通り、禁獣はまだ生きています。ですがホウティス・シェルフィード様との闘い以降。人類を警戒してか、ダンジョンからは出てきていません」


「へぇー、モンスターのくせに意外と頭がいいのね」


「お前よりは確実に賢いだろうな……んじゃギルドって何なの?」


 感心しながらシャルルの話を聞いていた夏乃は、春斗の発言が気に食わなかったのか、怒った様子で、春斗のお腹にポカッと優しいパンチを入れる。


「ギルドとは、ホウティス・シェルフィード様の意志を受け継ぎ、この世界の平和を維持するための大規模な組織です。ギルドに所属している者は、冒険者と呼ばれ、各地から届くモンスターによる被害の対処や、ダンジョン内にしかない素材の入手などの依頼をこなして得た報酬で生活しています。おそらくホウティスの人口の半数以上が、ギルドに所属し、冒険者として暮らしていると思います」


「ほうほう、なるほどねぇ……ってことは、シャルルも冒険者なんだ?」


「はい、そうですよ。ギルドについてもっと詳しく知りたいのでしたら、実際にギルド集会所に行って職員さんの話を聞く方が、分かりやすいですし良いと思いますよ」


 シャルルが小首を傾げて、春斗たちに提案した。


「おお、集会所か……行ってみたい!」


 春斗はその提案に、興味津々の様子で賛同する。

 他の三人も文句はないようで、賛成の意を表した。


「では、行きましょう。案内も致しますので」


「やったぜ!!」


「何か遠足みたいでワクワクするね」


 夏乃も春斗に続き、楽しそうにそんなことを言った。

 それから、春斗たちはシャルルの案内に従いながら、王都リベルにあるギルド集会所へと向かった。

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