4.サポートキャラ=ライバル
乙女ゲームでのサポートキャラは、ヒロインの恋愛を陰に日向にサポートし、ヒロインと攻略対象との恋を成就させるお人よしな女の子だと、きっとそう思うでしょう。
ですが、この現実では違うようです。
ゲームでのサポートキャラこと安曇野陽子さんは、ヒロイン高橋真美さんに対抗して攻略対象に積極的に関わっていきます。
そのあまりにも礼儀知らずな態度に、彼女の周囲はあきれ顔です。
サポートキャラとヒロインの違いは、周囲の友人たちに避けられているかどうか。
腐な同士によると、
サポートキャラは、友人がいるのかどうか不明。
意味不明なことを言い周りから避けられているのだそうです。
ヒロインは、逆に友人に囲まれて談笑しているみたいです。
それに、休み時間にどこかに走っていく奇行を友人たちから心配されているのだとか。
ということは、この学校には二人の電波少女がいることになります。大変になりそうですね...
ヒロインに呼び出されて、屋上に来ています。
屋上の扉は、私が手持ちのヘアピンで開けれました。
「お嬢様が、ヘアピンで扉を開けるのはシュールすぎるんだけど」
「一度、やってみたかったんです。ヒロインさん」
「ここに呼び出した目的は分かるわよね?」
私はその場に座り、お弁当を広げました。
今日も、メイドさんが作ってくれた出し巻き卵は美味しそうです。
「いきなり、お弁当を広げる!?」
「話の内容を考えると、教室に戻ってお弁当を食べる時間がなくなるかもしれませんよ」
「それもそうね」
そういうと、ヒロインさんも座ってお弁当を広げました。
ヒロインさんは私のお弁当の中を見て、
「懐かしのタコさんウィンナー!」
「食べます?」
「ありがとう。じゃあ、代わりに家のシェフ自慢のクリームコロッケをあげるわ」
「わらしべ長者みたいですね」
「気にしなくてもいいわよ。それよりも、安曇野陽子について知ってる?」
「サポートキャラなのに、転生成り変わりヒロインになろうとしてるってことぐらいですね」
「まあ、そんなとこね」
「でも、あの厚かましさではどの攻略対象にも見向きもされないのでは?」
「そうなんだけどね。これじゃあ、目的も果たせないわよ」
「目的ですか?」
「そうよ。バッドエンドになると、私は拉致・監禁されるのよ!」
「マジで?」
「大マジよ。ほら、私の護衛がいるでしょ。彼は、バッドエンドでしか攻略できないキャラなのよ。あのヤンデレには、トラウマになったわ」
ヒロインさんはそういうと、顔を青褪めさせました。
「そういう感じには見えませんけどね...」
「あなた、ひょっとしてこの乙女ゲームをちゃんとしてないの?」
「私、BL専門だったんですよ。この乙女ゲームは、友達に無理やりやらされていたのでほとんど覚えていないですね」
「やっぱりね」
「ですので、質問していいですか?」
「いいわ」
「この乙女ゲームって、逆ハーレムルートってあるんですか?」
「あぁ、そっち系の小説の読みすぎね。いくら乙女の夢が詰まってるゲームだからって、逆ハールートはないわね。やっちゃ、ダメでしょ」
「私の設定ってどうなってるんですか?」
「そこからっ!? 特に重要なことはないけど...そうね、あなた鏡の前で笑ったことある?」
「ないです」
「ですよね。気付いてないかもしれないけれど、四季宮梓って『表情筋が死んでる設定』よ」
「マジでか! 兄弟とそのお友達に笑いかけたら、ものすごい勢いで逃げられたのはそのせい!?」
「どういう風に笑ったの?」
「口の端をあげてニヤリという感じで」
「無表情でそんなんされたら怖いわ!」
ヒロインさんは意外とノリがいいようです。
おっと、もうそろそろ教室に戻らないといけない時間ですね。
「最後に、目的ってなんですか?」
「もちろん、バッドエンド回避よ!」
力強く言うヒロインさんに、よほど雨夜藜が特大級のトラウマになったんだなと思いました。
腐な同士の情報によると、サポートキャラの礼儀知らずな行動に攻略対象たちが顔を顰めるのも近いとのことです。