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1話 パーティ

VRMORPG 《ケイリュケイオン》

広大なフィールド、職業やスキルの組み合わせ、武器や防具のデザインは自ら制作も可能、その圧倒的自由度、そしてクエスト一つ一つにも豊富なイベントを盛り合わせ! さらにゲームハードのA・E(Another・electronics)により高度なVC(ボイスチャット)搭載でより仲間とのコミュニケーションも可能!さぁ、あなたもこの世界で生きてみたくはありませんか?




これは、このゲームのプレイヤーである青年の物語、彼はある小規模ギルドに所属するメンバーの1人。いつも通りゲームにログインをして、いつものメンバーからの挨拶という名のログインコールを受け取る。それを彼は・・・無言で返す。


これは彼が喋らないロールプレイをしているわけではないし、決してメンバーとの関係が悪いということではない。ただ単純に彼は喋れないのである。その原因はゲームハードであるA・Eに搭載されているVC機能が長年による使用で故障しているためである。


本来であれば買い換えるなり修理などをするのだが、このハードはかなり高額でありそう何度も買い換えれるものでもない。さらに保証期間はとっくに過ぎており、また修理代も馬鹿にならない。


ゲーム内でキーボードによるチャット等は勿論行える。だがアクションゲームに近いこのゲームの戦闘においてはVCにおけるコミュニケーションが圧倒的に有利であるのもまた事実。



長年使っており、愛着もあった。だが彼はそこそこお金はあったため、これもまた良い機会とし買い換えることにした。


ネットで新型のA・Eを注文し、届くまでの間彼はしばらくはこのVC機能が故障し、ゲーム内で喋ることのできないプレイをすることにした。既にギルドのメンバーはそのことを承知している。



ロードが終わり、目の前にはいつもの見慣れたギルドの風景。しかしそこにまだ自分の姿はない。だが足元を見ると粒子のようなものが集まっており、そこから自らのキャラが形作られいく。


精霊(エレメンタル)の種族で、黄土色のように鈍く光るフルフェイスの西洋兜を付け、白をメインとしたロングコート、首周りには赤いマフラーを身に付け、180cmもの長身。彼のキャラクター名はストレイダ。黒を貴重としたハルバードと、金による装飾が施された腕輪のような魔法盾を装備している、『神聖騎士』(ディヴァインナイト)のクラスの使い手である。


このクラスになるための条件には槍使いであるランサー、剣術士であるグラディエーター、回復系やサポート魔法が主であるクレリックを一定の高レベルまで上げ、そこからさらにイベントをこなすという途方もない苦労により彼が得たクラスである。


攻撃魔法は初級から中級あたりであるが、攻守ともに能力が高くまたサポート魔法も扱えるのでソロでもパーティプレイにおいても十分に立ち回れるクラスである。だがそこまでに至るのには大変であり、また装備を買い揃えるのにもかなりの高額になってしまうのは痛いところだ。


今ある武器だってかなりのお金と素材を大量に使ったな、と彼は内心苦笑いをしつつギルドの周囲を見渡した。すると暖炉を囲むように設置されているソファには4組の男女がいた。


「おう!やっと来たかストレイ!なんだ、まだA・Eは届いていないのか?」


ハスキーボイスであり、低くも響く声を出すバグスの種族。彼の名前はグラーフ。巨体な体の持ち主で、豪快に生やした髭と、ドラゴンの革で作ったレザーアーマー、胸あたりは露出が多くそのもじゃもじゃした胸毛は見る人によっては少々気持ち悪い・・・かもしれない。ちなみにクラスは『狂戦士』(バーサーカー)である。巨大な斧をや剣、を豪快に振るい、その圧倒的な攻撃力で敵を屠るまさしく戦場の覇者と呼ぶのがふさわしいだろう。


そんな彼は熱血漢でもありやや荒々しい性格でもある。非常に仲間思いの漢なのだ。


彼の返答に、コクン、と頷くと彼はその髭を触りつつ「うぅむ、そうかまだ届かんのか。いやな、今日はギルドが設立して5年だろう?皆で語り合おうと思っていたんだがなぁ・・・」と残念そうに返した。


それは確かに残念だよなぁ・・・っと彼はキーボードで文字を打ち込んだ。するとグラーフの隣に座っていた小さな女の子がこちらに顔を向け話す。


「まぁいいじゃない、ボイスチャットができないのは残念だけど、別にコミュニケーションできないわけじゃないでしょ?」


彼女はコロポックルという種族であり名前はミュラン。黒のショートヘアと小さな体に和風のようなデザインのローブを身にまとう『混沌魔道士』(カオスソーサラー)。魔導系クラスの最強ランクに位置づけされている。一つ一つの魔法が非常に強力であり、喰らえばひとたまりもない上に攻撃がヒットした対象には状態異常が必ず付与されるというのだから恐ろしいものだ。


普段はやや高圧的な態度ではあるが、メンバー内では密かにツンデレだのなんだの言われている彼女である。


それに対して彼はすまなそうに頭を掻くような仕草をした。それを紫色の髪をした人物が笑いつつ


「ふふっもう皆準備できているから、貴方もはやく座りましょストレイダ。」


落ち着いたようで、透き通る声で話すのはマドレーヌ。種族はエルフ・・・なのだが、彼女、いや彼は男である。A・Eでは自らの声を変えたりすることができるのも特徴である。性別に関しては種族的に女性であり、現実的には男性である。クラスは『狙撃手』(スナイパー)。遠距離からの弓による狙撃を得意とする。武器は弓以外にもダガー、さらにトラップなどもある。罠にはめたあと即座に獲物を仕留める。これがこのクラスの基本である。


頷いて彼は一人分空いているマドレーヌの隣に腰掛ける。するとすぐ隣の豪華なソファに座っていた女性が元気よく立ち上がる。


「よっし!ストレイダ君もきたし!パーティ、はじめよっか!」


元気でよく響く声のこのギルドの長、いわゆるリーダーである彼女の名前は瑞香(みずか)。セミロングのポニーテールかつ金髪である。防具は綺礼な装飾がかかった白とピンクをメインとしたサーコート。 彼女のクラスは『勇者』(ブレイバー)。その剣技はとても強力であり、また仲間のHPやPPを増やすデバフなどもある他、『軍勢』と呼ばれる強力な召喚精霊達を呼び出し、相手を完膚なきまでに叩きのめす恐ろしいクラスである。


彼女はジュースの入ったグラスを手に持ち、大きく掲げる、それに応じて皆もグラスを手に持つ。それを確認した瑞香はとびきりの笑顔で高らかに言った。


「ギルド、『ユールタイド』を立ち上げて早5年!最初は大変なことだらけだったけど、今こうしてギルドがあるのは皆のお陰だよ!これからも一緒に頑張っていこうね!・・・乾杯っ!」


そう彼女が言うと、皆もグラスを掲げて


「「「乾杯!」」」


と叫ぶ。しゃべれない彼も、高らかにグラスを掲げる。


このギルドに入って、もう5年か・・・。そう内心、彼はしみじみと感じていた。これからも、こののんびりとした日々を皆と過ごしていくんだろうな、そう未来を思いつつ。










         だが、物語は彼らの思いもよらない出来事により、大きく動き出す。








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