4 安定の女騎士
待って! 行かないで! ここから面白くなる……かもよ!
「……ほ、本当に助けていただき、ありがとうございました!」
自らをシャルル・シェルフィードと名乗った金髪美少女は、深々と頭を下げてお礼をする。
見た目は春斗たちと変わらない年齢に思えるが、とても礼儀正しいお辞儀だった。きちんと教育が行き届いているのだろう。
春斗の予想は外れ、鎧をまとった騎士は、この端正な顔立ちの女騎士であったのだ。
「い、いや、困っている人がいたら助けるのは当然だからさっ! な、なぁ冬彦……?」
春斗はシャルルを前に、完全にうろたえながら口を動かす。
助けを求めて冬彦に話を振ってみたが、冬彦はヤレヤレといった顔をする。
「……お前が言うと説得力が皆無だな」
「同感だわ」
「右に同じく」
全員から突き放された春斗は、あからさまに肩を落としショックを受ける。
「お前らには仲間に対する情というものがないのかっ!」
「……悪いが仲間になった覚えがないな」
「同感だわ」
「右に同じく」
揃いも揃って何なのこいつら……?
何だろう凄い泣きたくなってきた。
「いえ、ですが私を助けて下さったのは春斗様に変わりありません! なんと感謝を申し上げたらよいか……」
シャルルはその透き通った瑠璃色の瞳に涙を浮かべながら、春斗へと迫る。
騎士ということもあり、体は細身ながらも筋肉がついている。肌も純白で綺麗だ。
しかし、シャルルの一番の魅力は、端正な顔でも色気を感じる体つきでも、純白な肌でもない。
一番の魅力は、間違いなくおっぱいだ。
鎧の外からでもわかる存在感を誇っているおっぱいは、巨乳という言葉では、少し力不足なのではないかと感じさせてしまう程に大きい。
なぜ最初見た時に気が付かなかったのだろうか……?
こうして迫られると、どうしてもおっぱいに目線がいってしまう。
おっぱいは窮屈そうに鎧の中で谷間をつくりあげている。
春斗は顔を真っ赤に染めながら、必死に理性と闘っていた。
「私にできることでしたら何なりとお申し付け下さい。少しでも恩返しをしたいので……」
さらに上目遣いで迫られた春斗は、シャルルのおっぱいを見ながら卑猥なことを想像していた。
言えばご奉仕してくれるのだろうか……?
ならば、このチャンスを逃す手はない。
「シャルルちゃん、春斗なんかに恩返す必要ないって」
「そうよ、体力の無駄遣いになってしまうわ」
夏乃と秋が口を挟んでくる。
相変わらず、失礼極まりない連中だ。
「お前らは少し黙ってろ!」
春斗は二人を怒鳴り、黙らせた。
気持ちを切り替えて頭を回転させ、今は何をすべきなのかと考える。
もちろん結論は簡単だ。
この世界について詳しく知る、ということ。
まだこの世界について春斗たちは何も知らない、となればとるべき行動は情報収集だろう。
目の前にこちらの世界の人間がいるのだから、聞いてしまうのが手っ取り早い。
「ならさぁ、お願いが一つあるんだけど……」
「はい、なんでしょう」
春斗は真剣な面持ちでシャルルに尋ねる、が。
「破廉恥なこと考えてるでしょ?」
夏乃が邪魔をしてきた。
「考えてねぇよ! ……さっきまでは考えてたけど」
「やっぱり……」
「でも大丈夫、俺はもう冷静だ。シャルルにご奉仕されたいなんて微塵も考えちゃいないぜっ!」
「あんたって本当にどうしようもない人よね……」
シャルルは春斗と夏乃のやり取りを怯えた様子で聞いていた。
ヤバいヤバい、第一印象大切だから!
ここで好感度上げておかないと、後々大変だから!!
紳士的な、いつも通りの北村 春斗をお届けしないと。
春斗は気合いを入れ直し、もう一度シャルルと向き合う。
先ほどの発言を誤魔化すように、ぎこちない笑顔を作り再びお願いする。
「お願いが一つあるんだけど……この世界のことを俺たちに一から教えてくれ」
「……へっ?」
どんなお願いがくるのかと構えていたシャルルは、予想もしなかったお願いに混乱した。
「あーごめんごめん、説明不足だったよね。なんか俺たち記憶喪失的な感じでまったくこの世界のことがわからないんだよ」
異世界から来たということがバレると、いろいろと面倒ごとに巻き込まれるかも知れないのでとりあえず伏せておくことにした。
「は、はぁ……」
「ドラゴンとか初めて見たし! だから、この世界について詳しく教えてほしいんだ」
「……そんなことでいいんですか?」
「うん、もちろん」
「そうですか……」
シャルルは驚いてポカンとした表情になる。
しかし、すぐに元の表情に戻り口を開く。
「それでは説明させていただきますね、少々長いお話になってしまうと思いますが……」
そして、シャルルによるこの世界についての講座が始まった。